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17/23

私、伝説について聞きました。

 ネット小説大賞から感想をいただきました。

 全ての作品ではないという話から、まさか貰えるとは思っていなかったのですごくうれしいです。

 今日も今日とて本の虫になっている。

 やることが本を読んでもらうことしかないからしょうがない。

 スライムじゃなくて(ポーク)になりそう。

「(のう壁の」

「(は? 壁じゃありませーん。豊満ですー! 前世のあんたも追い越さんばかりの山をもってますー!)」

「(誰が胸部の話をしとるか、それにまだ前世の妾の方が大きいぞ)」

「(前世は前世、今世は今世)」

「(お主が言い出したんじゃろうに……)」

 今日の読書担当はキャサリンだったりする。

 彼女はなんというか真面目に読んではくれないんだけど、環境は最高なんだよね。

 二つの自前のクッションの柔らかいこと柔らかい事。

 油断しているとうとうとしてきてしまう、これが母性の力って奴か。

 

 誤解のないように言っておくけど、園香も人並みにはあるから。

 だから窓の外から鋭い視線を送らないでくださいお願いします。

 うっかり睨まれ(斬られ)そうで怖いから。


 話をクッションに戻そう、じゃないや本に戻そう。

 数日前から糸車印の本は除外してもらうことにした。

 御使い様とやらが漏れなく出てきてうっとおしいんだもん。

 スライムと人間が競争する話では、人間がゴール付近で突かれて休んでいる所を追い抜こうとしたら

「疲れている人間を見捨てていくとは何事です!」

 とか言ってスライムを蒸発させてた。

 おいまて、これはちゃんと努力する存在が勝利するとかそういう話じゃないのか。

 これで人間も努力していたなら許せるんだけど、こいつ言動の八割ぐらいスライムを馬鹿にしていたんだよね。

 それで最後に笑顔で

「これが人間と信仰の力だ!」

 とか言っていたから流石にイラッと来た。

 危うく魔法で焼き尽くす所だったよ、危ない危ない。

 機会があれば出版元に殴りこみ……じゃない……直談判ぶっこわしにいこう。

 

 そんなわけで糸車の印の本を外してもらったことで

 御使い様とやらが出てこなくなった。

 その代わり物語みたいな話は少なくなって、地域の伝承やら伝説なんかを子供向けに分かりやすくした絵本なんかが主になっている。

 今呼んでいるのは古い時代の英雄の話だ。

「(この本はお主が選んだのか?)」

「(いいえ? 適当に印無しを選んできただけよ? なんで?)」

「(この本の主人公なのじゃがな……)」

「街の人々が恐ろしいドラゴンに悩んでいると、そこに一人の女性が現れました。涼やかな銀色の瞳に絹糸のように流れる銀の髪、女性らしい柔らかな体を銀色に輝く鎧で隠し、その両手には2振りの剣が握られていました」

「(……彼女ではないかの?)」

 私は目線を、さっきまで私を見つめていて今は仕事をしている女性に向けた。

 前世との容姿の共通点はその鋭い瞳位だが、鋭い銀の瞳に銀の長い髪に銀色の鎧、そして2振りの剣の女勇者というと一人しか私は思いつかない。

「(どうだろう? 題名は『剣の勇者』だし本文中にも最後のあとがきにも、勇者の名前はないけど?)」

「(でもこのドラゴンの話はあれじゃろ? ほら街の酒場に100年くらい入り浸っていたアイツじゃろ?)」

「(……あー、『物臭ドリー』だっけ? 確かに絵の雰囲気は似てるわね」

「(それに、勇者の持っている剣。絵でだいぶ簡略化されておるが『魔断剣エクゼキャリバー』と『人護剣ファイバーン』じゃろ)」

「 勇者が銀の剣を振るうとドラゴンの炎が切り裂かれ消えてしまいました。そして金色の剣を振るうとドラゴンの翼がいともたやすく断ち切られたのです。ドラゴンは驚きました、自分の炎を消せる様な存在も、近づくことなく自分を傷つける存在にも初めて出会ったのです」

 読みながら平静を保っているけど、キャサリンも内心かなり驚いているみたい。

 胸が小さく震えているからね。

「(あらゆる攻撃を破壊する『人護剣ファイバーン』視界の届く限り万物を破壊する『魔断剣エクゼキャリバー』確かにそれっぽいわね……そういえば気になっていたんだけどさ?)」

「(なんじゃ?)」

「(これ、お互いをぶつけあったらどうなるの?)」

 あー、私も昔気になったことがある。

「(2本とも折れるぞ)」

「(そうなの?)」

「(うむ、試した)」

 そして気になったことは試さずにはいられないのが当時の私。

 無理矢理借りてきて意気揚々とぶつけ合ったらあっさりと折れたよ。

 ……魔法を使って戻せなかったら尻尾の何本かは切り落とされるのを覚悟しないといけなかったね。

「(我らのことはちゃんと伝承として残っているんじゃな)」

「(そうね)」

 しみじみとしている所を悪いんだけど、次の本を早く読んでほしい。

 私の話がいいなーわくわく。

「つぎー!」

「はいはい、次ね」

 ちなみに単語位はもう喋れることになってる。

 来週位にまたお披露目するんだってさ。

「(ほれ早く次じゃ! 妾の話にするんじゃぞ?)」

「(は? 次はあたしの話に決まっているでしょうが? 万能の魔法の使い手で美しい銀色のハイエルフ。エルフは今の世界でも人気があるから本もいっぱいあるはずよ)」

「(ぐぬぬ)」

 残念ながら本の選択権はキャサリンにある。

 次は譲ってやろう、その次はないからね!

「えっと……エルフ……エルフ……っと」

 本棚を漁っているキャサリンの表情が段々と強張っていく。

「(ないんじゃな?)」

「(はぁ? ありますー腐るほどありますー私の胸位ありますー! ちょっとここにはないだけですー)」

 キャサリンが足音を響かせながら部屋から出ていった。

 本棚の中は今まで読んだ本しか入ってない。

 だから倉庫の方にストックしてある本の方を探しに行ったみたい。

 暇だから歌でも歌うか。

「えーるふ、えーるふ、おみみがながいのねー。そーよ、どわーふもなーがいのよー」

 妖精種の特徴ってやつだね。

 音の振動による声だけじゃなくて魔力の振動の声を聞き取るためにそういう形状になっているそうな。

 前世のキャサリンからの受け売りだけどね。

 そんな風に歌っていたらキャサリンが妙な笑顔で帰ってきた。

「(ほらほらみてみて! また剣の勇者の本があったわ)」

「(お主の本は?)」

「今よりはるか昔、人間の国に恐ろしい巨人が現れました」

「(のう、お主の本は?)」

「巨人の体はとても固く、普通の武器は全く歯が立ちません」

「(無かったんじゃな)」

「(たまたまですー! 多分エルフの美貌が絵本で表現できないだけですー! ちなみにあんたの本もなかったから)」

「(え?)」

「(なかったから)」

「(えー)」

 ない訳ないと思うんだけどなぁ……一応平和を創った功労者ですよ?

 なんか気が抜けたから昼寝してやろう、キャサリンベッドで。

 訳合ってのキャサリン回

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