表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

幽霊なサンタさん

作者: Teacup(紅茶)

「やあ、君すごくさむそうだね。どうしてそんな姿なんだい。」


話しかけた先には貧相な服を着てどこか遠い目をした少女がいました。少女は声が聞こえたほうを見上げました。


「お金がないからよ。あんたは誰?」


こんな雪の降る日に、女の子一人が薄着でいます。ほっとけるはずがありません。


「僕は名前はないんだけど。そうだね、タクロウとでも呼んでおくれよ。それより、なんでこんな真夜中に一人でいるんだい?」


こんな真夜中に、女の子が一人で座り込んでいます。ほっとけるはずがありません。


「珍しい名前ね。おうちがないからよ。あんたはなにしてるの?」


どうやらこの少女は捨て子かなにかなようです。でも、今どきのこの町では珍しくはないのです。


「僕?僕も特に何をしてるわけでもないんだけど。強いて言えば人助け?」


貧乏でない家庭の男の子が、女の子が、惹かれた異性のホームレスの子に話しかけるのも、実は珍しくないのです。でも少女はそんなタクロウに心底興味なさそうに返事をしています。


「へえー。そうなんだ。で?あんたは私をたすけてくれるの?」


でもおかしいことが一つありました。少女の見ている方向です。


「そうだね、助けてあげないこともないよ。君の行動次第だね。」


少女は虚空を見つめ、何かに話しかけています。幻覚だろうでしょうか。いや、違います。


「僕には体がないから、一緒に人助けをしてほしいんだ。そうしたら君を幸せにしてあげよう。」


少女は一人の幽霊と話していたのです。しかし今どき、幽霊が出るのは、もちろん珍しくない、なんてことはありませんでした。


「……」


少女は黙ってしまいました。


「明日のお昼。君に会いに来るから。またね。」


タクロウと名乗った幽霊はそれだけ言って、海に、川に落ちた雪のように消えてしまいました。


「どうしようかな……」


少女は考えました。この男の子に本当についていってよいのだろうか。本当に幸せにしてくれるのか、と。


考えているうちに、雪が強くなったので、少女は、屋根のあるところまで行って寝ようとしましたが少年のことが気になって眠れませんでした。


次の日、少女が目を覚ましたのは早朝でした。


いつものように、ひもじいながらも朝ご飯を食べて、じっとしていました。


そんな少女に目をかける人なんていません。ご飯や服をくれる人も、ましてや仕事をくれる人も。


正午をまわる頃でしょうか。少女はお腹がすいたので動き始めました。その時、少女に声をかける男の子が現れました。


「こんにちは。どう?答えは決まった?」


タクロウです。タクロウは何の前触れもなく、雪と同じように現れました。少女は少し悩みましたが、決めました。


「わかった。手伝うわ。まずは何をすればいいの?」


「手伝ってくれるんだね!じゃあまずは、北の果物屋のおばさんのお手伝いをしに行こう!」


タクロウは食い入るように言いました。そういって駈け出しました。


「ちょ、ちょっとまってよ!」


そうこうしてるうちに、果物屋につきました。


「あぁ、忙しい!忙しい!もう、この時期は忙しいったらありゃしないよ。誰か手伝ってくれないかねぇ」


クリスマスも迫るこの時期にはパーティーに、ケーキのためにと果物をほしがる人がたくさんいてどこの果物屋も大盛況で、この町では珍しくない光景です。


「ほら、行っておいで。」


タクロウは少女に声をかけました。


「で、でもどういったらいいのかわからないわ。」


少女は困った顔をしてタクロウを見ました。


「大丈夫。お手伝いできることないですか?って言ってみな。よろこんでやらせてくれるよ。」


「わかったわ。頑張ってみる。」


少女は服の裾をきゅっと握りしめて、おばさんに話しかけました。


