無名大学に通う身でJRAを受けた
私は競馬が好きである。
「合同説明会にJRA来るから行こう」
と友達に誘われた大学3回生の冬。2人で行った。友達は競馬に興味ない。
有名企業って所は賢い大学の奴が集まる。
私は最寄り駅の人しか知らん大学に通っていた。
説明するJRA職員は勝ち誇ってるように見えた。
俺は農林水産省の傘下で働いてる。エリートや。俺は就活の勝者だ。
って言いたげだ。
マイクを持つ手の小指が立ってたのにそれを感じた。
「JRAに入ると馬券は買えなくなります。ただし、幸か不幸か地方競馬は買えます」
何だよ幸か不幸って。
そんな感じの説明が終わり
「何か質問ある人はいますか」
誰も挙げない。次の瞬間、友達に「チャンスや」と右手を掴まれ上に上げられた。
「そこの君!」
当てられた。
「〇〇大学の藤本です。そうですねぇ、えーと、えーと、あの、筆記試験って競馬に関する問題って出ますか?」
無理やりひねり出した。
職員はこちらを困った顔で見ている。少しの間が空いた後
「・・・競馬に関する問題は出ません。そうですね。対策としてはSPIの上のレベルのスコアの問題集をされてたら良いかと」
次の瞬間、周りの質問しなかった連中がメモを広げ「JRA、筆記、スコアの問題集」と書いてた。友達は何のメモも取らない。
めっちゃ良い質問してた。職員が困ったのはスコアまで言うの嫌だったんだろう。
その後、続々と手を挙げ出した。
同志社大学の〇〇です。
大阪大学の〇〇です。
京都大学の〇〇です。
1番前にアホな大学の奴を立たせて、自分は絶対死なん位置から質問する。
賢いね。
そして、ネームバリューに私の大学名はかき消されていった。
阪神競馬場の窓が無い部屋で1次試験の筆記を受けて落ちた。
今まで受けたどの企業よりも難しかった。
ただ、エントリーシートは通ったのは自信になった。
学校の先生が「勉強しなさい」と言った意味が分かった。