放課後の
「まず、公園でも行こうか……」
有紗と佳苗はさっさと制服から着替え、家を飛び出した。
中学生になって放課後に遊ぶ機会はほとんどない。
部活や勉強で忙しいからではない。面倒なのだ。疲れてしまう。
もう一度家に入れば、再び外に出る気力がない。
制服を着替えるのだって面倒なくらいだ。
「公園ねえ、どっちのがいいかな。向こうの第三公園か、ハト公園か」
結局近い方から行くことにした。
だいぶ涼しくなってきた。
木漏れ日からの光は、風のせいで温かいとは感じない。
ハト公園に、あの少女らしき女の子はいなかった。
「あの子じゃないのお?」
「いや、違う。あんな子じゃない」
あの少女の顔はなんだか懐かしいにおいのする子だったのだ。
昭和っぽい顔とか、そういう意味じゃなくて。
どこかで見たこと有るような。いや、しょっちゅう見ていたような。
でも、暗い中で見たわけだ。顔なんて覚えてない。
「でも、そろそろ6時になるよ?」
文字盤の針を見る。
確かに今は5時47分。そろそろ小学生たちは家に帰るころだろう。
小学生だった有紗と佳苗の門限もこのくらいだった。
6時までには家に着かなければ閉め出される。弟にはなかった一つの決まりだ。
「あ……そうだね。意味無いから今日はやめにしようか」
帰り際に気付いたのだ。
大事なリカちゃんを持ってくるのを忘れた。
これじゃあ見つけたって意味が無い。
でも、佳苗は言ったのだ。
「んー、でもみたのは夜なんでしょ?もっとね。だったらその時間にまた探したらどーお?」
そうだねぇ、と有紗は言ったが、結局空腹には耐えられない。
佳苗はさっさと帰ってしまった。
だいぶ空気も冷えてきたもんだから、家の前ででも待ってようかと思ったけど空の色が暗くなり始める前に家に帰った。
明日は絶対に忘れぬようにしよう。
玄関に置きっぱなしだったリカちゃんの頭をなでながら言った。