「あ、あの!お手伝いできること、ないですか?」


ひと段落ついたおばさんは汗をぬぐいながら少女に笑顔で話しかけました。


「ん?手伝ってくれるのかい。嬉しいんだけどその服じゃあねぇ。」


少女は、ほとんど破れていて汚れています。


「そ、そうですか……。お力になれなくてすみません。」


少女がシュンとしてそういって立ち去ろうとしたときに、おばさんが思いついたようにこういいました。


「あ!そうだ。娘の昔の服があんたに似合いそうだよ。ちょっとまってな。」


おばさんは店の奥に入っていったと思えばすぐ帰ってきて、小洒落た服とちいさなエプロンを持ってきてくれました。


「それを着て手伝っておくれ。夕方までお願いするね?」


「わかりました!ありがとうございます!」


少女は着替えて、おばさんの手伝いをしました。


果物をお客さんに渡したり、お勘定をしたり、店の奥から果物を補充したり、お話をしたり。


少女は忙しくても、それを楽しく感じていました。


おばさんに、少し休みなよ、と言われても少女は働き続けました。


夕方になってお客さんが落ち着いた頃、お店のお片付けをしてお仕事は終わりです。


「ふぅ、これでおわりね。」


少女は袖で汗をぬぐいました。そこにおばさんがねぎらいの言葉をかけてくれるのです。


「お疲れ様。でもごめんね、こんなに売り上げがよくても実はお給料払えるだけのお金は余っていないんだ。」


申し訳ない、といっておばさんは苦笑い。


「そんな、こちらこそ突然手伝わせてくれなんて。困っていたのを見てお手伝いしたかっただけなんです。」


少女は地面にぶつける勢いであたまを下げました。


「あ、そうだ。あの身なりだったなら、あんた家も金もないんだろう。お給料の代わりにその服をもっていっていいよ。この時期にあんな布きれ一枚じゃ寒いだろう。」


おばさんのその言葉を聞いて少女はたいそう嬉しそうに、お礼を言いました。


「本当ですか!ありがとうございます。また忙しくしてるのをみたらお手伝いに来ますね!」


「ふふふ、じゃあまたよろしくね。あんたも早く戻りな。この辺りは夜危ないよ。」


少女はおばさんに大きく手を振りながら別れを告げました。


走って角を曲がった先には雪のように静かに待っていたのはタクロウで、少女をみてきれいなサムズアップをみせてくれました。


「どうだい、お手伝いは。楽しいだろう?」


タクロウはにこにこしてる少女に向かってそう話しかけました。


少女は大きく、うん!とうなずきました。


「じゃあお手伝いをしてくれたお礼をしようか。なにかほしいものはあるかい?」


「ううん、今日はこのお洋服をもったからいらない。一つのお仕事でふたりからもらうなんて悪いもの。」


少女はトムの誘いを断りました。しかし、トムは引けないようで、


「うーん、そういうわけにはいかないんだけれど。じゃあしかたない。今日は雨風が防げるところを教えてあげよう。」


タクロウは少女にそういってもう使われていない小さな小屋に連れてきました。


「今日はここで、寝てね。でも明日のお昼には取り壊されちゃうから朝には絶対に退くんだよ。」


タクロウはそういってまた昨晩と同じように消えました。


そして次の日の朝、少女はタクロウに言われた通りに出ていきました。そうするともう取り壊しの準備が始まっていて、見つからないように離れていきました。


もうすこし早くあそこを知っていたらよかったのに、と思いながらまた朝ごはんの調達をしていると、タクロウに出会いました。


今日は、お肉屋さんが忙しいということで、お肉屋さんのおじいさんのお手伝いをすることになりました。


また、お昼から夕方までお手伝いをして、さよならしようと思ったところ、おじいさんはお礼に晩御飯と寝床を用意してくれることになったので、少女は喜んで、お世話になることになりました。


