表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界でチートだが万能ではない  作者: 杏栄
第一部 森の中で
10/96

1.転移/芸術分野

前回のあらすじ。生産チートはないらしい。



「ええと、武術か魔術の達人にはなれるの?」

「回路ヲ焼キ込ムトイウ方法デハ、君ガ達人にナルコトハデキナイ。モシ実行スレバ、ソノ瞬間ニ君ガ消エ、達人ノこぴーガ誕生スル」

 再召喚と同じ理屈か。

「基本回路ハ多クノ名人上手ノ回路ノ最大公約数ニスギナイ。ソシテソノレベルデアレバ、イマノトコロ重大ナ干渉ハ知ラレテイナイ――スマナイ」

 最大希望が速攻潰されてしまった。落胆した表情があまりはっきりしていたせいか、黒猫までしょんぼりとうなだれていた。

「ピアノはあるの?」

 泰雅は受験の半年を除き、年長組からピアノを習っていた。ベートーヴェンのピアノソナタを偏愛し、ボカロ編曲を弾く。

「ぴあの……鍵盤楽器ハナイ。打楽器、管楽器、弦楽器ナラアルガ」

 天才ピアニストになるためには、ピアノの発明から始めなければならないらしい。18tの張力に耐えるフレームとピアノ線。連打に耐えるハンマー装置×88鍵……ここでうんざりしてしまうあたり、泰雅の生産系適性は案外低いのかも知れなかった。

 ギターでも習っておけばよかった。父が遊びで弾いていたのを泰雅は恨みがましく思い出した。もっとも父はコード表と首っぴきで掻き鳴らすだけであったから、ギタリストにはなれないだろう。


 日が傾いてきたので黄昏に夕餉を摂り、そのまま就寝する。

 フィービが整えてくれたベッドに潜り込む。午すぎまで寝ていたし、環境が激変しすぎたせいもあり、寝付かれない。

 黒猫の勧めるとおり、戦士か魔法使いになる以外ないらしい。黒猫がフィジカルに太鼓判を捺し、アフターケアにも手を尽くすといってくれているのが、せめてもの慰めだった。

 この社会は封建制だろうか。

 江戸時代であれば士農工商。戦士は士、生産系は工に相当する。商人としては致命的なまでに愛想がない。植物を育てることについていえば、どちらの祖母も上手だった。両親はどちらも植物枯らし――ブラウンフィンガーを自認していた。泰雅自身は苦手とも思っていなかったが、特に栽培が好きとも得意とも思われない。いずれにせよ、盗賊・山賊が横行するところで農業を営むならば、自衛能力は必須だろう。

 風が出てきた。森の木々が葉を鳴らす。

 平行進化。この世界でも樹皮で身をかため、恒星の光エネルギーを糧とする生命形態が繁栄しているのだ。それを食べる動物が居り、その動物を食べる動物が居るのだろう。生命のネットワークの中で、ヒトはどのような地位を占めているのか。


設定説明は(だいたい)終わり。

次回から、武術のガイダンスです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