13.即死攻撃があるなら使わない手はない
「我らは森の守護者! 引くことかなわぬ!」
ファリアと一緒に森まで来ました。最近の勇者のお気に入り狩場です。
仲間をもう何匹も殺されてて、オオカミたちも引くに引けない状況ですな。
「だーかーらーっ、それが勇者を付けあがらせてる理由なんだってば。ここは勇者相手にするのやめて、隠れててくれよ!」
ファリアの言うこともなかなか聞いてくれないよこいつら。
「……ならばこの森燃やしてしまうか?」
俺、魔王の鎧着てドスの効いた声で脅してみる。
「ファリア、やれ」
「おう」
ぶわあああああ――――!!!
ファリアが全身に火を纏い、猛烈に燃え上がる!
驚愕するオオカミども。
全員いっせいにひっくり返って腹を見せたよ……。
わかりやすすぎるわあんたたち。
「よしっ……これでオオカミ相手にレベル上げはできなくなると……」
「あっはっは!」
ファリアと並んで森を歩く。
「ファリアはどんな魔法使えるの?」
「これだけ」
ステータスを見せてくれる。うおーHPも高いし攻撃力も凄いし炎系の魔法がずらずら並んでるわ。最初に倒される四天王のレベルじゃないぞこれ。
「でもMPが低いから使ってみたことは全然ないよ」
そういえばファリア肉弾戦で挑んできて勇者パーティーに負けるんだよ。
全身に炎をまとって、でもやってくるのは物理攻撃。
炎系魔法使いだすのは勇者パーティーに入ってから。
そう、勇者とのベッドで魔力が上がって使えるようになるんだよね。
エロゲーですから。なんというご都合主義。
「ご苦労様。じゃ、買い物して帰るか。ファリアこれ」
「ん?」
「マント、これすっぽりかぶって。そのカッコじゃ街入れないから」
「アタシも買い物していいのかい!!」
「もちろん」
そして、俺も平民の服に着替えてから、王都に転移した。
服屋に行ってさ、ファリアサイズの服なんとか見つけて、着替えてもらった。
いやあ喜んでたね! 大柄で済ませられないでっかい町娘の出来上がり。
「アタシ来てみたかったんだよーこの街! いやあ嬉しいねえ!」
「そのうちゆっくり回ろう。今日は買い物いっぱいあるからさ」
「うーん……卵、小麦粉、砂糖、スパゲティ、トマト、豚肉5kg、塩、ソース、トイレットペーパー、サラダ油、醤油……醤油って売ってるかぁ?」
ものすげえ買い物リスト。全員から頼まれまくってしまっているからな。
大女と俺のカップルだからね、なんか目立ってしょうがない気もするけど、
荷物持ってもらってます。そのせいかー!?
「ファリアも買いたいものあったらどんどん買っていけ」
「そういやお金ってどーなってんの?」
「前にマッディーにもらった金とか宝石とか売った金がまだあるから」
「うーん、アタシもなにか売れるもの作れないかやってみようかな」
「できたら頼む。俺もいろいろ考えてはいるんだけどさ」
うーん、主人として、全員を養ってやりたいんだけどさ。
なんかいい方法ないかなあ。
買い物済んで、路地裏から魔王城に転移する。
「ただいまーっ」
「おかえり! あっファリアそのカッコ……」
「えへへ、いいだろー」
ファリアが町娘のかっこうでくるっとまわるとみんなが羨ましがる。
「次はわたし連れて行ってくださいよ――!」
「私も――!」
全員やかましいわ。
女性は買い物大好きだからな。これは全員連れて行ってやる必要があるな。
「はいはい。次の買い出しにはお願いするよ」
「魔王様、はいこれ」
スワンから渡された。
「なにこれ?」
「ワイバーンの子供が歯、抜け変わったんだー。もらったの。高く売れるよ」
おおおー。翼竜の牙ね。これはいい資金源になりそうだ。
「なるほどっ、魔物の素材か! アタシも鹿の角でも集めようかな?」
それはあんまり高く売れそうにないよファリア。奈良公園でも売ってるぞ。
「お金なんて人間からどんどん盗めばいいじゃないですか。遠慮なんてしなくていいでしょうに」