晩御飯は、今日スープとパンと余ったお肉でステーキをごちそうしてくれましたが、少女はきちんとしたごはんが久しぶりで、よろこんで、全部いただきました。


おじいさんは孫の小さいころを見ているようだ、と言って喜んでくれて、少女はおじいさんが寝るまで一緒にお話ししていました。


夜も更けておじいさんも眠ったころ、窓から雪と一緒に、タクロウが現れました。


「今日もなにかかなえてあげるよ。なにがいいんだい?」


「今日もこんなによくしてもらったし、小屋も借りなくていいわ。ごめんなさいね。」


「うーん、やっぱりそれじゃ困るんだよ。お手伝いしてもらったからにはお返ししないと。」


困り顔のタクロウを見ていられずに、少女は、


「そうねぇ。じゃあ一緒に寝てくれる?一人で大きな部屋を貸してもらってさみしいのよ。」


「そんなのお安い御用さ。」


タクロウはベッドに入りました。しかし、幽霊なので入ったかどうかはわかりません。


「ありがとう。これで落ち着いて寝れそうよ。」


そして、しばらくして少女は深い眠りにつきました。この日を境に少女は寝るときにタクロウに隣で寝てほしいとお願いすることにしたのです。


次の朝、おじいさんに朝ご飯を用意してもらって、おじいさんにお礼を言って出ていきました。


おじいさんは、また孫みたいな子と一緒に一晩を暮せて楽しかったよ、と言ってくれました。


少女はタクロウに連れられてその日も困っている人のお手伝いをしました。次の日も、その次も日もまた次の日も。お肉屋のおじいさんも、果物屋のおばさんのところにもまた行きました。


町の人は、少女に優しくしてくれ、きちんとお礼をしてくれました。晩御飯をご馳走してくれる人、お部屋を貸してくれる人、お給料をくれる人、宿に案内してくれる人。


そしてクリスマスイブの日、お手伝いが終わった後、タクロウがこういいました。


「残念だけど、明日が最後なんだ。」


明日までが入れるのが最後だといいました。


「どうして?私タクロウともう少しいたいわ。それにタクロウがいなければ私、これからどうしたらいいか。」


実は少女はタクロウに少し恋をしていたのです。


「残念だけど、僕はクリスマスまでしかいられない運命なんだ。これは幽霊になった時にきまったことなんだ。」


少女はその日のお願いに、こういいました。


「あなたと一緒に居たい」と


しかし、その願いはタクロウにはかなえられませんでした。心苦しくとも運命なのです。


少女はその日の夜は、涙を流しながら寝ました。しかし、少女は泣きすぎて朝日が出るまで寝ることはできなかったのです。


次の日。タクロウとの別れの日です。今日は、はじめにお手伝いをした果物屋さんのお手伝いでした。


クリスマス当日ということで、やはり忙しくなったのです。


少女は、いつもと変わらずお手伝いをしました。しかし、おばさんの目にはやはり少し悲しそうに見えていたのです。


「どうしたんだい、浮かない顔して。あんたらしくないよ。悩み事があるなら相談してみな。」


「実は、お友達が遠いところに行っちゃって会えなくなるの。」


「それなら、きちんと見送ってあげることだね。んで、伝えたいことはきちんと伝えなよ!」


おばさんに、この後お仕事をしながらいろんなことを相談しました。


どんな顔をして会えばいいか、どんなことを言えばいいか。気持ちはどうやって伝えるか。とかそんなことをたくさん。その瞳と言葉はどこからどうみても恋をしてる一人の女の子でした。


