第六話 速水修也
勇者である速水修也は今魔物討伐のために目的地であるクリスタルマウンテンの近くの町に来ていた。昨日は俺のためのパレードがあり、ゆっくりできなかったので、今お忍びで町中を歩いていた。
「へえ、小さい町だと聞いていたんだが、結構にぎわっているんだな」
「はい、そうです。この近くにはいくつかの観光地がありますから、中継地点として利用されることが多いんです」
そう答えるのは速水と同じパーティに所属している魔法使いの女。魔物に襲われているときに速水に助けられ仲間になった者だ。
「何か美味しいものがあればいいんですけど」
もう一人の仲間である盾役の女がそう言う。彼女は奴隷になりそうになっているところを速水に助けられた者。
二人に共通するところは速水に絶大な信頼と親愛を持っているところだ。それと……。
「そうだな。本当は宿に行って楽しみたいところだが……。最初に腹ごしらえするか」
速水はそう言うと食事場所を探すために歩き出す。
「!速水様、大好きです!今夜は頑張りますから!」
盾役の女はそう大きな声を出しながら速水の後を追う。一方、魔法使いの女はやれやれといった顔を浮かべながらも二人の後を追う。ちょっと残念に思いながらも。まあ、いつでもできるんだからと考えて。
速水は上機嫌だった。自分の思い通りに事が進んでいることに。彼はこの世界に来てから自分の望んだとおりになっているこの状況を心底喜んでいた。最初はどうなることかと思っていたが、自分の力が強力なこと、勇者という上級階級を得てからはそんなこと考えなくなった。自分が望むままにできる世界。それがこの世界だった。
彼は表向きは紳士なのだが、本当はかなりの女好きだ。そのため本当は魔物と戦うなんて仕事をせずに毎日女の子を遊んでいたいものだが、ある時気が付いたのだ。勇者としての名声を集めるほど女がやって来ることに。それに気づいてからは魔物討伐をするようになった。冒険者は男ばかりのむさくるしい場所、そう思っていたから、城の騎士として働きだした。
そしてそれのおかげでいいモノが手に入るようになったのだ。それが貴族の娘だ。箱入りで世間知らずな女。勇者と聞けば喜んで体を差し出してくれ、見てくれもいい女。俺のいた元の世界では楽しめないようないい女。たち。それがこの世界では手に入るのだ。そして金も。俺はその金を使いいい女を手に入れるために使い始めた。その中で今でも手元に置いているのが今のパーティーメンバーだ。どちらも元貴族様。彼女たちは助けられたと思っているだろうが、実際は少し違う。魔法使いのときは彼女にたくさんの魔物をけしかけ追い詰め、俺に助けられるようなシチュエーションに持っていき仲間にさせた。盾役のときは彼女の店を潰しお金に困らせ彼女が奴隷に落とされそうになっているところを買ってやった。どちらも極上の女でなかなかに満足している。
欲しいものが手に入る。ここはそんな世界だったから、俺はすぐにこの世界に留まることを決めた。
すると、なぜだか前よりも強力な力が手に入ったのだ。このことは誰にも報告していない。だけどこのおかげで俺は国中に有名になった。まだあいつ程ではないが。それでも勇者たちの中では上位にいる。
すると、俺は一般の兵士や冒険者では倒せないような魔物の討伐に関わるようになった。今回もその一環。たまには他の女とも遊びたいからな。俺はすぐに了承した。
速水は食事場所を探しながらも女の品定めもしていく。
あれはダメだな。あー、あれはなかなかだが胸がなあ。お!あいつなら遊ぶぐらいしてやってもいいかな。
そんなときだ。速水好みの女を見つけたのは。
町娘に見せようとしているがお忍びできた貴族の娘っていうのが丸わかりの恰好をした少女。服は上質なもので、少女の美しさを引き立てていた。肌は白く胸は身長に似つかないぐらいに大きかった。今はあちこちをキョロキョロと見ている。
決めた。あの子にしよう。
俺は内心の考えが漏れないように我慢しながら笑顔で彼女に話しかける。
「お嬢さん、どうかされましたか?」