第一話 プロローグ
寒い。辺り一面吹雪が吹き荒れ、私の体温を奪っていたから。しかしそれだけではない。私は自分の命の灯が消えかかっているのを感じていた。
この世界に来てから。いや元の世界にいたときから私には居場所がなかった。すぐに暴力をふるってくる父親。いじめてくる学校の人たち。それでも耐えてきた。だけど、今は……。
数日前からフラフラになりながら歩いてきたが、この世界の外は危険でいっぱいだった。何も知らない私からすれば堪ったものではない。なぜならこの世界には魔物と呼ばれる恐ろしい生き物が闊歩しているのだから。
戦う力もない私が今まで生きてきたのは生き物の気配を察知するのが得意なのと気配を絶つのがうまかったからにすぎない。それがなければ数歩と歩かないうちに死んでいたはずだ。
でも……もうそれは無理だ。何日も食べていないし、睡眠も満足にできていない。限界だ。
私は生きることを諦めてしまった。
そうするともう体は動いてくれない。重力に引かれるようにして私は地面に倒れた。
死んだ方がましかもしれない。
生まれて初めてそう思った。いじめられているときでさえそう思ったことはなかったのに。なぜだろう。今は死ぬことに何の未練もない。
私は目を閉じて永遠の眠りにつこうとする。
「おい!大丈夫か!」
そんなときだ。誰かの声が聞こえたのは。
だけど私は返事をしなかった。いや、できなかったというべきか。もう口を開くことはでいなかったのだから。そして意識も遠のき始めていたから。
誰かはまだ何か話しているようだった。私には何にも届いていないにも関わらず。
私はその様子を見ると意識を離した。こうやって心配されるのは本当に久しぶりでなんだか安心してしまったから。