相談を受けてもらってからというもの、少女の働きっぷりは見事だったとおばさんはいいます。


そして、お手伝いが終わって、少女はおばさんへのお礼もそこそこに、すぐにタクロウのところへ行きました。


「どうしたんだい、そんなに慌てて。」


いつもの角を曲がろうとしたとき、すでにタクロウは待っていたのです。


「さて、じゃあ最後のお願いを聞こうか。家かい?お金かい?それとも家族?」


どれも少女にとって素敵なものです。ずっとほしかったものです。


しかし少女はそのどれをも選ばす、こういいました。


「最後にあなたの姿が見てみたい。そして抱きしめたいの。」


タクロウはたいそう驚きました。少女には、タクロウの声は聞こえていても、姿はみえていなかったのです。最初に出会った時も、一緒に寝た夜も、そして今も。


けれども、タクロウはそんな風も見せず、


「そんなちっぽけなお願いでいいのかい?」


と聞き返しました。少女は静かにうん、とうなずきました。


「わかった。最後だし、少し頑張ってみるよ。なぁに、おっきなお金や、家、家族を連れてくることに比べたらこんな楽なことはないよ。」


そういった刹那、あたりにつよい吹雪が数秒吹きました。吹雪がおさまった先には、なんとスーツを着た若い男性が立っていたのです。


「初めまして、僕がタクロウだよ。この半月間僕を手伝ってくれてありがとう。さあ、おいで。」


少女はてっきり、自分と同じぐらいの男の子だと思っていたらしく、少し戸惑いました。がやっと会えた嬉しさで、涙を流しながらかれに抱き付いたのです。


そのまま、二人に時が止まったように、抱き合っていました。しかし、そんな時間もおしまいがきます。


タクロウの体が降る雪と一緒になって崩れかけていました。


「タクロウ、そんな、いやだよ。お別れしたくないよ。」


「ごめんね、もう時間みたいだ。」


タクロウは悲しそうな微笑みを浮かべてそういいました。


そして、二人何も言えずにタクロウが雪になっていくのを見ていましたが、もう少ししか残っていない、というとき。少女は涙でつっかえる声を振り絞って言いました。


「ありがとう、タクロウ。あなたのこと大好きだったよ!これからもあなたのこと忘れないわ。」


それにタクロウは、こう答えました。


「僕も好きだったよ。君が好きになるずっと前から。最後に君のサンタクロースになれて本当によかった。」


タクロウ、という名前はサンタになりたいというタクロウの思いだったのです。それを知って少女はまた泣き出しました。


そして、ふっと、強い風と共にタクロウの体はすべて雪になって、わからなくなってしまいました。


その夜、昨晩と同じように泣きました。今度は朝日が昇っても、お日様がてっぺんに行っても。お月様と入れ替わっても。やがて少女は泣き疲れて、眠りました。


次に目を覚ましたのは、果物屋さんの店の奥でした。道の隅で泣き崩れて寝てしまったところをおばさんが運んでくれたそうです。目を覚ました少女におばさんはよく頑張ったね。と声をかけて、リンゴを一つあげました。


少女はその言葉でまた泣き始めました。やけくそのようにリンゴをほおばりながら。


少女が落ち着いて、しばらくした後。少女はおばさんにお礼を言って出ていこうとしたとき、おばさんは引き留めて、こういいました。


「行くところがないなら、うちの子になりなよ。あんた、そのお友達がいなくなってさみしいだろう。うちの悪ガキの相手にもちょうどいいからさ。まあ、あんたがいやならいいから、この部屋で今日一日、考えてみな。それと今日はお店休みだから、手伝わなくていいよ」


少女は考えました。幽霊に話しかけてもらった夜と同じように。そして答えを出しました、少女はおばさんにこういいました。


「おばさんにご迷惑をかけるわけにはいかないわ。そして私はこれから旅に出ようと思うの。人助けのために。おばさんのご厚意はうれしいのだけど、今日考えて決めたの。ごめんなさい。」


「最初あった時より、立派になってるじゃないか。わかったよ。あんたがそういうならそうしな。でも、いつでも帰ってきていいからね。」


おばさんは微笑んでそういいました。そして旅のための物を少し分けてくれました。その晩、おばさんの家でお世話になり、次の日に出発することになりました。


そして、旅立ちの時です。


「じゃあ、気を付けていくんだよ。」


「ありがとう、おばさん。お世話になりました。」


そういって、少女は隣町へ続く街道を行きました。タクロウのように、誰かのサンタクロースに、そしていなくならないサンタクロースになるために。

初めて童話、というものを書きましたが、童話になったのかどうか。思った以上に童話ってどんなものかわからないもです。

うまくかけたらよかったのですがいつも通りの不時着。もっと作品の構想を練れるようになりたいですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