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桜色の忘却①―郷愁の足音―  作者: 星利
漆黒の廃夢
9/25

悪夢へのいざない


「…ふむふむ。」


紙とペンを前に、考える人のポーズをしているちぇるしー。



「まず気になるのは、この"寝血襖"だな。」


「ねけつふすま…?」


彼は、紙に平仮名で"ねけつふすま"と書いた。


そして、「…そういうことか!」と言いながら、ポンと手を叩いて頷いた。



「春灯さん、シーザー式暗号って知ってる?」


「シーザーサラダですか?」


やれやれと首を振りながら、ちぇるしーは説明してくれた。



「あのなー…。古代ローマの軍事的指導者、ガイウス・ユリウス・カエサルって世界史で習っただろ?


そいつは、英語読みでシーザーっつうんだ。


そいつが使用したとされる暗号。」



「あー、カエサルは聞いたことあります!カエルとサルみたいなんで。」


「…バカにしないで、それぐらいちゃんと覚えとけ!」


「…はい。」


思わず叱咤されてしまい、しゅんとする私。



「でさ、その暗号では、アルファベットや平仮名などの文字を、いくつか同じ数ずつずらすんだ。」


「へぇ…、いくつずらすんですか?」


「モノによるよ。多分これは、"ラッキー7"ってあるから、試しに前に7つずつずらしてみよう。」


ちぇるしーは"あ"から"ん"の文字を書き、1文字ずつ7つ前にずらしてみせた。



すると、"ちいさなかね"という文字が浮かび上がった!


「小さな金?


つまり金欠ってことですね!私と一緒です!」


興奮する私を無視して、ちぇるしーは楽しそうだ。


「おっけ!分かった。」



「それって、ポケベルのことよね?」


いつの間にか、薫さんも輪に加わっている。



「ぽけべる…?」


ほへぇとしている私。



「ポケベルとは、日本で1986年頃から急速に普及した、携帯電話の前身みたいなもんだよ。


1996年にポケベルブームはピークを迎えた。


ちょうど俺らが生まれた頃だな。」


「へぇー、データ発信できる初期の機械といったところですか…。」


私は、少し賢そうな風をまとってそう言った。


「でも、何で"小さなかね"がポケベルなんですか?」



「"ポケット"には"小さな"という意味があり、また、"かね"は"ベル"と同義…すなわちポケットベルだからです。」


向こうの席で廃墟についての論文を読んでいる星野さんが、冷静な声で答えた。



「そう。だから、この数字をポケベルの暗号表に合わせてみよう。」


ちぇるしーは、あいうえお順の平仮名、アルファベット、数字、記号を10×10のマスに書いて表を作り、上から下にかけて1~0、左から右にかけて1~0とした。



「じゃ、春灯さん。この数字に当てはまる文字を探してほしい。」


そう言われたので、基本的に2つの数字を組にして確かめると…。



「キタぁぁぁ!!」


私はぴょんと飛び上がった。どうやら、ホームページの暗号についての謎が解けたようだ。


それを大声で読み上げる。



「裏野ドリームランドへ ようこそ


65年たった時 恐怖の扉は 再び開かれる


年月は 時間の流れ


一同お待ちしております」



「…。」


「……。」


静まり返る一同。


…一体、何が始まるというのか?



「ちえた、あたし、この"年月は時間の流れ"っていう言葉が、どうも腑に落ちないのよ。」


怪訝そうな顔をしている薫さん。



「年月は、…時間…。」


そう呟いたちぇるしーは、顔を真っ青にして目を見開いた。



「裏野ドリームランドが開園した年は1952年4月8日。そんで、今日は2017年4月8日…。」


ごくりと唾を飲み込んだ私達。



「開園してから65年経った今日、19時52分に、何かが起こる――!」


その言葉は、鉛のように私達の心にのしかかり、地震のような衝撃をもたらし、暗雲を運んできたようだった。

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