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15.ダンジョンに宝箱あるってよく考えたらおかしい


「ダンジョンを攻略します」


 ……昨日はマッディーとしてしまった。

 いつもの添い寝のふりして、あれはズルいですマッディーさん。

 人妻だ、合法ロリだ、実はド淫乱だと白状して豹変してしまいましたね。

 もうすっごい吸い取られてしまいました。

「魔力……欲しいし」

 そう、今、金を儲ける手段がマッディーさんが作る金銀宝石しかないですからね。

 ゲームでは主人公とマッディーとのエキサイトはありません。自主規制がありますから。ラッキースケベだけしかありません。

 でも合法ロリとなれば話は別です。

 相手は元人妻と言う背徳感もまた……。


「ダンジョンて?」

 おっと、心のスチルを回想してる場合じゃなかったな。


「王都の北西にパイパイダンジョンがあります。そのパイパイダンジョンの奥深く一番最下層に奇跡のED回復薬、『パイアグラ』があるんです」

「なんじゃそりゃ――――っ!!」

 全員総ツッコミ!

 そりゃそうだ。俺もそう思うけどさ、これエロゲだからさ。


「そんなもんどうするんです? 魔王様いつも元気じゃないですか。昨日のゲージだって……」

「だまれえええええ――――!」

 ベル、魔王城の魔力モニターをそういうチェックに使うのはやめてくれませんかね。


「マッディー……。あんたねぇ……」

「ふわぁあ……」

 スワンがにらむとマッディーが欠伸してとぼけます。

 あくびやめてください。俺が寝かさなかったみたいじゃないですか。

 寝かしてくれなかったのはあんたでしょう。


「まあ、魔王様が元気ってのはいいことだよ、うん」

 ファリアはいつもニコニコ嬉しそうだねぇ。

 あの子供が泣きそうな悪役レスラーのメイク寝てる間にしてやりましょうかね。


「こほん、で、なんでそれが必要なんですか?」

 話戻してくれてありがとねベル、君は優秀な側近だよ。

 

「えーとですね、勇者は今ミス・ビビアンさんしか相手にできません。このままでは老練なエルフの魔法使いミス・ビビアンが勇者のパーティーメンバーになってしまいます。しかしパイアグラのあるパイパイダンジョンはパーティーメンバーもいない今の勇者のレベルでは攻略不可能です」

「うん」

「かといって、ミス・ビビアンをメンバーにしたら、今度はビビアンさんがパイアグラを取りに行くのをたぶん許さないでしょう」

「勇者を独占できなくなりますもんねえ――……」

 そうなんだよサーパス。


「なので、俺たちでこれを奪取し、勇者にこっそりプレゼントします。ビビアンさんの呪縛から逃れた勇者は二度とお店にも、ビビアンさんにも近づかないでしょう」

「なるほど、いい手だ」

 ファリアが手を打つ。


「しかしそうなると、勇者はまた新たにパーティーメンバーを入れることができるようになるということになりませんか?」

 ベルが質問する。


「そうだ。どちらのリスクが高いかだ。妨害のしようがないミス・ビビアンか、今後妨害する余地のある他のパーティーメンバーか、だな。俺はミス・ビビアンに加入されたほうがやっかいだと今なら思う」

「うーん……どうなんでしょうねえ」


 ネットのスレ、「ミス・ビビアンに突撃した結果www part12」まであったんだよ……。あれだけ伸びたってことは、なんかあるんだよベル……。


「というわけで全員でダンジョンを攻略し……」

「……必要ないです」

 マッディーが手を上げる。


「ダンジョンは私の担当……。魔物に頼めば案内してくれるから……」

 あっそうか俺魔王だから今は身内か。

「じゃ、マッディー……、マッディーさん、お願いできる?」

「……御同行します」

 取ってきてくれるんじゃないんですか。

 俺も一緒ですか。

 悪い予感しかしないんですけど。




 はい、やってきましたパイパイダンジョン。

 見事なパイパイ型の二つの山の谷間に、入り口があります。

 どうなんでしょうねえこの造形は……。エロゲだしね……。

 入っていくのがすごいイヤなんですけど……。


「ついてきて」

 マッディーさんがとことこと歩いてダンジョン入り口から入ります。

 うおー深い。


「おかしい」

 マッディーキョロキョロしてるよ?

