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私、転生しました。

 明るいお話が書きたくなったので。

 基本魔王様が一人称で気ままにやっていく内容です。

 心理描写では一人称私ですが、長年の魔王様生活の癖でしゃべる時は一人称妾わらわです。


 R-15は一応保険のつもりですが戦うことも多々あります。


 目を開けると知らない天井だった。


 あ、当たり前か転生したんだもんね、思わずテンプレなことをつぶやいてしまった。


 私自身の感覚としては「あー転生した(よくねた)」って感じなんだけど、転生ってこんな感じなんだね。

 管理者を名乗る幼女も出てこなければ、神様を名乗る女神も爺さんも不定形の何かも出てこない。

 当然だ、私の行った転生は奇跡でも偶然でもなくきちんとした理論に基づく魔法なのだ、そんな良く分からない連中が介入してくるはずもない。


 それはさておき天井だ、空でもなければ海でもない。

 そして白くて人工物で出来た天井だ。

 つまり洞窟だとか、ジャングルだとか、自然成分百%の海の孤島にすむ野生生物とかじゃなくて、知性ある生き物の子供として無事生まれたらしい。


 個人的には『魔王の魂』だと判別されて生まれると同時に、或いは生まれる前に存在を察知されて粉微塵にされるとか封印されるとかそんな結末かと思っていたんだけど、そんなことはなかった。


 無事一回目の転生で知識と記憶の引継ぎ(ダウンロード)は終わったらしい。

 そうでなければ転生者として思考できないもんね。


 しかし拍子抜けだ、あれからどれくらいたったのかは分からないけど、数千年じゃ足りないくらい時間は過ぎているはず。

 当時最先端の……最先端どころか私が生み出したピチピチ新鮮なの新作魔法だけど……その転生魔法だとしても、数千年以上進んだ文化からすれば、過去の遺物でカビの生えた化石みたいなもので、察知や対策くらい余裕だと思ったんだけど。


 それとも元魔王だろうが大量殺人鬼だろうが生まれた魂は差別しない主義なのかな? 

 どちらにしてもまずは誕生おめでとう私、第一関門クリアおめでとう私。


 次は嬉恥ずかし種族チェックターイム、まずは泣いてみよう、もしくは鳴いてみよう。


「……」


 おーけー喋れない種族ね、もしくは耳がない種族。次は両腕もしくは前足の確認。


「……(ちら)」


 ……お、おっけおっけ、手がない種族ね。たとえばスラ―――いや結論を出すのは早い。

 ってそうだ、魔法を使えばいいじゃん。幸い体の中を流れる魔力はきちんと感じられるから魔法が使えない種族じゃなさそうだ。


「(我思う、我は望む、汝の姿、己に向けて、識別(サーチ))」


 我ながら完璧に魔法が動作したわね。

 本来なら識別(サーチ)の呪文は、声に出して対象物の名前を言い、対象を見ながら発動する呪文だ。

 「我思う」で言語化破棄、「我は望む」は魔法の定型文、それに「汝の姿」で被対象物名称破棄、「己に向けて」で他者対象呪文の自己対象化を行った。勿論すべて最短詠唱化、転生前でもこれだけできる奴は……まあそこそこいたかな。


 さて現実逃避はやめよう、魔法はきっちりと役目を果たした。つまり自分の今の種族やら能力がはっきりわかったんだよね。


『名称:未定 種族名イエロースライム 状態:困惑 存在強度、成長中につき計測困難』

 そりゃ困惑するよね、まさかのスライム、しかも厄介なイエロースライムとは。

 そんなわけで現実逃避のために、私は前世の記憶、正確には死んだ日のことを思い出していた。


▽▽▽



 空を色とりどりの、そして様々な形の、そして様々な力を使った花火が絶え間なく照らしている。

 お、あっちは魔法の炎の火花(ファイヤーワークス)であっちは錬金術の花火玉の新作……あっちは妖精花火なんて変わり種か、やってる本人はすごい痛いんだよね自爆技だし。

 絶好の花火スポット……というより私に見せるためにやっているんだろうなぁ、だって魔王城のバルコニーから一番よく見えるっていうことはそういうことだよね?

