私、さらに観察されました。
| 私の観察され日記。
ここ数日は変化に停滞を付けている。
人型への変形は最初に比べれはかなり成功になっているはず。
なんとなく人手? いや人間かな? と言ったところから、これは人間だねと言われるくらいまで。
ただ子供が作ったようなバランスがとれていない感じになっている。
大体三頭身くらいかな?
そういえば今の私の体調だけど直径八十センチくらいの球形だよ。
前回も言ったけれど『完全擬態』の能力を使いこなせば今のまま体長20mの巨人にだって変身できるんだけど、スライムがいきなりそんな風に変身したらおかしいよね?
変身している時点で唯のスライムにしてはオカシイって? わたしきこえなーい。
それでなんで変身を停滞させているのかっていうと、余計な質量を持て余しているっていう表現をしているの。
こんな狭い場所で何の情報もなくって考えると難しいと思うんだ。
そこで変身の停滞しだした私に対してその形がとった驚きの行動とは!
いや私がやれって言ったんだけどね
「黄色ちゃん、ほらほら見てみて」
「これはどうよ?」
「なんでマッチョのおじさんのフィギュアなの?」
私に対して色んなものを見せるという作戦だ。
私に形のお手本を見せることで変化を促そうという作戦になっている。
最初はマネキンとか人形とかだったけど、ここ数日はぬいぐるみなんかも混ざってきた。
私にいろんな形を見せて変化を促そうと努力しているように見えるはずだ。
本人たちも自分たちの家にあるものを持ってきているらしくお金がかかっていないこともこの作戦のいい所だ。
一つ難点を言えば
「次はこの子を見せるわよん」
「ジョセフィーヌ、それで何個目のぬいぐるみなのよ」
「この子は熊のクリスよん。最近作ったばかりなの」
「手作り!? 本当に見た目以外は完ぺきな女性よね」
作戦にかこつけてジョセフィーヌが自作のぬいぐるみを見せまくってくることかな? さらに言えば
「(この子はどう思います?)」
「(いいんじゃないかの? 毛の色と目の色がよく似合っておる)」
「(明日はもっとたくさん持ってきますわん)」
「(ほどほどにの)」
毎回感想を求めてくる。
確かにすごいと思うけど何個も何個も見せられたら褒め言葉が無くなっちゃうよ。
同じような言い方をすると何故か怒るし。
そんな日々が数日が数日続いた。
気ままに過ごすのも楽ではない、下準備がここまで大変になるなんて思いもよらなかった。
さらにいえばまだまだ準備期間だし。
一週間くらいそれが続けられたある日、園香がついに決定的なものを持ってきた。
「(黄色ちゃん、これでいいですか?)」
「(うむ、良い感じじゃ)」
園香が持ってきたのは狐のぬいぐるみだ。
もし持っていない場合はこれだけは買ってきてもらおうと思っていたんだけど運よく園香が持っていたので満を持して持ってきてもらった。
「ほらほら、これが尻尾ですよー」
「そんなもの見せてどうする……アレ? なんかかわってない?」
キャサリンは未だに棒読みだけれど誰も聞いてないからいいか。
園香が持ってきた狐の尻尾、それをじっと観察していたフリをしていた私は久しぶりに体を変化させ始める。
尻尾を作るのだ。
さて今更ながら私がどんな人型を目指そうとしているのか説明しよう。
最終的なイメージは狐耳と尻尾を持った狐獣人のような形になろうと思っている。
人間社会でなぜわざわざ獣人なの? と思う人もいるかもしれないが理由は簡単、私の前世が狐獣人だから。
耳と尻尾にはもふもふで可愛い以上の使い方が沢山あるのだ。
特に今のスライムも体ならばそれをもっと活用できると思う。
あとは何より使い慣れている体というのも大きい。
日常生活位ならばどんな体であろうとも完璧に操る自信があるけれど、戦いとなるとそうはいかないだろうし。
この平和な世界で戦うつもりなんてこれっぽっちもないけれど、戦う力なしでいいと思うほど私も平和を妄信してはいないのだ。
一回襲われているしね。
話を戻そう。
私がひとまず目指そうとしているのは4~5歳児くらいの狐獣人だ。
もっと簡単に言うと前世の幼いころの私である。
これなら一から考えなくてもいいし、いくら最強の魔王とはいっても、太古の人物、その幼いころの顔立ちまで知っている人間は居ないだろうから。
私の変身が8割くらい完成したら私の研究結果をいけ好かない所長たちに発表する手はずになっている。
今は園香たちもその発表資料をゆっくりと作っている所だ。
研究機関なだけあって私のような世紀の発見があれば、予算がどんと増えるらしい。
そしたらもっと人間に近づく変身をできるってもの。
さしあたってほしいのは『マジックビジョン』と呼ばれる物と本。
『マジックビジョン』は遠くの音声や映像を映すことのできる装置らしい。
らしいっていうのはみんなの説明を聞いただけでは要領を得なかったからなんだけど。
音声が出るってことは重要だ。
音が出るってことは話し声を聞くことができるということ。
声を聞けるということは、
「声を聞いていたせいでしゃべれるようになった」
という自然な進化を見せ付けることができる。
最終的には人間と変わらない姿を見せる予定だ。
スライムでありながら人間と同じような姿に慣れる様になれば、実験と評して外の世界に出ることができるかもしれない。
かもしれないというかそういう実験をするように3人には指示する予定だけど。
人間に近い物に変身できるスライムとして堂々と外に出る。
これが私の考えた平和的に外に出る方法だ。
まだ喋れません。
これからドンドン進化している予定です。
進化スピードは当人のさじ加減なんですけどね。