いや、ちょっと……、ベルさんや……。
「それはちょっと……」
「うーん……」
「いやーさすがに……」
正体をばらし合ったおかげか、みんな急激に感覚が日本人化してますな……。
「(ポリポリ……)」
マッディーはお菓子に夢中です。金銀宝石作り放題だもんねこの人。
「ま、それは次貧窮したときってことで」
「あははは」
「わたしは貧乏暮しはイヤですからね」
さすがは元ソープ嬢。サーパスさんはセレブリティですな。
みんなで昼食を済ませてから、魔王城中庭で魔法訓練。
みんなの実力も把握しておかないとね。
サーパスさんはウォーターカッター、ウォーターハンマー、アイスブリッド。
水を操作して物理攻撃。
「そこまで水、操作できるんだったらさ、こういうの、できないか?」
以前から考えていた技を提案してみる。
「うわ卑怯ですそれ……」
「試しに俺にやってみてよ」
バッタリ。一撃でやられました。
「ちょっ、ちょっと! 死なないで魔王様――――!!」
危ない危ない……。もう少しで死にそうでした。
回復もできるんですねサーパスさん。水の加護、ありがとうございます。
スワンはウィンドカッター、ソニックウェーブ、トルネードアタック。
空気を自由自在に操って攻撃ですね。
「ちょっとアイデアがあるんだけど、こういうのってやってみない?」
「……えげつないよ魔王様」
「はい、俺にやってみて」
……意識がなくなりかけ……。
「ストップ、スト――プ! スワン――! 魔王様死んじゃう! 死んじゃう!」
周りのみんなが止めてくれたおかげで一命を取り留めました。
これも危なかったわ……。
ファリアの人工呼吸で助かりました。
目覚めた時の唇の感覚、きもちよかった……。
マッディーさんは土や岩のゴーレムを操作します。
金属弾をぶつけたり、金属の刃物を飛ばしたりとか鉱石系のコントロールも上手ですね。
「ちょっと難しいかもしれないけど、こんなのをイメージして、できないかな? ほら、金属の操作って点では、同じだから」
「……いいの?」
「俺なら死ぬところまでいかないだろうし」
やべえ俺本当に死ぬかもしれん。
「魔王様――! 魔王様しっかりして――――っ!……マッディー! すぐに戻して! 急いで――――……」
みんなの声が遠くなる。
俺死んだらこの世界どうなるんだろう……。
ふにゃ。
目が覚めた。知ってる天井だ。俺のベッド。
ふにゃにゃ。
横見るとサーパスさんがいる……。
とろんとした目で俺を見る。
完全に事後なんですけど――――!
朝チュン状態じゃないですか――――!
「あ、俺、どうなったの?」
「マッディーさんの魔法で倒れちゃったので、ここに運び込んでわたしが回復ずーっとしてましたのよ」
俺の首に手を回して抱き着いてくる。
ふにゃ。
俺もサーパスさんも全裸じゃないですか――――!
「あ、ありがとう……。助かったよ……」
なでなでなで。
どこ撫でてるんですかサーパスさん。俺の俺が狂暴化しちゃうじゃないですか。
「魔王様のことは心配だったけど、みんな喜んでましたわ。あんな簡単な魔法で必殺技になるんですもの。これからは何があっても自信をもって戦えますわ。お礼を申し上げます魔王様……」
「そりゃあよか……」
口で口をふさがれる。
「魔王様、童貞だったんですってね」
うあああああ――――! イナリーちゃああああ――ん!
やっぱお見通しでしたのか――っ。
って、それみんなにバラさないでえええええ――――!
ふにゅっ。
サーパスさんの柔らかな胸が俺の上に……。
「魔王様もレベル上げしなくっちゃ……。さ、授業の始まりですよ……」
も、元ソープ嬢にそんなことされたら……。
そ、そんなことされたら……。
ア――――ッ。
素敵な個人レッスンをありがとうございました。サーパスさん。
心のスチルがいっぱい埋まりました。エロゲーですから。
次回「14.幼なじみって現実には彼女になんかなってくれない」