7.撃退/戦闘
前回のあらすじ。魔術で空中を走れるようになった。
※ 戦闘描写があります。
泰雅は無言でフィービをお姫様抱っこすると、エア・ランで巨木の幹沿いを駆け上がった。
『泰雅さま!』
押し殺した叫びを無視して、太い枝の上に置き去りにした。またぞろ自分を囮にしろなどと道理を説かれてはかなわない。
泰雅は街道に向かって歩きながら、魔覚を広げた。後続はない。
4人は散開したまま近づいて来る。泰雅は小さな空地の手前で足をとめた。3mの至近距離。
「止まれ」
むさ苦しい男性だ。汚れてもとの色もわからない革鎧を身につけている。兜はかぶっていないが、面頬で表情風貌はわからない。右手には70cm程の山刀を握っている。
「小僧、もうひとりはどうした」
魔覚か、と思った。フィービが安全な場所に居るうちに撃退しなければ。
「ほかの3人もだ。止まれ」
自分の魔覚が相手よりも広いことを伝えることになる。
「一人で俺たち全員を相手にする気か。強がるな。武器を捨てろ。うっかり殺しちまうかもしれない」
どちらも相手に答えていない。互いに自分の要求を口にしているだけで、会話と呼ぶことはできない。
「退れ。この先に用事があるなら回り道してもらいたい」
「ああ。用事はある。だが退る気はない」
男が大喝して山刀をテイクバック。泰雅は手中の木散弾を相手の顔面に向けて発射。後退以外の動作がトリガーだ。既に思考は放棄した。
2本がヒット。1本は面頬を直撃、まっ二つに破壊、もう1本は眼窩に命中。
1ダウン。
エア・ラン。No.1の脇へ回り込み、No.2の方向へ死体を吹き飛ばす。
No.3、No.4が戦闘開始を知り、回り込むのをやめ、直進してくる。服から次の木散弾をむしりとる。
叢越し、魔覚を頼りに発射。命中。即死はしなかったが、1人が顔をおさえてうずくまる。2ダウン。
No.2が死体をふりほどいた。
「逃げろ」
あっけなく男たちは逃走に移った。No.2、No.4は全速力で、No.3はよろめきながら逃げていく。
死体と静寂が残された。男たちは城市と反対方向へ逃げていく。黒猫はまだ現れない。




