深夜会議、実験計画中
そんなこと、この男がするわけ無かろうが。
もう、こうなったらここで息絶えるしかないのだ。
でも、その後数日の事である。彼女はとても不安定になった。何故かはわからない。
それとともに有紗を含めた三人の関係もグラグラである。
それはしょうがない、我儘な奴に結構静かな女の子たちだ。
拓斗が幸せに過ごせるわけないだろうに。
それも理解できずに、子供と言うものは一人で落ち込んでいる。
このまま精神的に追い込んでやったら、どうなるだろう。
心の内側でガラスの砕ける音を聞いた気がした。
それは、理性が砕けたわけでもない。ただの好奇心だったのである。
こんなことはないだろうか、小さな可愛らしい赤ん坊を見ると無性に泣かせたくなるのを。
それと似たような出来心であると言えるかもしれない。
「というわけでだな、俺ら、絶交しようぜ」
「何故あたしが拓斗の庵いじめに協力しなきゃならないのだ」
「おもしろいじゃないか。子ども好きなお前はあの可愛い顔見て思わないの?泣かしてやりたいって」
「うん……まぁ、確かに思わない事もないけど、あんな性格はちょっといただけないかな」
庵が寝た後で、少々会議を行った。
というわけで、その次に朝が到来したならば、二人は一切の口を利かない事にした。
庵の前で互いの悪口を、そして短所を語り泣き崩れ、二人で喧嘩でもしてしまおうと。
なんと子供らしい発想なのだろう。まだまだ二人も童心を捨てきれないのかもしれない。
「これは一つの実験だからな、別に意図的にいじめてるわけじゃないんだぜ」
「どう言われても意図的にしか見えないんだけどね」
「うるさいなー、だから実験と言ったろ、家に帰りたいだろ」
「うん、家の事とか、庵の世話とか、身体が今にも砂になって崩れていきそう」
「……そうかい」
まだ冷たいままのジュースを飲みほして、その後、二人は少々の世間話を続けた。
「なんか最近こんなのなかったよねー」とか「学校ってどうなったの」とか「親に何も言ってない」だの。
きっと親は今必死に自分たちを探していて、そんでもって警察も頑張ってくれているかもしれない、今頃テレビで数日間放送されているところだろう。
発見が遅れれば遅れるほど、再びテレビに名前が出るぞ、なんて。
警察が必死に捜査しているのならば、自分たちの居場所ぐらい突き止めてほしいね。
そんなことより、この家テレビがない。
「んー、じゃあもう俺寝るわ……お前も早く寝ないと、ほんとに砂女になるぞ」
「安心しなよ、あたしは夜行性なんだし、コーヒー飲んじゃったし、明日は昼まで寝る予定だし」
「それは嫌だ」
どうして?
「あのガキと昼まで二人でいたくないから。あ、それなら俺も昼間で寝ればいいのか……」
「おやすみなさい」
えぇ、私は赤ん坊を泣かしたくなる人間です。
よく小さな子に凝視されるのです。無表情で。
なんとも私のよからぬ思考をすべて吸い取ってしまうかのように目を見開いてみるのです。
私が笑っても何一つ表情を変えやがらない。
近くへ寄れば自然と笑ってくれます。可愛いです。
でも、その笑顔を見ると泣かせたくなるのです。
痛めつけるのではない、泣かせたいのです。
もう私の記憶には残っていません、10年前の事です。
私には初めて弟ができたのです。
妹だったら"いちごちゃん"という名前を親に提案する予定でしたが、弟でした。
出産が近づいてからは、弟でもいいとか、健気な事をほざいていたようですが、現在になって、やっぱり妹がいいです。
いいえ、姉、それよりも兄がいいです。
そんなことはどうだっていいのですが、昔よく弟をいじめていたらしいです。
昔から腹黒かったんですよね、私って。
弟が可愛かったのか、親戚や親からわいわい騒がれる弟が妬ましかったのかは解りませんが、今とは対照的な強気な性格などからすれば後者でしょうね。
何度それで外に追い出された事でしょう。
ご近所様、10年の時を経て、伝えます。申し訳ございませんでした。
ずっと扉の前で幼い私は泣いておりました。母親が扉をあけるまで。
5分ほどだったのではないでしょうか。扉があけば「ごめんなさい」それから「わかってる?――」と反省をしておわりです。
これが弟の経験にはないのです。
もう明らかなるエコヒイキなのはなんとなく解ります。
決して私の事を母親が嫌ってる事はないのだと思いますが。
彼女は姉が叱られると思い込んでいます。
自分は一人っ子なのに我慢だの、お姉ちゃんがすることだの。
いい加減にしてください。
何度も憂鬱になりましたが、最近だいぶ安定してきました。
一週間ぐらい前に嫌になってボロボロ泣きましたが、月曜日からは少々なくらいで、いい感じです。って
なんなんでしょうね、これは。
自分でも解らなくなってまいりました。すみませんでした。
鬱病日記じゃないんだから、ね。
はい、結論的に私は赤ちゃんに意地悪して泣かせたい。