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異世界でチートだが万能ではない  作者: 杏栄
第二部 街で
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3.演習と姉妹団/演習1

前回のあらすじ。姉妹団の支部長と副支部長と訪問の打ち合わせをした。


 姉妹団を訪ねる期待と不安がせめぎあって、演習場へ向かう泰雅は落ち着かなかった。しかし訓練はそんな葛藤を抱えたままこなせる程ぬるくはない。

 ――それはそれとして、泰雅は目の前に広がる光景に呆然としていた。一昨日にはなかった障害物――高さ2m、タテヨコ10mの岩をつめた金網の籠(ガビオン)に埋め尽くされている。

「演習を始める」

 バリレル守備隊長が宣言する。

「第1班、リーダー、リナルス」

 続いて10名の隊員の名前が読み上げられる。

 訓練に参加しているのは守備隊の半数だ。1チーム11名なら、4チームの対戦になるだろう。

「第2班、リーダー、泰雅」

 は?

 続いて読み上げられたメンバーが、泰雅の周りに参集する。きちんと5×2に整列して指示待ち状態だが、泰雅はそもそも部外者だ。何をどうしたらよいものか見当もつかない。

「泰雅」

 班分けを終えたバリレルが泰雅に声をかけた。

「はい」

「演習場では俺の指示が絶対だ。そういう約束だったな」

「――はい」

 何とかしなければ。とりあえず、ゲームの内容そのものを知らないという状況から解消しよう。

 演習場は100m×200mの長方形とみなすことができる。そこに3mの間隔を置いて10m×10m×2mの障害物が配置されている。障害物の数は8×15=120個になる。これを2日で設置したというのだから、辺境伯軍工兵部隊もたいしたものだ。どういうわけか魔覚の通りが悪い。魔覚疎外の魔道具(アーティファクト)という感じもしないのだが。

 ルールは刃引きの剣を使って

①対戦部隊の全滅

②演習場中央に立てられた旗の周囲に防御陣を構築し、時間終了まで敵の攻撃を防ぐ。


 第4班との初戦は辛勝だった。

 特に作戦らしいものも思いつかなかった泰雅は、部隊を率いて侵攻した。先に旗に取りついていた敵先遣部隊を撃破して防御陣を構築させる。防御側は陣地構築に人手を取られる分不利になるが、泰雅はあちこち飛び回って戦線を維持した。

 まだ個人の戦闘能力が勝敗を大きく左右するのである。

 続く第1班対第3班で、第1班を率いるリナルスは単騎突出して中央を占拠、第3班を寄せ付けず、防御陣地を構築させた。

 本職は流石だと泰雅は素直に感心した。


「泰雅殿は今の私を見て、強力な戦闘単位の戦い方を学んだ筈だ」

 リナルスは部下にブリーフィングする。

「そこで今回は最初に泰雅殿を撃破する。アルファは4人を率いて右翼から、ベータは4人を率いて左翼から泰雅殿を討ち取るのだ。優勝ボーナスは我々のものだぞ」

「おう」

 第1班が気合を入れる。


「たぶんリナルス殿は、俺が開始早々突っこんでいくことを前提に作戦を立てると思う」

 泰雅もブリーフィングの真似事をしてみるが、先が続かない。

「この中で戦術指揮が一番巧いのは誰?」

 本人を除いて全員がベータを見る。初戦で回りに指示していた先任軍曹だ。泰雅は丸投げした。

「それではベータ、君を副班長に指名する。今言った敵の作戦を前提に、こちらの戦い方を考えてほしい。敵が違う作戦を取ったら俺の責任だ。そうでないのに負けたら君の責任だ」ベータは敬礼を返し、受命する。

「それでは泰雅殿には単独で突入してもらいましょう。その間に我々は防御陣地を構築します」

「わかった」

「この作戦の肝は、泰雅殿が必要な時間敵を引きつけ、我々を妨害させないところにあります。包囲されてはなりません。リナルス殿の後ろに抜け、敵両翼を振り回してやって下さい。できますか」

 うーん。

「やってみよう」

 泰雅は切り札を1枚切る事にした。

「ああ、それから俺は軍人じゃないからボーナスは要らないよ。皆で山分けにして」

「ありがとうございます」

 第2班の気合も充分のようだ。


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