「魔物たちがいない……奥で騒いでる」

 なんかあったのかな?


 洞窟コウモリが飛んできた。

 マッディーの肩にとまって、キイキイ報告してる。

「勇者が来たって!」

「ええええ――――!」

 駆け足で奥まで行く。


 いろんな魔物がいるけど、手を出してこない。

 それどころか会釈して頭を下げてくれたりする。

 あーやっぱり俺魔王なんだなーと変なところで実感する。

 パイアグラには用はなかったけど、高く売れるからレベル上げもかねてここはゲームで攻略したことがある。マップ同じだわ。ちょっと感動。


 大柄な爬虫類系魔物たちが集まってる中央で、勇者が倒れてた……。

「遅かった……。死んでる……」


 うん。わかった。

 首があっちにあるんだもん。


 大変なことになりました。

 主人公の勇者がいなくなったら、このゲーム、いや、この世界どうなっちゃうのか、全く予想がつかない。

 俺たちが愕然としている様子にまわりの魔物たちが申し訳なさそうにうなだれる。

「いや、お前たちは悪くない。よくやった」


 弱いくせにいきなりこんなとこ一人で攻略しようとする勇者が悪い。

 そんなにパイアグラ欲しかったか。

 そんなことしなくても俺らがプレゼントしてやったのに。

 いや、そこまで追い詰めた俺のせいか。

 ビビアンさんの呪いそんなにやっかいだったかね。申し訳ない。


「城に戻ろう。日付が変わる前にやっておかないといけないことがある。パイアグラは回収する。持ってきてもらって。勇者の死体は触らずにそのままに」


 マッディーがそばにいたコウモリに命令すると、ダンジョンのラスボスの超巨大ヘビがパイアグラの入った宝箱咥えて持ってきた。

 中を開いて瓶に入ったポーションを受け取り、入り口までマッディーを抱えて走る。


 二人で魔王城に戻るとベルがあわてて報告してきた。


「魔王様! 勇者が一人でパイパイダンジョンに!」

「知ってる。確認してきた」

「映像見ます?」

「いや、いい。それはクリスタルに記録残しておいてくれ。イナリーちゃんみんなを食堂に集めて」

「はい!」



 勇者の死亡報告を聞いてみんなが青ざめる。

「どうなっちゃうんだろうねえ……アタシたち……」

「考えられるケースは三つ」

「?」

「一つは、明日になれば何事も無かったかのように勇者が宿屋から出てくる」

「セーブポイントだね」

 そうだよスワン。

「もう一つは、やはり何事も無かったかのように勇者が宿屋から出てくるが、俺たちも今日と言う日が無かったことになり、気が付かないまま今日と同じ日を過ごす」

「だったら日が変わる前に対策しておけば状況が変わるかも……」

「無駄だベル、それもなかったことになる」

「そっか……」

「最後の一つは?」

 ……そこだよサーパス。


「……ゲームが終わるかもしれん」

 全員、押し黙る。



 パン。手を打ち鳴らす。

「さ、やれることをやろう。心配しなくても、勇者のやつ俺らが知らないところできっと何度か死んでるさ! ゲームってそういうもんだろ?」

「そうだね」

「それに賭けるか」

「了解です」


「イナリーちゃん。それにみんなも」

「はい」

「今夜はご馳走にして」

「わかりました! がんばります!」



 その晩は外でバーベキューして、みんなで楽しんだ。

 もしかしたら最後の夜になるかもしれない、そんな不吉な予感を振り払うように騒いだ。楽しかった。


 部屋の窓から外を見上げる。

 月が出ている。

 丁度満月だ……。


 コンコン、ドアがノックされる。

「どうぞー」

「お邪魔するよ」

 ファリアの声だ。

 振り返った俺に並んで話しかける。

「窓の外がどうかしたかい?」

「ああ……。もし今日と言う日が無かったことになったとしても、月は動いてるんじゃないか。明日は満月じゃないんじゃないかと思ってさ」

「なるほど、頭いいね魔王様」

「勇者がやり直すのにわざわざ月まで止めないだろうと思って」

「あっはっは!!」

 ファリアが笑う。


「魔王様、風呂入ろう!」

「バスタブしかないぞ」

 俺サイズの。


「いいからいいから、来てくれよ!」

 ファリアに引っ張られて魔王城の片隅に行くと……すげえ!

