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第21話 シャルルの鎧

 ――― ケッペンの過去語りが終わった。


「これが私の過去です。どうして貴女に過剰反応してしまうか、お分かりになりますね?」

「ええ。カミラという名前の黒髪の少女。そして人外の力。私という存在自体が、あなたのトラウマを抉っているのですね」

「お察しの通りです。私には貴女と、あのバンパイアロードが重なって見えて仕方がない。絶対に違うとわかっていても!」


 チャラ男がいつもの冷静さを失っていた。それほど核心的な話だったに違いない。だがここを超えなければ円滑な関係は、一生得ることができない。彼のトラウマを根本的に消さなければならない。


「私が貴女に惹かれているのは否定しない。でも惹かれれば惹かれるほど、バンパイアロードに抱いたおぞましい感情が蘇って来るんです……」


 ケッペンは男泣きしていた。本当に深く悩んでいたのだろう。苦しめてしまった。


 彼の前から俺が去るのが一番いいのだろう。でも解決にはならないだろうな。チャラチャラした派手で軟派な言動も、きっとこのトラウマを隠す仮面だ。この男、本当は真面目なヤツに違いない。


「正直に話して頂いてありがとう、ケッペンさん。あなたと本当の意味で蟠りを無くすには、その凄惨な過去をもたらした相手を克服するしかありませんね」

「どういう意味ですか?」

「そのままの意味です。バンパイアロード、カーミラ=シュタインベルクを斃します」

「不可能です。貴女が特別な力を持っていると言っても、所詮は人間です。あいつには敵いません」

「それはやってみないとわかりません」

「いえ、お言葉ですが無理です」

「……彼女の居所に心当たりはありますか?」

「言えません。むざむざ貴女を死地に送り込むようなことはできません」

「わかりました。それでは失礼しますね。今日はお話ができて嬉しかったです。それではごきげんよう」


 バンパイアロードの居所……。聞き出せなかったか。まぁいいや、なんとかなるだろう。


 俺はレイさんとその足で冒険者ギルドへ向かった。もちろん、バンパイアロードの居所を知るためだ。

冒険者ギルドは、ゴブリン狩りの時と比べて大分変わっていた。賑やかで騒がしく、いかにも酒場という雰囲気になっていた。


 鎧を来た荒くれ者から、ドワーフや亜人、そして相変わらずローブを被った魔法使いのような男達。誰も彼も一癖ありそうな冒険者ばかりだ。何かを自慢げに大声で話をしている。昼間から酒も入っているのだろうね。冒険譚で盛り上がるのは、俺の夢でもあるぜ。


 しかし、どうして魔法使いってのは、いつも怪しげなローブを着ているのだろうか。呪文詠唱の際、動きやすくするためとか、勉強ばっかりしていて体力がないから重い鎧は着れないとか、もっともらしい理由はいろいろ聞いたことがある。


 ――― 魔法?

 

 そういえばこの世界、魔剣やらモンスターやらファンタジーな要素満載なのに、どうしてメインイベンターである”魔法”が登場しないのだろうか? 魔法使いらしき格好の人はいるんだけどな……。今度、聞いてみよう。


 カウンターには相変わらずスキンヘッドが似合う、まろやかフェイスのイケメンマスターが居た。


「マスター、こんにちは」

「おう、嬢ちゃんじゃねぇか。この間は相手できなくて悪かったな」

「いえ、どうか気になさらずに」

「そういえば、あのメイドと2人で鉱山まで行ったんだってな? 片腕の娘とメイド服のコンビを見たって噂になってたぞ」

「え、えぇ……。まぁ、ちょっと興味本位で鉱山の近くまで行ってみただけです」

「そう言えば、嬢ちゃんはモンスターマニアだったもんな。生きたヤツを直接見たかったって訳か」


 むっぐ……。マスターの中では、俺はモンスターマニアってことになってるのか。確かに突然やって来てモンスター資料集を読み漁るような子供だから、そういう認定をされているのだろう。まぁいい、今日はそのキャラ設定を利用させて貰おう。


