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私、白衣の皆さんに驚かれました。

「信じられません、こんなことが……スライムは低位の魔物のはずでは?」

「かつての文献にも、スライムは水たまりなどに擬態して獲物を狩っていたという記述はありましたが。これは擬態と言うより進化ですな」

「……ふむ」


 ふっふっふ、騒いでる騒いでる。


 あれから数日、とうとう私はお披露目の時を迎えたのだ!

 擬態の精度も9割くらい、もう色以外は殆ど人間の子供と変わらない感じになっている。

 狐耳と尻尾はついているけどね。


「なるほど、白衣を着ているようにも見えますな……しかしあの尻尾と耳は?」

「資料によると、動物から余分な質量を尻尾と耳と言う形に置き換えることを思いついたようですな!」

「それは興味深い、しかし今までのスライムにこのような性質が現れたことはありませんよね?」

「ほら、例の誘拐騒動。あれが原因で急激な進化が促されたのかもしれません。あるいは生まれてからすぐに人間によって育てられたせいか」

「世紀の大発見だけに、再現性がないのが本当に惜しい」

 がやがやと白衣の皆さまが騒がしい。

 本当なら手を振って踊りでも踊ってあげたい所だね。


 まあ今の私はそこまで高度なことは出来ない……という設定なので、相手をチラチラ見ながら普通にウロウロするくらいしかないんだ。


 ここに集まっているのはこの研究所に勤める研究員の皆さまたちだ。

 いつもの園香たち3人以外に、依然見たことのある意地悪そうな所長と取り巻き2人。

 あと副所長ってやつがいたはずなんだけど、どこ行った? いつの間にか見えなくなった。

 あと年齢も性別もバラバラな白衣の皆さんが10数人、意外とたくさんいたんだね。


 園香たち以外を見たことがないのは、彼らが普段は所長と同じ第一研究室に勤めているからだって。

 あっちはあっちで、世紀の一大プロジェクトを進行中だそうで、園香たちは年齢とか、普段の素行とか、そもそも見た目が凄いという理由でプロジェクトから外れているそうだ。


 決して能力的に劣っているからじゃないってキャサリンが強調してた。

 今回の資料をまとめたのはあの子だから、嘘じゃないと思うよ? 

 むかし(前世)から、資料作りとかそういう雑事も得意だったからね。


 綺麗にまとめられた資料には、日程ごとの観察記録に、様々な数値のデータ、私に見せた物、私に食べさせた物、照明を当てた時間などなど。

 様々な情報が余すところなく乗せられている。

 この条件を再現すれば、私のようなスーパースライムが生まれる可能性があるって算段よ。


 まあどのタイミングで、どういう風に変化するかは完全に私の思うがままなんだけど。


「(それでこの状況はいつまで続くのじゃ?)」

「(もう少し辛抱してくださいね? 質問とかが出尽くしたら締めに入るから)」


 かれこれ30分くらい白衣の皆さんはワイワイしているんだけど、私はいい加減飽きたよ。

 人に近い姿に擬態しつつスライムっぽい動きをするってかなり面倒なんだよ。


「その部分は資料をご確認ください。皆さん質問は宜しいですか?」

「一つだけ、いいかね?」

 手を上げたのは意地悪所長だ。

 相変わらず石で出来ているのかってくらい表情筋が硬い。

 表情一つ変えずに一体何を聞くつもりなんだろう?


 スリーサイズとかだったら面白いけど。


「資料はよくできている。有意義ではないという以前の発言は如何ながら撤回せざる負えないみたいだな

「(へん、ざまーみろよ)」

「(油断する出ないぞ?)」

 キャサリンが得意げになり、ジョセフィーヌも満面の笑み? 多分笑みを浮かべている。

 ただ油断は禁物だ、こいつは上げて落とすタイプだと私は勝手に思っているから。


「だが、この資料には一つ欠けている部分がある。魔力測定に関する記述がないようだが?」

「教授も当然ご存じでしょう? スライムに限らず魔物の子供に対しての魔力測定は、その後の成長に著しいゆがみを生む可能性があると。特にスライムなどは測定に使う魔力の影響を受けやすいです」

「君に指摘されるまでもない。だがそれは初めての魔力による変異だという研究結果も出ている。このスライムは実験途中で『イレギュラー』接触をしているだろう?」


 これは誘拐事件のことを言っているんだろうね。


「その際に何らかの魔力を浴びている可能性はないのかね? 彼らの所持品の中には模造聖剣もあったはずだが」

「仮に模造聖剣の波動を受けていたなら、スライムでは助かりません。非殺傷(スタン)モードですらです。更に何らかの理由で聖なる波動を受けていたとして、この進化の説明にはなりませんから」

 模造聖剣? あの聖剣紛いの黒い棒のこと? アレは確かに食らったというか、正確には私の魔力で完全に弾いたから食らってないというか。


 このおじさん何が気になるんだろう?


「では安定を確認次第魔力測定を行いたまえ。プロジェクトは継続、予算も多少増やそう」

「……今度はぜひ喋るところを見たいですな」

「いやいや踊るところがよろしいかと」

 おじさんが踵を返し、取り巻きも負け惜しみなんだかよく分からないことを言ってそれについて行った。


 ほう、つまり歌って踊るところをご所望なのね? 

 魔王の踊りってそれだけで一種の儀式魔法で周囲一帯に影響を及ぼすけどいいんだね?


 何はともあれ私のたくらみは順調に進みだした。

 影に一抹の不安を抱えながら。


 次回からまた情報収集します。

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