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異世界でチートだが万能ではない  作者: 杏栄
第一部 森の中で
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1.転移/フィービ

前話のあらすじ。パンとスープを食べた。


 きれいに平らげると、黒猫は

「ふぃーび」

 声に応じて現れたのは、15,6歳に見える小柄な少女だった。褐色の肌に灰青色の瞳。同色の細い縞がうねりながら、両耳の手前から頬の半ばまでを飾っている。肩程の長さで切られた焦茶の髪は無造作に後ろで束ねられている。身長は泰雅の肩までもないだろう。

 泰雅のと似たようなシャツを着て、季節柄かその習慣がないせいか、下着は付けていないようだ。ずっしりとしたメダルが胸元を押さえて、その豊かさを強調している。直径5cmほどのそのメダルには、肉球が彫り込まれている。

 シャツと同素材の巻きスカートの裾には鮮やかな青糸で幾何学模様の刺繍が施されている。にこりともせず、茶を給すると、皿を提げていく。さっきの食事もこの少女が用意したのだろうか。

 泰雅は吹き冷ましながら薄茶色の液体を啜った。香ばしい。

「アー、マズハ名乗ラセテナケレバナラナイ……トコロダガ、私ニハ名前ガナイ。私ハキノウニ過ギナイノデネ」

「キノウ?」

「機能、ふぁんくしょん、役割、ろーる、マアソンナモノダ。君ノ言葉ニ即シテ言エバ、多元宇宙・相似体・神経回路・読ミ・書キ装置」

「多元宇宙?」

 泰雅は眼を白黒させた。何を言い出したのか見当もつかない。

「多元宇宙……ツマリ君ノ宇宙、コノ宇宙、ソノ他アリトアラユル宇宙ニオイテ」

 SF的な設定のようだ。

「相似体…各世界デ共通ノあいでんてぃてぃヲ持チ」

 別世界のオレというやつだろうか。

「神経回路ヲ読ミ書キスル。ソウイウ装置ダ」

 神経回路?それが読み書きできると

「何ができるんだい?」

 たしかにすごそうではあるが、いまひとつ用途がピンとこない。

「異世界ノ相似体トノヤリトリ、情報共有ダナ。モトモトあーかいばノ端末ヲ生体移植シテ自律機能ヲ持タセテイル」

「アーカイバ?」

「多元宇宙ノ情報ヲ集メタモノダ。更新サレ続ケル百科事典・あかしっくこーど」

「見ためどおりのネコではない」

「マッタク猫デハナイ」

「でもなぜネコ?」

「ぷらっとふぉーむトシテホボ最小ノさいずデ最モアリフレタ存在ダカラデハナイカナ。自分デ選ンダ姿デハナイノデ、ナントモ言エナイガ」

 黒猫は首を捻る。同じ側へ長い尻尾もしなだれる。

「それで、ここは異世界なんだね」

「然リ、――おりじなるノ君ガイタ世界デハナイ」

 泰雅はひとつ深呼吸をした。

 お約束の質問をするために。


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