「マスター、今日はまたモンスターのことでお伺いしました」

「また資料集か?」

「いえ、今日は直接マスターに聞いた方が早いと思いまして……。バンパイアロードってどんなモンスターですか?」

「ああ、あの伝説のアレの話か。それなら、ビスマイトのおっさんに聞いた方が早いかもしれんぞ」

「ではお父様に聞いてみます」


 そうか、やっぱり因縁のあるいわく付きの相手だもんなぁ。ビスマイトさんは良く知っていて当然か。でもバンパイアロードを斃すなんていったら、さすがに全力で止めに来るだろう。ここでマスターに聞いてもビスマイトさんに情報が渡って怪しまれるからな。その前に、チャラ男がビスマイトさんに話を漏らさないか不安だけど……。これはいろいろ知られる前に、さっさとバンパイアロードを斃してしまわないとまずい。


 冒険者ギルドをもっとじっくり見て歩きたいと思ったが、時間が無さそうだ。


 俺がマスターと話している間に、レイさんの姿が見えなくなっていた。何処へ行ったのだろうか。

 おや? 何やら酒場の入口付近で、こちらに向けてやたら激しく手を振っている人がいる。

 ……レイさんだった。何やら急いで来いと言っているようだな。


「マスター、ありがとうございました」

「おうよ。気を付けて帰りな」


 もう完全に近所のおっさんと小学生の間柄だな。


 レイさんの所まで行ってみると、そこには掲示板があった。大小様々な紙が所狭しと貼り付けられている。大きさや形どころか材質まで各々違う。この世界、紙の製造技術は未発達だから、とりあえず書ければ何でもいいって感じか。


「カミラ様、この掲示板にギルドからの依頼が、全部貼ってあるんですよ」


 なるほど。ここが噂のクエスト依頼掲示板という訳か。RPGでも定番だよね。


「それでですね、見つけちゃいましたよ。コレです!」


 レイさんが指差したクエストは、まさに俺が探していたものだった。


【バンパイアロード討伐依頼】


・依頼内容

― バンパイアロード1体の討伐

(西地区の外れ、ミッドミスト城)


・報酬

― 金貨5000枚

― ロードスレイヤーの称号


・期限

― 無期限


・条件

― バンパイアロードの身に着けている服飾品を持ち帰ること


・依頼主

― メンデル国宰相 カール=エルツ


・備考

― メンデル及び周辺国の治安維持のため


 なんと簡単に居所がわかってしまった。名誉の称号はともかく、金貨5000枚とは破格だな。日本円だと約10億円か。東京都内の一等地にマンション買ってもお釣りが来るよ。しかも期限無しとはね。


 他の依頼と比べると、この討伐依頼の異常性がよくわかる。他の報酬額は多くても金貨200枚程度だ。クエストのハードルの高さが窺い知れる。しかし俺にとっては、場所さえわかればいい。今は金が目的ではないのだ。


「カミラ様、向かわれるのですか? ミッドミスト城へ……」

「ええ。今直ぐにね」

「それではお供させて頂きます」


 そう来ると思った。だが本音は1人で行きたい。もう自分以外の誰かが傷つくのは見たくないからね。でもレイさんの協力なしには、きっと城に辿り着くことすら難しいような気がする。なんたってこの世界の事、俺はまだ全然知らないに等しいのだ。


「すみません、お願いします。でも危ないと感じたら、私を置いて即逃げてください」

「主人をおいて逃げるメイドはいません」


 そういう意味じゃない。ゴブリン討伐の時は、最初から俺が戦っていれば、レンさんも怪我をしなくて済んだ。だから今回は、いきなり全力を出そうと思う。ただそうなると、レイさんを巻き込む恐れがある。できれば距離を取っておいて欲しいのだよ。


「それに……素手で戦うおつもりですか? 相手はあの伝説のモンスターですよ」


 でも素手しかないだろうな。だって剣を持ち出したら、それだけで目立っちゃうし。また懲りずに黙って出てしまった手前、ビスマイトさんにバレたくない。


「はい、お持ちしてます、カミラ様の剣」


 気が付けば、レイさんは細長い木箱を持っていた。はて? そんな木箱持って歩いていたかな?


