1.転移/文明度
前回のあらすじ?世界地図は三日月型パンゲア、付近の地図はソルトレークシティをイメージのこと。
まず自分に不利と思われることを否定する。
今すぐ盗賊が自分たちを殺しに来るわけではない。
盗賊は必ずしも強いとは限らない。
黒猫は、盗賊に殺させるために自分を喚んだわけではない。
次にそれを無理矢理希望的観測に書き換える。
自分は盗賊より強くなれるかもしれない。
盗賊より強くなる時間があるかもしれない。
黒猫は、
「俺が強くなる手助けをしてくれる?」
「無論ダ」
「強くなれる?」
「君ノ努力次第ダガ……ソノ体ハ、肉体的ニモ魔法的ニモ、イロイロト手ヲ加エタ強化体ダ」
よしっチート来た!小さくガッツポーズする泰雅に、黒猫はやれやれと肩をすくめた。
「強イコトト、強クナレルコトトハ別ダゾ」
泰雅は握り拳をそのままに、ぽかんとして黒猫の言葉を反芻した。
「強化体トシテハ最高ノモノヲ用意シタ。シカシ肉体ノ力ハソレヲウマク操レナケレバ発揮デキナイ。魔術ノ素質ヲ発揮スルニハ、魔術ヲ身ニ付ケナケレバナラナイ」
泰雅は眉根を寄せようとした。
レーシングカーのようなものだろうか。技量が追い付かなければ、そのポテンシャルを生かしきることができない。
あるいは戦車か。撃ち方がわからなければ戦車砲は無用の長物だし、いくら装甲が厚くても多数に囲まれればいつかは力尽きる。その敵が多少弱かろうとも。
「わかった――けど、そうすると相当大変そうだな。俺、この世界のこと何も知らないし、魔法も武術も使えない。科学技術だって――」
泰雅はふと疑問を口にした。
「科学技術ってどれくらい進んでるんだろう。えーと、ガソリンエンジン?」
「ナイ」
「蒸気機関?」
「ナイ」
――産業革命前からか。四大発明とは何だったか。
「紙?」
「アル」
「印刷技術――活版印刷だっけ?」
「ナイ」
ないのか。
「火薬?」
「アル」
おお。
「じゃ鉄砲は?」
「ナイナ」
するといわゆるてつはう――手榴弾どまり。ワット、グーテンベルク&カラシニコフあたりが当面の目標か。
ミハイル・チモフェエヴィチ・カラシニコフ(1919-2013)。信頼性、耐久性、生産性を兼ね備えた『世界で最も多く使われた軍用銃』AK-47の設計者。1911&M2(ほか)のジョン・モーゼス・ブローニング(1855-1926)でもよかったが、時代が近い方を採用。
他の2人のように、そのうち教科書にも載るかな(期待)。