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桜色の忘却①―郷愁の足音―  作者: 星利
嗤う幻想遊園地
17/25

3.Merry-go-round


「つ、次はどれに乗るんですか。」


私は半泣きでちぇるしーに訊く。



「1番近いから、メリーゴーラウンドだな。」


「そうですか。


…そういえば、夏楼さんまだ帰ってきませんね…。」



噂をすれば、夏楼さんが帰ってきた。


「夏楼さん…!


玲夜、…玲夜の容態は…?」


「あぁ、あの少年かな?


今は、元気にしているよ。」


「良かった…!」


安堵のため息をつく私。



「金髪の女性の方も元気だから、安心して。」



「それって、薫さんのことですか。」


星野さんが少し不安そうな顔をして訊ねた。


「そういえば、…名前はそんな感じだったかな。


彼女も救護室に連れて来られたからね。」


「救護室って、どこにあるんだ?」


ちぇるしーが、身を乗り出す。


「あぁ、それは一般には公開していないんだ。


我々警察が緊急に置いたものだから。」


(へぇ…。)



◇◆◇◆


メリーゴーラウンド前に着いた。


すると、今度は白黒パンダの着ぐるみが現れた。



「やぁ、メリーゴーラウンドに乗るのかい?」


両手を広げ、おどけているパンダ。



しかし、私は気付いてしまった。…そのパンダの手に、赤黒い血痕がベッタリと付いていることに。


「…!」


パンダは私の視線に気付くと、私の耳元で低い声をして囁いた。



「誰にも、言うなよ。


…もし話したなら、…殺ス。」



(…ヒッ!)


鳥肌が立った。


こんなにも怖い着ぐるみを、私は知らない。



ちぇるしーがメリーゴーラウンドの写真を撮り終わると、私達は1人ずつ、錆びれたペガサスにまたがる。



ギィ、ギィという金属が擦れる古めかしい音を立てながら、ペガサスは上下運動を繰り返す。メリーゴーラウンドがゆっくりゆっくりと回っていく。


不協和音のクラッシック音楽が高らかに、かつ不気味に聞こえる。



「あぁ、…わたしは1歳の時に父を亡くしてるんだ。


家族でこんな遊園地に来てみたかったな…。」



遠い目をして夏楼さんが言った。



「失礼ですが、夏楼さんって何歳なのですか?」


私は素朴な疑問を投げかける。


「わたしは今、66歳だよ。」


「もっと若く見えます…!」


「ありがとうありがとう。」


夏楼さんは、まんざらでもなさそうな顔をして笑っている。



「そういえば7不思議によると、このメリーゴーラウンドは、独りでに廻るそうです。」


星野さんが口を開く。


「あ、サイトにそんなの載ってたなぁ。


…でも、何で私達だけが今日招待されたのでしょうね?」



私は、後ろのペガサスに乗っているちぇるしーに疑問を投げかける。



「……。」



「ん?ちぇるしー、スルーしないで下さ…え?!」


振り返ってちぇるしーを凝視した私は、異変に気が付く。



「星野さん、夏楼さん、降りましょう今すぐ!」


ドタドタとメリーゴーラウンドから降り、ちぇるしーの元へと走る。


ちぇるしーを揺り動かすと、彼は骨が抜けたようにふにゃふにゃしている!



「…ちぇるしー!!」


泣き叫ぶ私。


星野さんが、か細い腕で彼の体をこちらに向けた。



「…!」


顔が、ない。どうやらそれはちぇるしーではなく、ちぇるしーと瓜二つの人形であることが分かった。




「ど、どうしよう…!


ちぇるしーまでいなくなっちゃった…!」


ガタガタと震える私。もう、涙も出ない。



「大丈夫だよ。


わたしがついてる。」


「そうです。私もいます。」


「夏楼さん、星野さん…!」


星野さんって、案外いい人なのかもしれないと、その時初めて思った。今は、この2人だけが頼りだ。



「でも、この遊園地は本当に怖いね。


お祓いしてもらわないと。


――例えば、陰陽師さんにね…。」


そう言いながら、夏楼さんはニコッと笑った。

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