 木箱をそっと開けてみると、ビスマイトさんが作ってくれたあの剣があった。なんと、レイさんは屋敷を出る時からずっと担いでいたのか。この準備の良さは、間違いなく姉のレンさん譲りだね。


 仕方なく俺はレイさんと一緒にミッドミスト城に向かった。まぁ、城の場所を知らないというのもあったし、結局段取りは全部お任せになってしまった。


 レイさんが、いつの間にリュックサックを背負っていることに気が付いた。街を移動しなから、いろいろ物資を調達していたらしい。いつ物が増えたのか……。全然気が付かなかったぞ。この人は忍者メイドだな。


「今回、吸血鬼退治の装備は意味がありませんね」

「でも念のため準備してあります。敵が1人とは限りません。配下が居るかもしれません。その時はコレです」


 そういってレンさんは、十字架と聖水をリュックから取り出した。


「あとは万が一の時にために、白木の杭とニンニク、銀のナイフを用意してあります」


 それはもう対吸血鬼フルセットと言わないかい? まぁ準備しておくに越したことはないので、いいけどね。


「レイさん、あと必要なものって思いつきますか?」

「そうですねぇ……。日没までに斃すことでしょうか」


 バンパイアロードは、陽光だけが唯一の弱点である。さらに言えば、昼間は彼らにとって人間の真夜中となる。バイオリズム、体の調子としては最悪の時間だ。攻めるならこの時間帯を逃してはならない。


「カミラ様、それとですね……。私達、尾行されています」


 何だと。またまた全然気が付かなかったじゃないか。


「どんな人物かわかりますか?」

「わかりません。なかなか気配を掴ませません。かなりの手練れであることは、間違いないですね」


 ミノタウロスを素手で斃すレイさんに”手練れ”と言わせる相手か。厄介だな。味方ならいいんだが、もし敵だとすると城に入る前に叩いておきたい。


「尾行が急速に近づいて来ます。どうされますか?」


 ここはまだ街中だ。しかも繁華街のど真ん中だ。相手も無茶な攻撃を仕掛けて来るとは思えない。むしろ早目に正体を掴んでおいた方がいいだろう。


「このまま相手を迎えましょう。正体を確かめます」

「承知しました」


 レイさんはさりげなく臨戦態勢に入り、いつでも攻撃に対処できるよう、両膝を軽く曲げ、半身の姿勢を取った。


「来ます。あと150メートル」


 おいおい、150メートルって……。それじゃあレイさんは一体何メートル先から尾行の気配を察していたんだよ。達人すぎるぞ。


「あと数秒でそこの角から現われます」


 俺も思わず身構えてしまう。周囲の通行人が不思議な目でこちらを見ている。確かに隻腕の娘が怖い顔をして変な構えをしていたら、それだけで目立つだろうな。


 だが俺達の心配をよそに、角から現れたのは予想していない人物だった。騎士団長(仮)その人だった。


「ディラック様! どうしてこんなところへ?」

「や、やぁ、カミラ殿、奇遇ですね……」


 ムムム、奇遇じゃないぞ。尾行していただろうが。

 レイさんの、ディラックさんを見る目が冷やかだ。


「ま、まぁまぁ。実はブラッドール家までカミラ殿を訪ねたのですが、外出中とのことだったので、そのまま街を巡回警備していたんですよ」

「巡回警備……? 1人で、ですか?」

「そこの角にもう御一方いらっしゃいますね」


 レイさんが指摘すると、長い金髪の気の強そうな女性が現れた。全身を銀色に輝く鋼鉄の鎧に身を包んでいる。メンデルの紋章が入った鮮やかな赤いマントが目に眩しい。これで兜を被ったら、直ぐにでも戦場の最前線に立てそうだ。


「彼女はメンデル騎士団の副団長に新しく就任した、ローリエッタだ」

「初めまして。ローリエッタと申します。以後お見知りおきを」

「副団長、ということはディラック様の部下という訳ですね。私はカミラといいます。よろしくお願いします」

「お名前は存じておりますよ。貴女は城では有名人ですので……。ふふん」


 なんだ、この意地悪な感じは。どうして初対面でいきなり対抗心むき出しなんだよ。めちゃくちゃ気分よくないぞ。見た目は美人だけど、性格は最低の性悪女なのか?


