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桜色の忘却①―郷愁の足音―  作者: 星利
嗤う幻想遊園地
20/25

6.Dream castle


※初アクションシーンにチャレンジしてみました。ボクシングは未知の世界なので、間違いがあれば教えていただきたく思います。


…。


……。



「?!」


ぱち、と目を覚ました私は、キョロキョロと辺りを見渡す。


どうやら、縄で縛って強制連行される途中で気を失ってしまったらしい。



「ココハドコ…?


ワタシハダレ…?」


暗くて狭い、アーチ状の檻のようなものの中に入れられている…?


錆びた黒い鉄の床、壁、そして天井。私は、相変わらず手足を縄で縛られている。



「くッ、逃げられたぞ!」


そう言いながらドタバタと目の前を走っていくのは、今まで関わった着ぐるみの群れとピエロだった。



(ナニ、アレ…?


逃げられたって、誰に?)


ぼんやりとしていると、館内放送が鳴り響いた。



「おやァ?


どうやら上手く脱出したようだね。――智瑠 孝、園田 玲夜、橘 薫、星野 風子…。


でも、ざ~んねん♪


この少女を、今から…殺ォス!」



「…え?!」



すると、バンと牢屋の扉が開き、そこに立っていたのは…。


「ピエロ!」


「クックックッ、…君は、ボクのモノ。」



(?!


これは、もしや――!)


そんなことを考える暇もなく、ピエロが枝切りバサミとメスを持って襲いかかってきた!


白く光る、それらの鋭利な刃物には血がこびりついている。



ピエロはそれをこちらへシュッシュッと振りかざし――!



(死ぬ――!)




…。




……。



ゆっくりと目を開ける。どうやら無事のようだ。



そこにいたのは…!


「ちぇるしー!…と、玲夜?!」


どうやら、2人がピエロを蹴飛ばしてくれたらしい。



「そやでぇ!玲夜様登場、ってな!」


「ここは、俺らに任せろ!


…ちょいと、目つぶっときな。」



「はぇ?!」



そう言われたものの、私は半目を開けて2人を見守っていた。目の前に広がっている光景を、半信半疑で見つめている。



起き上がり、ちぇるしーに向かって枝切りバサミを振りかざすピエロ。



左にジャブ、ジャブ、右にストレート!


華麗なちぇるしーのパンチ。


しかし、ピエロも軽い身のこなしでウィービングして避ける。



フック、ジャブ、ジャブ、ストレート…。


(ちぇるしー先輩…カッコいいです!)


現役空手部の玲夜も負けじと、空手の技を突いて果敢に攻めている。


蹴りを入れる玲夜。だが、ピエロはそれをマトリックスの要領で避けた。



2対1。さすがに不利だと思ったのか、ピエロの背後からわらわらと4体の着ぐるみが出てきた…!



(あれは!)


まさかグルだったとは。見覚えのあるウサギ、イヌ、パンダ、カエルがそれぞれの手にメスを持っている。



4体はそれぞれ、ちぇるしーと玲夜にメスを振り回しながら近付いていく。



ちぇるしーがパンチを入れる。弧を描くようなフック、フック、真っ直ぐ左にジャブ、ジャブ、真っ直ぐ右にストレート、左で弧を描くようにジャブ、突き上げてアッパー。


玲夜が蹴る、蹴る、突く、突く、投げる、投げ飛ばす!



そしてちぇるしーの必殺ガゼルパンチ!



…。



……。



決まった!KOだ。


着ぐるみ4体は、その場に倒れて動かなくなった。


しかし、まだ1人残っている。ピエロだ。



ピエロは、ニヤリと嗤いながら、牢の向こう側の影に隠れていた薫さんの方を見た。



「コイツが、…どうなってもいいのか!えェ?」


そして、走りながら大きな枝切りバサミを開いて思いっきり振りかざす!



「い、イヤァァー!」


…ダメだ、見てられない…!今から走ったって、ここから間に合いそうにない。



すると、玲夜がチーターのような目にもとまらぬ速さで駆けていく。


そして、横から思いっきり跳び蹴った!



「グゥっ!」


ピエロの手を離れる枝切りバサミ。


床に倒れ込むピエロ。


…まるでスローモーションのよう。



「…!」


両手で顔を押さえ、泣きながら座り込む薫さん。


「は、ハァ…ハァ…怖かった…。」



「橘先輩、もう大丈夫です。」


そう言って、玲夜が薫さんに手を伸ばした。


すると、顔を上げた薫さんの顔が何だか熱を帯びているような気がした。目はうっとりして、玲夜だけを見つめている。


「…ありがと、園田…いや、玲夜くん♡」




その時、またもや館内放送が鳴り響いた。



「いやぁ、お手柄お手柄!


でもねぇ、君達にはまだわたしがいるからねぇ、ヒッヒッヒ!」


「また出た、ヘリウムガス野郎!」



「さぁて、ここで一旦休憩♪


君達の推理を聞くとしよう。


わたしは、だぁれ?」



「…へ?!」


何も分からない私をよそに、ちぇるしーが口を開いた。



「この事件の犯人は、…裏野ドリームランドの真支配人は、もう分かってるんだ。


ただ、答え合わせするには少し話し合わせてほしい。」



「――そう…。


いいよぉ♪でも、この30分の砂時計の砂が全て落ちるまでにね♪


間に合わなければ…I must kill you…。


クックックッ、アッハッハッハ――!」



裏野ドリームランドのどこか地下に、不気味な嘲笑が鳴り渡っていた。

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