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第八話 会議と魔女

 この世界で最も大きい国の首都にある城では最近起こっている勇者の死亡事件について話し合っていた。


「速水様で四件目。これはやはり何者かが勇者を殺そうとしている。そう考えて間違いないのでは?」

「だが魔族を見たという情報もないし、奴らはもっと派手に勇者の死亡を知らしめるだろう?」

「確かに。勇者は我々人族の希望なのだから。勇者を排除しようとするのは効果的だろうだが、宰相の言う通り、魔人族ではないだろう」

「とすると……」

「獣人族かはたまた妖精族か」

「数が多すぎますな」

「ああ、だが人族でないのは確かだ」

「そりゃそうだ。そんなわかりきったことを言うでない」


 あははは、とそこに集まった人たちは笑う。


「ということは」

「ええ、他種族への牽制を行うために輸出入を制限するということでどうだろうか?」

「うむ。賛成だ」


 みな彼の意見に同意する。一人を除いて。


「果たしてそれで充分だと思うのか?」


 そう言ったのはこの会議でも重要参考人としてよばれた老婆。


「他種族の中には元々排他的なやつらも多い。ほとんど効果がないようにしか思わんが」


 彼女がそう言うと次第に賛成の人は少なくなる。それはその老婆の信頼性が高いから。彼女は未来を見ることができる魔女として100年近く生きている人である。まあ、本当に100歳ぐらいなのかはわからない。記録として残っているのがそのぐらいだというだけ。実際はもっと年を取っているのではないかとさえ言われている。


「ではどうすればいいのでしょうか?」


 会議のトップである男のがそう尋ねる。


「決まっておる。奴らに戦争を仕掛けるのだ」


 それは思ってもみなかったこと。いや、望んではいたが声には出して言ってはいけないことだった。


 それをあの魔女が示してくれたのだ。いける。そう思わせるには充分だった。


「そうだな。確かにそれが一番だ。今は勇者もいる。負けはするまい」

「何を勘違いしておる」


 もうすでに決まったといった雰囲気の中老婆が不機嫌そうにそう言った。


「どういう意味ですか?」

「まだわからんのか。お前さんたちはあり得ないと言っておったが、この度の事件は人族の誰かによる者だ」

「え!何を言っておられるんですか?」

「私はね見たのだよ。女が勇者を殺している未来を」

「!」


 みな啞然とした。魔女が見たと言うのなら本当に起きてしまうのだ。


「それで!どんな女なのですか?」

「わからん。その女は血まみれで顔の判別がつかんかった。髪は長くて十代後半といったところかの」

「どうすればよろしいのでしょう!?」

「その女をおびき出す。それが最善だろう。勇者が一人でどこかに魔物討伐に行くとでも噂を出せば、その女はやって来るだろうよ。勇者を殺すために」

「なるほど、それならば」


 みな老婆の意見に同意すると早速計画を立て始める。


 そのとき、老婆がうっすら笑っていることには誰も気がつかなかった。


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