「と、ところでカミラ殿はこのような場所で何をされているのですか?」


 さてどうしたものか。ここでディラックさんと性悪女を引き込んで、戦力にするという手もあるな。騎士団長と副騎士団長だしね。メンデルで現役の最強剣士トップ2と言いかえることもできる。


 レイさんの予想通り、もしもバンパイアロードに強力な部下がいた場合、苦戦を強いられる可能性がある。何より国の役職が現場に立ち会ってくれると、面倒が起きても後処理が楽になる。よし仲間に引き込んでおくか……。


「実はこれからミッドミスト城へ参ります」

「何ですって!?」


 反応したのは性悪女の方だった。


「貴女、あの城がどんな所かわかってるの?」

「はい。バンパイアロードの城ですよね」

「あきれた。やっぱりまだ子供、何も知らないのね。あのねぇ、バンパイアロードってのはとんでもない強さの伝説の吸血鬼なのよ。しかもあの城には、ヤツの部下である高位のバンパイアも確認されている……。あそこに行くなんて自殺行為に等しいわ!」


 これは貴重な情報だ。やはり複数名のバンパイアがいるのか。危なかった。何の心構えもなく1人で突入していたら不意打ちを喰らっていたかもしれない。


「カミラ殿、どうしてあの城へ向かわれるのですか?」

「バンパイアロードを斃すためです」


 性悪女が眉間に手を当てている。呆れた顔もそれなりに綺麗だったが、こういう女性は何をやってもそれなりに絵になってしまう。美人がお得なのはどの世界でも同じか。ま、美人ほど性格が悪い、という俗説も共通かもしれないけどね。


「なぜですか? お金のためですか? それとも名誉のためですか?」

「どちらも違います。ブラッドール家の将来のためです」

「将来のため? どうしてバンパイアロードを斃すことが、ブラッドール家に繋がるのでしょう?」

「ケッペンさんの心の遺恨を断つためです。そしてケッペンさんとブラッドール家の関係を円滑にするためでもあります」

「父から聞いたことがあります。確かケッペン殿のご両親は吸血鬼に殺されたと」

「ええ。仇討ちという気持ちもあります。ですがあのバンパイアロードの存在そのものが、ケッペンさんと私の間に、大きな壁を作ってしまっています。これを解決しないと、彼は将来に渡って苦しむことになります。彼という才能を潰してしまったら、ブラッドール家にとっても大きな損失になります。これは避けて通れない道だと思っています」

「そうですか。ご決心は堅いようですね」

「はい」

「わかりました。それでは微力ながら私もお供致しましょう」


 ふむ。ディラックさんならそう言ってくれると思っていた。期待通りで嬉しい限りだ。この国の最高戦力を得たも同然だからね。


「なっ……ディラック団長! いくら団長の剣技が優れていると言っても、相手が悪すぎます」

「我が身内が継いだ家のために命を懸けようとしているのだ。私が助けなくて誰が助けるというのだ。私は騎士団長であると同時に、ヴルド家の人間なのだ」

「……わかりました。では私もお供します」


 そう行って性悪女、ローリエッタはディラックさんの腕を掴んだ。顔が心なしか赤いな。ふむ、間違いない。コイツが俺に対して態度が悪いのは、ディラックさんに惚れているからだ。


