CAT集合
『CAT集合』
「キュッキュッ」と古びた床が歩く度に音を出す…「懐かしいわね…」一人の女性が目を細めながら辺りを見回した
ここは誰も使っていない昔幼稚園だった建物。かなり昔の建物なので、木造の平屋みたいな作りだった。「まだ残ってるなんて…」女性はそう呟くと、少し笑った。
古ぼけた、旧幼稚園の正面玄関からは、小さなグランドが見え、小学生位の子が3人、バスケットボールをしていた。
手作りであろう、バスケットゴールを金網に針金で固定し、皆、一生懸命ボールを入れていた。
その子達の声は、古ぼけた幼稚園の中まで聴こえ、女性はその声に耳を傾け、また少し笑った。
「…遅いなぁ…」そう呟くと女性は体をさすりながら、小さな椅子のホコリを払った。
季節は春を迎えていたが、まだ肌寒い。何しろ長野県のとある山の麓なもんだから、まだまだ寒い日があったりするのだ。
女性はゆっくりと小さな椅子に腰を掛けた…と同時に「ここ!!」「ここちゃん!!」女性を呼ぶ声がした。
「愛里!!花乃!!」(あいり、かの)女性は…そう、ここは慌てて立ち上がり、二人の元へ駆け寄った。「元気だった?」三人共、同じ言葉を発し、互いに抱き合った。「珠希と凪は?」(たまき、なぎ)愛里は辺りを見回した。「珠希は来るでしょ!!でも、凪は難しいかもね…」とここは言った。
しばらく、三人で雑談していると、先程の小学生らが何やら叫んでいる。
「スッゲー!!」「マジかよ!!」「サイン下さい!!」などと騒いでいた。
「もしかして…」三人は顔を合わすと、外に出て行った。
黒塗りベンツを後にし、今人気絶好調の歌姫、SARANAがこっちに向かって歩いていた。小学生らは、いつの間にかサインを貰っていた。何故かズボンに。「俺、明日学校に履いて行く!!」と叫んでいた。
「ヨッス!!お待たせ!!」笑顔で片手を挙げるとSARANAが駆け寄って来た。「凪!!相変わらずだね!」花乃が笑顔で出迎えた。
凪を出迎えて、しばらくすると、「ごっめーん!!」と珠希が駆け寄ってきた。「凪も来れたの!?大丈夫なの!?」珠希は凪を見て驚いていた。「第一声がそれかよ!!」と凪が突っ込み、皆で笑った。
「ねえねえ、あの絵見に行こうよ」愛里が待ちきれなさそうに言った。「そうだ!!先に来たけど、まだ見てなかった!まだあるかなぁ?」ここが言った。
五人集まった事だし、さっそく古ぼけた旧幼稚園に見に行く事にした。
五人でここに入るのは何年ぶりだろう?「ふっるーい」だの「本当に久しぶり」だの各々感想を言いながら移動していった。
「あっ!残ってる!あるある!」ここが指を指した。
指を指した先には、壁があり、そこには猫の絵が描いてあった。猫の絵の近くには五人の名前が書いてあった。どうやら、自分を猫に見立てて、こんな猫であろうと描いたものらしい。 黒のマジックで、きっちり描いてあるその絵は、色あせる事なく、まるでつい最近描いた様な絵だった。
「あははっ!本当に懐かしいね!絵めちゃくちゃ下手くそだし。」愛里が絵を撫でながら言った。「字も汚いね。」凪が言った。
皆、自分達が描いた絵を撫で出した。
心があの頃に戻りだす。
一緒に過ごしたあの頃に。
「猫の様に生き、猫の様に死のう」そう言って、CATとして仲間になったあの頃に……。
「話したい事がいっぱいあるんだ…」誰かが呟いた