 露天風呂できてる!


「マッディーがゴーレム使って土や岩固めて組んでさ、サーパスが水入れて、アタシが沸かしたんだ。すごいだろ!」

「なにやってるのかと思ったら、これ作ってたのか。すごいじゃないかっ!」

「今夜お披露目しようとしてたんだけどさ、それどころじゃなくなって」

「今からお披露目すればいいのに」

「いや、その、なんつーか」

 ぽりぽり。


「みんなが、アタシの貸し切りにしてやる、魔王様と使えって」

 ……みんな優しいな。

 そういえば、ファリアと、スワンとはまだだったな。

 スワンはどうしたのかな。嫌われちゃったかな。それともこれ作るのにかかわって無いから遠慮したのかな。


「さあー入るぞ――――!」

 ファリアがぱっぱぱっぱと服脱いで、ざぶんと浸かる。

「うわー気持ちいい――! 魔王様もおいでよ――!」

 俺もさっさと服脱いで風呂に飛び込む。うわーほんと気持ちいい――。


 二人でのんびり湯に浸かる。

 上がって、背中を流してもらう。

「アタシさあ、小さいころから大きくてさ」

 小さくないじゃん。あっはっは。

「男の子によくからかわれたんだ。それで女子高に入ったらさ」

「モテちゃったろ」

「そうなの――! 女子にね! なぜか女子にね!! 女子高だからね!」

 お姉さまだったんですねわかります。


「で、レスリング部に誘われてそこでやってたんだけどさ、全国行ったりしてたの」

「よく覚えてるな。俺この世界来てから前世の自分の記憶なんてどんどん薄れてあんまり思い出せなくなってるのに……」

「アタシは今までなにか思い出すってことがなかったんだけど、あの日みんなで白状しあってから思い出すことがどんどん増えてるよ。ふふっ」

 いいなあ。


「交代」

「へ?」

「今度は俺が流してやるよ。さ、座って座って」

「ありがと。魔王様にそんなことさせるのなんか悪い気がするけど」

「たまには世話させてくれ」

「はいはい」


 木の椅子に座ったファリア、ドカッとオヤジくせえポーズで座る。

 子供に背中流してもらうお父さんですか。

 いや、こうしてみると紛れもなく女ですね……。

 ぼんっと背中からはみ出て見える巨大な双丘。キュッと締まったウエスト、豊かなヒップ。魅惑的なお尻の割れ目。逆三角形のたくましい肩と腕。

 縮尺が多少おかしいだけで素晴らしいナイスバディです。


「あー……気持ちいい――っ」

 よく泡立ててタオルでごしごし背中を洗う。


「でね、それでプロレス団体にスカウトされてさ、頭悪かったからちょうどよかったかなって卒業してから入団して、でも女子プロレスなんて斜陽営業でさあ人気のピーク過ぎてたね」

 プロレスなんて地方巡業の看板でしか見たこと無いもんな。女子プロレスならなおさらか。


「鳴かず飛ばずで人気も出なくて、昔なら宝塚みたいに女性ファンからキャーキャーいわれてたのに客はオタクばっかりになってきてさあ。で、美少女レスラーがいじめられてヒーヒーいう演出がウケて、それでアタシは悪役転向!」

 ぱんって自分の膝を叩く。


「おかげで死ぬまで男っ気無し! まだ処女なんだよ――!!」

 叫ぶな叫ぶな! そんなこと大声でっ!


「どう思うね魔王様」

 振り返る。


 ……。


「……アタシでこうなるの?」

「もちろん」

「嬉しいねえ」

 にっこり笑う。


「触っていい?」

「どうぞ」

「ひゃー! こんなんなるんだ!」

「あっはっは。初めて見るか?」

「恥ずかしながら」

「じゃ、もっと恥ずかしいことしにいくか」

「どこで」

「ベッドで」


 たったった。ざぶーん。

 そんなに恥ずかしかったか?



次回「16.一人で迎えても朝チュンは朝チュンなのだろうか」

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