 賑やかなのはいいけど、これはみんな寝られないんじゃなかろうか? 主にお子様。

 眼下に広がるのは広大な街並みだ、道路は完ぺきに整備され、地区ごとに区分けされた整った黄金色の街並みが並んでいる。

 金? 馬鹿言っちゃいけない。

 外壁は全てオリハルコンで出来ている。

 黄金都市『フォクドラド』魔王の国の王都であり、私の街だ。


 眼下の街並みも人が……様々な種族が溢れている。

 酒場のオープンスペースで酒を飲み交わしながら笑い合う長耳族(エルフ)土耳族(ドワーフ)

 種族のサイズ別に分けられた道路でお互いに楽しそうに会話しながら歩く妖精族と巨人族

 ベンチに座って肩を寄せ合ってうっとりとしている吸血鬼と人族が居るかと思えば、リザードマンがやっている屋台で焼き魚を食べる魚人族なんていうのもいる。


 どの光景も少し前……といっても数百年単位だけど、そのころには考えられなかった光景なんだよね。

 エルフとドワーフは絶対に相いれない存在といってお互いに組み合ってた、エルフはドワーフと会話したら耳を切り落とすなんて法律があったくらいだし、ドワーフはエルフを見た日には酒を飲まない(ドワーフが1日でお酒を飲む確率は230%つまり朝に1杯夜に1杯昼間に飲む確率が30%ってくらい飲む)なんて法律もあった。

 お互いがアイデンティティを賭けるぐらい憎みあってて戦争も絶えなかった。

 巨人族は昔から妖精を食べていた、なんか滋養強壮になるらしい。

 それに対して妖精は集団で戦ってお互い天敵みたいになっていた。

 吸血鬼と人族は支配するかされるかの関係、吸血鬼が血の魔術で人を支配することもあれば、人が聖魔術や闇魔術で使役することもある。

 当然お互い忌み嫌っていた。

 リザードマンと魚人は長年水辺と魚を取り合って争っていた、生活環境が近くてどちらかが滅ぶまでそれは間違いなく続くはずだった。


 どうして終わったのかって? 私が争いを潰したからだ。

 エルフとドワーフの王国を支配して、まだ偏見の薄い子供たちを共同生活させた。

 巨人族に妖精よりもおいしい食文化を伝えて、妖精には巨人たちと会話する楽しさを教えた。

 吸血鬼と人間にはきちんとした契約と法を作った。召喚術や血の魔術は双方の同意の元行われるようになり、破れば厳罰が下る。

 リザードマンと魚人はきちんと棲み分けさせた。ついでに魚の養殖を教えて交易もさせた。


 自然のままかといえばそうではない、私がやったのは眼下の街並みと同じ、元の存在をただ壊して都合よく並べただけだ。

 それが私、『平和を創った者』『争いを滅ぼした者』『節理の破壊者』数多の異名を持つ私の罪であり功績なのだ。

 やりたい様にやっただけともいう。


「こちらに居やがりましたか、魔王様」

「ソニアか……相変わらず珍妙な敬語じゃな」

「慣れていやがりませんので……普通にしゃべってもいいか?」

「許可しようぞ」

 私を呼びに来たのは鋼色の髪を持つ人族の少女だ。

 私の部下の中では最も新入りで最も若い、私を探しに来たのも先輩たちに押し付けられたからだろう。

 この言い方だと凄く下っ端に聞こえるけど、これでも近衛騎士団の団員でその辺の貴族よりも立場は上だ。

 普通は王が権力や戦力を集中させると文句が出るんだろうけど、この国では出ない。

 

 だって私が最強の魔王だから。

 あと近衛騎士団が並外れて強いから。


 権力と強さの象徴となれば国中の力自慢が我先にと押しかけてきそうなものだけど、生憎ソニア以降五年間、新人の採用はない。

 近衛騎士団なるために必要なことはたった一つ、私と戦ったことがあるかどうかだ。


 今となっちゃどんなに頭の弱い奴でも私と戦おうなんて奴はいない。


 ソニアは一番最後まで抵抗していた人族の国が生み出した最強の勇者、かの国が正攻法邪法自分たちの持ちゆるありとあらゆる手段を用いて生み出した人工勇者の傑作だ。

 本当に強かったね、並の魔王なら片手で捻れるくらい強かった。

 後口が悪かったね、二言目には死ねとか消えろとか。


 人族は評価の難しい種族だ、他の種族と比べて際立って優秀な所はない、際立って劣った所もない。

 特徴は集まると強い事、そして存在強度が種族の中で最も差が出ること。


 あ、存在強度っていうのは、つまり生き物としての格を現した数値、私が作ったんだけどね。

 ミニスライムっていう種族を1として計算されている、小数点以下もあるんだよ?

