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作者: 蒼威月

リア友ちゃんからのリクで恋愛ものを書きました


駄文ですが楽しんでいただけると嬉しいです

ぽろぽろ…

ぽろぽろぽろ…



流れていく雫は飴玉みたいだった







ザアアアアア…

ガタゴトと走る列車の中で俺はぼんやりと窓の外を眺めていた

向かう途中で降りだした雨は止むことを知らず更に激しくなっていて

大粒の雫が窓を叩いていて

自然と俺の脳裏に彼女を浮かべさせた

「…元気…かな」

ぽつりと吐き出された呟きは、俺しか乗っていない小さな列車の車内にゆるく淡く広がって、溶けていった

雨の向こうに小さな駅が見えた

「…ただいま」

帰ってきた





俺の故郷に

彼女の町に






駅の改札を抜けると

同い年くらいの青年が駆け寄ってきた

隆哉(たかや)!!隆哉〜元気だったかー!?」

「ゆう」

彼は悠一(ゆういち)

俺がこの町に住んでいたころの一番の親友だ

「相変わらずだな、ゆうは」

「お、なんだよー男前になったと言ってくれよ」

ドヤ顔を決める悠一を俺は鼻で笑ってやった

「どーこが」

「あ!!てめっ、今鼻で笑いやがったなこんにゃろー!!」

相変わらずだな

昔っから調子に乗りやすくて騒がしいこの親友が俺は好きだ

「はいはい分かった分かった。男前になったんじゃねーの?」

「なんだーその絵に書いたよーな棒読みはー…。まーいーや、よっしゃ行くぞーみんなもう集まってるんだからな!!」

悠一はニィっと笑うと傘をさして先に立って歩き出した

俺も傘をさしてあとに続いた

傘の中から久しぶりに見る故郷は雨でくすんでいたが

ひどく優しく見えた

『おかえり』

そう言ってくれているみたいだった

「ただいま」

小さく呟いてみた

うん

ただいま、俺の大事な場所






悠一に連れられて着いたのは小さな高校の校舎

ここはかつて俺達が過ごした高校だ

つい最近、ここが廃校になることが決まった

それを聞いて、俺達の代は同窓会も兼ねて最後にこの校舎にお別れを言いに行くことになったのである





校舎に足を踏み入れると少しほこりっぽい臭いがした

階段を上がって、一つの教室に向かう

…一年二組

俺達の一番の思い出の場所であり…

俺が彼女と出会った場所だ

その小さな教室はガヤガヤと騒がしい

…彼女も来ているんだろうか

悠一がニコニコしながらその教室の戸を開けた

「おーいみんな揃ってるかー?隆哉来たぞー!!」

…彼女は?

俺は小さな期待と不安を抱えつつ悠一に続いて戸をくぐった




「おう隆哉っ!!久しぶりだな!!」

「隆哉君!!元気だった!?」

「隆哉おせえぞー!!」

「あー隆哉君久しぶりー!!」

一斉に声がかけられた

かつてのクラスメート達は口々に元気だったか、久しぶりと笑いかけてくる

…彼女は?彼女は来ているのか?

