群青色と恋敵
だから昨日は一緒に帰った。
有紗は部活なんてしてないのだけど、拓斗はテニス部だ。
だから校門でずっと待っていたのだ。
下校中の生徒のほとんどが、こちらを振り向く。
その視線が痛くて痛くてしょうがなかったのだ。
あとちょっとで泣きたくなるくらいだった。
「ごめん、おまたせ」
「あ……よかった」
どうせ家は校門の前、すぐ行ったところの住宅街なわけで、わざわざ一緒に帰る必要がない。
だからこそ2人こうしてならんでいるわけだが。
もう空は群青色に染まっていた。
有紗の頬は桃色だ。いつでも頬は桃色だが、今はそれ以上。
なんで並んで歩いているのだろう、そんな事を考えると拓斗の顔なんて見れやしない。
「あ、じゃあ俺……こっちだから」
「うん、知ってる……」
「えぇと、帰るから」
「うん、察してるよ」
「……バイバイ」
「はい、また明日……」
その夜、さっきのやりとりについて考えていた。
なんだかとても幸せな状況にいたのに、もったいないことをした。
お互い照れ合っているのだろうか、なんだか寂しい感じがする。
でも、その後の言葉が嬉しかったのだ。
「明日もできれば待っててくれる?明日は部活なるべくぬけだしてくるから」
「いいよ。待ってるから部活してきなよ」
「いやぁ、用事あるかもしれないし、いっそのこと休んじゃおうかな……あ、えぇと明日」
甘酸っぱい恋というのはこういうことをいうのだろうか。
初々しいのがよくわかるが、ぎこちなさすぎて考えるとイライラしてきた。
しょうがない。素直なようで素直じゃない。
なかなか素直な面を出せないのだ。あの流れで思いだけでも伝えておけば。
群青色の空が妙にきれいであったな。まぶたが重くなってくる。
「今日は寝よう……明日もいいこと有るといいな」
そして今朝である。"いいこと"よりも悪いことのほうがさきにきてしまったようだ。
恋敵を発見。でも、どう見てもまだ自分のほうがかってる気がする。
山田真由さんはあまり性格がいいという話を聞かない。
自己中心的で、うるさくて、まぁいわゆるお節介さんな訳だけど、人によってはうけるかもしれない。
ルックスは……背は若干高めである。
きっと拓斗より高いだろう。それならば並ぶときにまだ拓斗より低い有紗のほうが綺麗に見える。
顔……有紗と真逆でそれはそれは大人っぽい。
山田さんには負けぬよう、頑張らなくてはならない。
でも、そんなこと有紗はどうでもいいと、他のことを考えていた。
今日も群青色の空で顔の赤さを隠し、気まずいけど気持ちのいい時間を過ごすのか。
あの群青色は本当にきれいだ、と