 ミニスライムがどれくらい強いかというと、人族の五歳くらいの少年と喧嘩して負けるくらいの強さだ。

 詳しい計算方法は省くけど、人族の一般的な青年が大体100くらい。

 これはそれほど高くない数値なんだけど、問題は例外がいっぱい出ること。

 鍛えれば普通に1万くらいまで伸びるし、才能が有ればもっと伸びる。

 一般的に魔王と呼ばれる者は弱い物でも存在強度1億くらいだけど、10年に一度くらいはそれを超える、所謂勇者が出てくる。

 単一種族でここまで強さに差が出る種族は他にないから、これが強みと言えば強みかな?

 ちなみに私自身の存在強度は計測不能……いや自慢とかじゃなくて1兆以上の存在強度は計測機器の問題から量れないんだよ。

 ボン!って爆発しちゃうから。


 残念ながらそれを超える強度の計測機器は未だ開発されていない、未来に期待だね。


「魔王様ついにぼけたか?」

「いや、ちょっと考え事をな? ソニア、近衛兵を全員集めよ。城の主だった責任者も全員じゃ」

「また唐突に……城に居ないものはどうするんだ?」

「転移で引っ張ってくるがよかろう? この際寝ぼけていようが酔っていようが構わん」

「仰せのままにっと」

 出ていくソニアを眼で見送ると誰かと目が合った。

 ピンと尖った耳に絹糸のようなつややかな金の髪、白を基調とした豪華なローブにはいくつかの宝石がちりばめられその後ろからはフサフサとした触り心地のよさそうな木の葉型の尻尾が9本ゆらゆらと揺らめいている。

 白雪のような白い肌に、金色に輝く瞳、まるで芸術品の様に整ったスタイル。

 こんな絶世の美女この城に居たかな?


 軽く首をかしげると、目線の先の美女も首をかしげる。

 よくよく見たらなんてことはない、唯の姿見でした。

 つまり我ながら身震いするほどの自画自賛だったわけだね。


・・・


 しばらくして王の間に100人ほどの部下たちが集まった。

 内近衛は80人ほどで、後は侍従長と女中長、料理長、司書長、大臣と宰相、魔法の研究部門の長と実戦部門の長、兵士長などなど。

 全員が一騎当千の戦士か魔法使いであり、かつその分野の優秀な人員でもある。

 そうでもないと広大な魔王の領域を支配することなんてできない。


「みなのもの、急な呼び出しにも関わらずよく集まってくれた」

「よくいう、半ば無理やり連れだしておいて。嫁に怒られるのは俺なんだぞ?」

 近衛の一人が冗談めかした反論をして、他の者たちが笑う。

 この程度なら無礼でも何でもない、強さ以外は殆ど選考基準じゃないから粗暴な奴もたくさんいるし。

「ではあとでぬしの嫁相手に詫びの品を送っておこう、オリハルコン1トンくらいでよいか?」

「やめてくだせえ、そんなに置くところはないし、オリハルコンは見飽きてまさ!」

 確かにこの魔王の城下町は建物全部オリハルコン製だからね。

「ではうまい酒でも送っておくことにしようぞ……さて、この良き日に集まってもらったのにはわけがある」


 私が真面目な顔をすると部下たちも笑いを止めて姿勢を整える。

 いくら緩い規律だといっても私が喋るとなると緊張するよね。


 以前お喋りを止めなかったら半殺しにしていたからそのせいかもしれないけど。


「この国ができてもう1000年になる。そしてこの大陸が我が国に統一されて5年じゃ。初めからついてきた者、途中から加わった者、かつて宿敵だった者……皆よくついてきてくれた」

 懐かしそうに昔を思い出す者、苦笑いをする者、少し涙ぐむ者、反応は様々だがみんなが後悔していないことは分かる。


 さて本題を告げてしまおう


「というわけで、妾崩御するんで後よろしくの」

 沈黙が王の間を包んだ……あれ? 失敗したかな?

 

「「「はあ~~~?!!?!?」」」


 △△△


 回想終わり

 そんなわけで最強の魔王が転生した先がまさかスライムだとは思わなかった。

 いやスライムにもメリットがない訳じゃないよ?

 体が馴染むのは早いし、能力も優秀だ。

 仮に人族の子だったら記憶の引継ぎ(ダウンロード)に五年はかかったはずだし。


 今の私は周囲に比較する物がないから正確なサイズは分からないけど、多分生後一ヵ月ってところかな?


 まあ一番の問題は……


「……」


 知性生物とのコミュニケーションが難しそうって所かな? 

 私って食用じゃないといいんだけども。



 こちらの作品は、これくらいの分量で不定期更新の予定です。

 一先ず三日までは毎日更新、それ以降は不定期となります。

 ただ不定期と言いつつ一週間以内の更新を目標にします。

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 場合によっては更新速度も上がります。

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