ちょっと周りを見回す

すると後ろから小さな声がかかった

「…たー…くん…?」

この舌ったらずな呼び方

この呼び方をするのは一人しかいない

俺はゆっくり振り返った





「…(あん)…」

そこに立っていたのは

間違いない

何度会いたいと思ったか分からない

何度触れたいと思ったか分からない

彼女だった

「…ひさしぶり」

泣きそうに顔を小さく歪めながら彼女は押し出すように言った

「ああ…」

聞きたいことはたくさんある

言いたいこともたくさんある

謝りたいこともたくさんある

でも言葉にならない

声として出て行かない

「…会いたかった」

ようやく絞り出した言葉はそれで

彼女はくしゃっと顔を歪めると泣き笑いの顔で頷いた

「…私も…会いたかった」





同窓会は楽しく過ぎていった

かつてのクラスメート達は温かくて優しくて懐かしくて

話すうちに気づけば外は暗くなっていて

「そろそろお開きにすっかー」

と言う悠一の声でお開きとなった

俺はなかなか帰りたがらないクラスメート達と悠一に別れを告げ、一人で階段を駆け下りた

暗くなった校舎の昇降口に小さな人影が佇んでいた

「杏!!」

その人影に声をかけると彼女はにこりと笑って

「たーくん」

俺を呼んだ




高校時代

俺と杏は付き合っていた

でも俺は杏を突き放した

遠方の大学に行くことになったから

彼女に悲しんでほしくなかったから

今思えば自分勝手な理由だ

俺はただ不安だったんだ

遠距離になって

杏が他の誰かのところへ行ってしまうんじゃないか

俺のことなんて忘れてしまうんじゃないか

そのせいで…

杏を泣かせた




今の俺に…

好きだと

杏に伝える資格はあるんだろうか





「…たーくん?」

杏の声が俺を現実に引き戻した

彼女の瞳が心配そうに俺を覗き込んでいた

「あ、ああ大丈夫。気にすんな」

「う、うん…」

彼女はちょっと俯くと震える声で言った

「たーくん…今日はお家のほうに泊まるんでしょ?…なら…いっ一緒に帰って…いい…かな…?」

「もちろん」

即答だ

彼女はぱっと顔を上げると嬉しそうにはにかんだ顔で微笑んだ

俺はちょっとハッとした

あの頃と変わらない杏の笑顔

俺はこの笑顔に惹かれたんだった




雨が洗濯していってくれたように綺麗に晴れた夜空を見上げながら二人並んで歩く

俺は杏に何を言えばいいのか言葉を探していた

すると杏が口を開いた

「…あの…さ、約束…覚えて…る…?」

約束

あの時の約束を彼女は覚えていてくれた

俺の記憶は過去へ飛んだ




「…ひっく…ふ…うぇ…」

あの時俺は杏に別れを告げた

ただでさえ離れたくないと泣いていた杏を更に泣かせてしまった

あの時の俺は何を考えていたんだろう

全く覚えていないのに、ただただ彼女の流す涙がきらきら光っていて綺麗だったことだけは覚えている

飴玉みたいだと思ったことも覚えている

「…ごめん」

ぽろぽろと涙をこぼす杏に何も言えずただ謝罪を繰り返す

「…っく…わ、私の…ことッ…き、嫌いに…なった…?」

「まさか」

間髪入れずに返した

俺が杏を嫌いになるなんて絶対にない

「…杏…は…?」

「大好きだよッ…わ、私がたーくん嫌いになるなんて絶対にないもんッ…」

同じこと考えてた

その時、杏が顔を上げた

涙で潤んだ彼女の瞳に不謹慎ながらどきっとしてしまった

「…じゃあ…っく…や、約束ッ…して…くれ…る?」

「約束?」

彼女はこくりと頷いた

「た、たーくんがまたこの町に…戻ってきた時に…まだ…わ、私の…こと…す、好きで…いて…くれたら…も、もう一度…改めて…付き合って…」

つい俺はふっと笑みをこぼした

「それ…約束になんないだろ。俺が杏を嫌いになるなんて絶対ありえないし。むしろ俺が杏に嫌われないか不安」

「それは絶対ないよ!!私はたーくん大好きだもん…」

自分で言ってて恥ずかしくなったんだろう

杏は真っ赤になって俯いた

「自分で言っといて照れんなよ…。…こっちも照れる」

「う…」

俺はふっと笑みをこぼすと杏の額にそっとキスをした

「!?」

杏はびっくりした顔で額をおさえた

その仕草に自然と笑みがこぼれた

「じゃあ約束な?俺がまたこの町に戻ってきた時、まだお互い好きだったら…また改めて付き合おう」

杏は泣きそうな顔で頷いた

俺はちょっと思いついて、いたずらっぽく笑って杏の耳元で囁いた

「今度は結婚前提で…な?」

「!!」

案の定、杏は顔を真っ赤にした

その後嬉しそうにはにかみながら頷いた

「…じゃあ…俺行くから」

俺がそう言うと杏はまた泣きそうになりながら泣き笑いの顔で微笑んだ

「約束だよ…?」

「ああ」

「…いってらっしゃい」

「…ああ」





あの時の約束を彼女は覚えててくれた

もちろん俺も忘れてなんかいない

「わ、私は…まだ…!?」

言いかけた杏の口を塞ぐと杏は不思議そうな顔で俺を見上げた

「…俺から言う」

杏はこくこく頷いた

俺は杏の口から手を離すと杏に向き直った

「…好きだ」

杏の瞳が見開かれて、その瞳から透明な雫がこぼれ落ちる

「…俺は杏が好きだ」

杏の顔がくしゃりと歪んで雫が次々と溢れだす

「わ、私も…たーくんが好きだよ…」

そう言って杏は泣き笑いの顔を向けた

「…良かった」

俺はぽつりと呟いて

杏を抱き寄せた

そのまま彼女の耳元で囁いた

「…俺と…結婚前提で付き合ってください」

「!!」

杏は涙をこぼしながら微笑んで俺の背中に手をまわした

「喜んで」





俺は杏を強く抱きしめながら誓った

もう二度と杏を泣かせない

絶対に悲しませたりしない

絶対に…幸せにする


…何年も待たせてすまなかった

待たせてしまった分、会えなかった分、触れられなかった分

…絶対に幸せにするから








大好きだから


楽しんでいただけたでしょうか?




Geneシリーズも頑張って更新するのでよろしくお願いします!!


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