第三十一章
もう、それは彼にとって完全なる計画である。
というわけでどうやってもめ事を起こそうか。
まず、食器棚を見た。
皿でも割ってやろうと思った。
でももし怪我でもしたら、もし割ったことで本当に怒られたら。
やめた。少々あぶないかもしれないけれど、ティースプーンを五本ポケットにしまった。
「なにをしているの」
「んーや、何もしてないさ」
こうなったら、心の底からヘコんでしまえよ。
もちろん、計算通りに行くつもりである。
一旦その場にしゃがみこんだ。そしてゆっくりと5秒を数えて再び立ち上がり、ポケットにスプーンを一本追加しておいた。流し台に置いてあった、まだ洗っていないそれを。
「なにかヘン。ねぇ、なにかヘンだよ……ママー、ママー」
ほぅーれ……ひっかかった。
案外こういう子供は簡単なものであるな。
こんなことでは将来、大損害を繰り返す大人になるだろう。可哀想にね。
「スプーンが無いぞ……」
わざとらしくとぼけて見せた。
拓斗は台所のあらゆる所を探すふりをした。
いらいらするふりをした。庵はそのたびにビクビクと拓斗から姿をはなす。
「何言ってんの。そこの棚に……あれ」
有紗の目線の先にも、スプーンはない。
「物の管理はお前にまかせたろ」
その言葉に、偽りとはわかりながらも少々カチンときた。
興奮した。
「どうして責任を押し付けるの、あたしだって疲れてるんだから」
ここ最近、緊張型頭痛が大行進をしている有紗にとって、それは間違いではなかった。
有紗の本気まじりの演技がうますぎて、一瞬クラッとした。
まるで本当に説教されてるみたいだ。
ちょっと前に、両親が口論していた。なんだかそれに似ていた。
「疲れてるも何もないだろう、だったら一人でもといた場所に帰れよ」
急展開だ。
「えぇ、そうします。そうする。じゃあ島谷君そこの女の子をよろしく頼んだから。もう戻るつもりもないから」
「ちょ、ちょっと待てよ」
最悪だ。
せっかくさっさと家を後にするという言葉を言いきったのに。
腰が砕けそうになった。
拓斗は有紗の腕を握り、階段を上って二階へいってしまった。
庵はそれを心配そうに見つめていたが、泣きたくなってうつむいた。
「なに何……せっかくいいところまでいったのに」
「落ち着け……ここ、屋根裏部屋あったの知ってるか」
「え……」
何故そんな話を。
屋根裏部屋へと続くはしごを拓斗が上ると、そこには布団や食料がすでにセットされていた。
「ここに全部置いてある。お前が家を出た後、すぐ庵を外に出すから。家のそばで見てればいい。そしたら俺がすぐドアを開ける。しばらくの間ここにいてほしい」
「……わかった……けどさ」
「なんだ」
有紗は小さく声をたてて笑った。
「なんの映画の主人公のつもりだよ、お前」
皆様お久しぶりでございます。
最初、本当はグロ目的で描き始めたこの小説ですが。
あまりにも展開が酷く、進みすぎただでさえグダグダなものがドロドロになってしまうので、もういいです。
グロは失くしました。気が変わらなければ。
結構な間があいてしまいましたので、物語がこの先どのような展開にしたかったのかよく覚えてませんし。
なんだか二人の口調が似てるんですよね、有紗と拓斗って。
そろそろ他の小説も書き始めたいと思っているのですが、この調子で両方管理できるでしょうかね。