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少女

有紗は、拓斗と一緒に帰る時間より、最近は群青色の空の下を歩く方が好きで、

もちろん拓斗も大好きだけど、その色に惹かれるものがあったのだ。

だから拓斗が一緒に帰ってくれなくなっても、ずっとこの空の下を歩こうと思っていた。

どうせいつかはそんな日が来るだろう。

「あたしさぁ、この空の色好きなんだよね」

「えっ……俺も」

 ふともらした言葉に、拓斗がのっかる。

まだ部活をしているところもあるのだろう。

じわじわと残る掛け声。でももうこんなに暗いのに。

「なんか綺麗だよね」

「うん……でも俺はこの色より有紗が好きだよ、いろんな意味でな」

「えっ……」

 ちょっとした言葉でこんなにポロリと皮が剥げ落ちるのかと。

拓斗はすぐに下を向いた。見てはいけないと思ったから、有紗も左を向く。

二人の足がピタリと止まる。

これは拓斗も立ち去りにくいだろう。

ちょうど拓斗の家の前である。有紗の家はまだ先の先くらい。

「あ、あたしもこの空くらいに拓斗が好きだよ。いままでずっと仲良くさせてもらったし」

「うん。一瞬今の失言かと思った」

「いやいや」

 足が動かずにいたから、有紗の方から手を振った。

そしたら拓斗も手を振って、いつものように明りのともった家に帰って行った。


 自分の家の方へ向いた時だ。有紗の家の手前に、小さな少女が立っていた。

まだ小学生前後であろう。そのくらい幼い少女が、こんな時間に一人で立っていたのだ。

そのあまりにも見たことのない情景に、一瞬有紗は幽霊かと見間違えてしまった。

半歩後ろにさがったものの、少女はこちらに気付いたようで、にっこり笑って寄ってきた。

「……」

 少女の大きな瞳は街頭の明りでキラキラとしていた。

なんだか懐かしい顔をした少女に、有紗はいった。

「どうしたのかな……?こんなに暗いのに何してるの?」

 有紗は小さな子供が大好きである。

近所の子供等が遊んでいるところを見ているととてもほほえましい。

でも、子供子供とした4~8歳くらいまでの子供は苦手だ。

いいお姉さんすぎて、自分を独占されるのが嫌いなのだ。

たいていこのくらいの年齢の子は慣れればいつまでもすり寄ってくる。

できれば0歳~3歳くらいがお望みだ。一生で一番かわいい時期だろう。

「そっちこそナニしてるの?もうまっくらなのに」

「お姉さんはね……今学校から帰ってきたの」

 あぁ、声といい、この喋り方といい、後日絶対に付きまとわれると有紗は悟った。

少女はそんなことを思われているとは知らない。

むしろ、とてもワクワクとした浮いた気持ちでいた。

何かに期待していたのだ。

「学校こんなにおそいの?」

「ううん……お姉さんはもう終わってたんだけど、お友達を待ってたの」

 ふぅん。と行った後、少女は手に持っていたぬいぐるみを有紗に渡した。

ブタのぬいぐるみだ。こんなに小さな子だったら、普通はうさぎやくまのぬいぐるみを好むだろう。

何故ブタなのだ?可愛くない事も無いがやっぱりうさぎのが有紗は好みだ。

「その子ね、リカちゃんって言うんだよ。おねえさんにあげる」

「え……ちょっ」

 ブタさん、リカちゃんを返還しようとしたら、少女の姿は消えていた。

ずいぶんと運動能力に優れた子なのだろう。

気がつけば空は群青色よりもさらに暗い青色になっていた。

リカちゃんを抱いて、有紗は鍵を握った。

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