 要するにヤキモチというヤツだね。女のヤキモチと嫉妬ほど面倒くさいものはない。さっさと誤解を解いて、円滑に事を進めたいものだ。


「ありがとうございます、団長様、副団長様、頼りにしています」

「フン、別に私は貴女のために行く訳じゃないわ。団長1人だと心配だから付いて行くのよ。勘違いしないで」


 あーあ、面倒くせぇな。これだから女は……って今は俺も女だったな。


「そう言えば、ディラック様は私に何か用事があったのですよね?」

「忘れてました。城の女騎士達と話をしたのですが、女性用の防具はイマイチ美しさに欠ける、という話題になったのです」

「は、はぁ……」

「それで、シャルルに頼んで新しい女性騎士用の防具のデザインと試作をしてもらったのです。それをぜひカミラ殿に着けて頂きたいと思いまして」

「それは構いませんが、女性騎士用であれば、そちらのローリエッタさんの方が相応しいのではないでしょうか?」

「あんなのは防具とは言えないわ。やはり騎士たるもの、このフルアーマーこそが至高です」

「……よくわかりませんが、試着すればよろしいのですね」

「はい、ぜひ。できればバンパイアとの戦いに使って頂ければ。ちょうどその角を曲がったところに警備隊の詰所がございます。そちらで試着して頂ければ」


 時間がないので後回しにしたいところだが、これから過酷な戦いに向かうのだ。防具なら着けておいて損はないだろう。


 だが、しかし……


 試着を終えた俺は、深い後悔の念に囚われていた。なんだこの鎧は! いや、そもそも鎧かどうかも怪しい。肌の露出部分の方が明らかに多いじゃないか! そう、よくRPGで見る露出度の高い女騎士の鎧だ。ハッキリ言おう。胸と腰回り、手足以外は何もない裸同然。足も膝上から股下まで、つまり太もも周りは全部露出している。こんなに防御力の低い鎧があってたまるか。


 さすが、己の邪念に忠実なシャルルさんの作だ。そして男の欲望丸出しのデザイン……。ディラックさん、気持ちはわかるが妄想は脳内にとどめておくんだ。形にしてしまったら変態騎士団長として、大陸全土に名を馳せてしまうぞ。


「あのーディラック様、着けてはみたのですが……」


 鎧装着を終え、表に出て行くとディラックさんの目が星に変わっていた。これまでにないほど、生き生きとしている。この貧相な小娘の体にこの露出鎧、どこがいいのだろうか。滅茶苦茶恥ずかしいということだけは、確信を持って言える。


「カミラ殿、良いです! 素敵です! 凄くお似合いです!」


 やべぇ。ディラックさん、興奮し過ぎてテンションがおかしい。いつもの彼に早く戻って欲しい。


「しかしディラック団長、これでは防御力という点でかなり劣るのではないですか?」

「確かにフルアーマー型の鎧よりも防御力は劣ります。だが軽量になった分、攻撃の回避力が上がるのです。素早い立ち回りが可能になります。つまりスピード重視の鎧という訳です」


 言ってることは、至極真っ当で正しいような気がする。でも欲望的なものに塗れているように感じるのは、俺だけだろうか?


「カミラ殿、その鎧はシャルルの作でも最高クラスの物ですよ。金属にはミスリル銀が使われています」


 ゲゲッ! あの魔法金属と名高いミスリルかよ?! 欲望にまみれている割には、かなり本格的だな。


「それは本当ですか?!」


 ローリエッタさんがこれ以上ないほど、分かりやすい驚きのリアクションをしていた。この人、案外面白い人なのかもしれないな。


「ミスリル銀は、ミスリルの中でも最高級レベルの金属ですよ。鎧一つで屋敷が建ちます」


 やはり高価な鎧なのか。だが鎧なんてものは実用品だ。問題なのはその品質だよな。


「ミスリル銀にシャルルの全身全霊を込めています。おそらく、ダマスカス鋼に近い強度と粘りを持っているでしょう。そしてミスリル銀には、アンデッドを退ける力が付与されています。その効果は、高位聖水に近いと言われています……。今回の戦いにもきっと役に立つはずです」


 なんと! ミスリルに特殊な力を付与することができるのか。すげぇな。男の欲望を叶えるための鎧じゃなかったのかよ。ちょっと侮っていた自分が恥ずかしい。


「ありがとうございます、ディラックさん。今回の戦いも心強くなりました」

「どういたしまして。次回はぜひその鎧を着て城の方へおいでください。その斬新なデザインと機能性、皆の注目の的となるでしょう」


 ……うん、確かに注目はされるだろうね。注目は。


 それより、さっきからレイさんが白い眼で見てるのが、気になっているんだが……。


 ちょっと時間は食ってしまったが、その代り騎士団長と副騎士団長という大きな戦力と欲望の鎧、もといミスリル銀の鎧を手に入れた。吸血鬼への対策アイテムも揃っているし、あとはもう当たって砕けろだな。


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