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私、記憶を呼び覚ましました

会話までいかなかったです。

 暇だった、思った以上に暇だった。


 侵入者2名を上手に手加減して気絶させた後、私は暇を持て余していた。

 てっきり戦闘音を聞きつけて誰かがやってくるかと思っていたのに誰も来ない。


 慌てて壁とか天井とか元通りきれいに直したのに。

 しばらく待っても誰も来ないから、ひとまず二人を壁際に転がしておこう。

 もし意識を取り戻しそうになったらまた意識を刈り取ればいいや。


 暇な時間を利用して、私はさっきの棒を観察することにした。

 

 戦闘中棒から感じられたのは所謂聖属性の魔力、魔物と呼ばれる存在にはそれなりに有意な属性で武器に属性付与(エンチャント)する時に迷ったらつけとけっていうあれだ。

 勿論今の私にもそれなりに有効。

 じゃあなんで効かないどころか棒が壊れたのかといえば答えは簡単。

 付与された魔力が弱すぎるの一言に尽きるね。

 炎に水をかければ消える、消えるけど山火事にコップ一杯の水をかけたって消えるはずもない。

 そういうことだ。


 これが聖属性の付与された木の棒だったら私には何の興味もないんだけど、こいつらはこれを『模造聖剣』と呼んでいた。

 

 『模造』の意味はよく分からないけど、聖剣といえば人族の生み出した武器の中でも最上位の武器だ。

 私が魔王の時代にも聖剣なんて言うのはゴロゴロしていたけど。

 ここまで弱っちいのは見たことがない。


 最低でも中位の魔物くらいなら片手間に切って捨てる程度の力がないと聖剣とは呼べない。

 私が知っている聖剣の中にも魔法を無効化するとか、次元を切り裂くとか、剣撃を飛ばすみたいなとんでもない聖剣がいっぱいあったっけ。


 それに比べてこの棒は……あの威力じゃスライムとか小鬼(ゴブリン)を追っ払うくらいの力しかない。

 最大威力でスライムを切り捨てるくらいはできそうかな?

 仮に最大威力で振られたとしても私に当てたら同じことだったと思うけどね。


「ううっつ」

 スライムキック!(その実は体当たりだ)


 ペタペタ棒を触っていたら一人が呻いたので一発当てて黙らせておく。


 棒のことはもういいや、まだまだ誰も来そうにないしついでに防具も見ておこう。

 うーん、来ている服は黒いただの布だな……だけどこのベスト? はなかなか優秀だ。


 金属糸が編み込まれていてなかなか固い、この糸は何だろう? 私の知らない金属だ。

 これだけの硬さがあればそこそこの魔物の物理攻撃くらいなら耐えられるんじゃないかな?

 衝撃は抜けるだろうけど。


 でも硬いだけに惜しいな、このベスト。

 属性防御力がほとんどない。

 火の魔法なら最低レベルの攻撃魔法でも突破できそうだ。

 これだけ偏った防具だとあんまり売れないんじゃないかな?

 物理防御力が必要な戦士だってある程度は魔法抵抗力がないと話にならないし。

 魔法使いならなおのこと遠距離魔法対策に魔法抵抗力が必要だろうし。

 この兄貴さんとやらはあんまり強くなかったし、駆け出し用の防具なのかな?


 武器にはがっかりさせられたけど、見たことのない金属が使われた防具にはすごく興味がある。

 現代の最高級装備っていったいどんな服だろうか?


 夢の物理と魔法完全防御とか、飛行機能が標準装備とか、あるいは想像もつかないような新機能とか。

 ちょっと楽しみになってきた。


・・・


 結局朝になるまで誰も通りかからなかった。

 どうして朝になったのか分かったかと言えば園香が出勤してきたからだ。


「え? イエローちゃん!? え!?」

 驚いた様子の彼女は慌てて私を抱き上げる。

 勿論素手で。

「大丈夫? 怪我はない? ……この人たちは? 誰か! 警備員さん!だれか!」

 園香の声を聞いて警備の人間が集まってきたらしい。

 私も仕事をしよっと。


 接触している園香の手から彼女の魂に接続(アクセス)する。

 魂の印(マーキング)から記憶の引継ぎ(ダウンロード)を実行、勿論本人に負担が内容に慎重にね。

 これで多分明日の朝には前世の記憶を思い出すはずだ。


 この後遅れてやってきたキャサリン、この子はいつも遅れてくるけどにも抱きしめられ、更に一晩中閉じ込められていたジェニファーも救出されて彼? 彼女? も抱きしめてくれた。

 潰れるかと思ったよ、正直この騒動の中で一番命の危機だった。


 私はてっきりそのまま普通の一日が始まるものだと思っていたけどそうはいかないらしい。

 前世だったら侵入者だの暗殺者だのなんて日常茶飯事だったからさ、私もびっくりしたんだけど。

 私はいつもと違う部屋に一回り大きい保育器に入れられて厳重な警備下に置かれた、常に黒服の人族が二人以上傍に控えていて、両方が私の傍を離れることはけしてない。

 園香たちとはその日は会うことができなかった、私はずっと部屋に居て警備の人間の暇つぶしの会話位しか情報源がなかったけど。


「研究員たちは白のようだな」

「そのようだな……元々身元の確認はしっかりやっているからな。今回調べているのは務めるようになったあとの交友関係のみだ」

「どうやら当日の警備担当が一枚かんでいたようだが」

「せっかく割のいい仕事だというのに奴も残念なことだ」


 なるほど、知らない人間から見たら園香たちも怪しく見える訳ね、どうもここはレベルの高い研究所みたいだし、それもしょうがないか。

 彼女たちの記憶もそろそろ馴染んできていることだと思うけど、しばらく三人と会うことは出来ないみたいだ。

 次こそ会話まで持っていきたい。

 できれば土日に更新したいですが期待せずにお待ちください。

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