第十四章
必死の思いで親を説得した。
「友達のいとこなんだけどね、その友達がいそがしくって家に迎えてやれないんだって、だから――」
こんなでたらめな言い訳に、親は了承した。
気味が悪いほどあっさりだった。
そのかわり、ママは忙しいからちゃんと遊んであげれるんならね、と言われた。
外に戻ってみると、拓斗と庵が仲良く遊んでいた。
さっき泣いたのは、家がなく淋しいからだとリカちゃんは言った。
拓斗も小さい子が好きなのだ。
それは小学生のころから知っていた。
「ごめん、ありがとね。じゃあ、帰ろうか」
「……ママ!」
「ママ……?」
庵が言葉を発したのだ。
リカちゃんとはまた違い、甲高く透き通るここちのよい声だった。
有紗の事をママとよんだのだ。明らかにそれは間違っているが。
「パーパっ」
「……へ?」
拓斗の腕にしがみついて庵は離さない。
有紗は顔を赤くした。
機械的に言ってるのかもしれないと思ったのだが、それでも嬉しかったのだ。
無邪気な少女が帰る気になるまで、二人は立ち尽くしていた。
「へぇ、そうなんだあ」
佳苗は今日も朝から元気がいいのだ。
朝から大声で、悩みなどなさそうな人間だ。
「可愛い子?ねぇ、こんど一緒に遊ばせてよん」
「うん、喜ぶと思う」
佳苗も幼い子が好きなようだ。
彼女は一人っ子だから、幼い子の世話をやきたくなるのかもしれない。
自分も幼いころはそうだったかなぁと。
「おじゃましますー」
佳苗だ。シックなTシャツに七分丈のジーンズだ。
長い髪を振り払う姿は、乙女でありながらとても凛々しかった。
「わあ、この子がイオリちゃんなんだあ。可愛いいい」
「……」
庵は口を開かなかった。
彼女は喋れないのだ。
昨夜のママとパパは気になるところだが、それ以外なにも喋らない。
「人見知りさんかなあ?大丈夫だよ。お姉さんめげないからねん」
結局庵は口を開かなかった。
がっかりした顔で佳苗は帰って行った。
きっと色々な意味でがっかりだったのだろう。
それは、ジュースを出した時のことだ。
庵はどうやら桃色を好むらしい。
ほんのり桃色のグラスに注いだら、それで飲みたいと聞かないのだ。
佳苗がすでに口をつけ、飲んでしまったものを飲もうとするものだから。
どうしても飲みたかったのだろうか、庵はグラスを無理やり取ろうと、力任せに引っ張った。
佳苗も力を抜いていたのだ。こんな幼い子供がこのグラスをとれるのかと。
変に力を入れたせいでグラスは横転、割れ、お気に入りの佳苗の服に大きな染みが広がった。
それから寝るまで庵はずっとすすり泣きだったのだ。
なんど頭をなでたりしても泣きやみはしなかった。
泣き疲れて寝てしまった。
暗い部屋は嫌いだと昨日の夜なかも泣いていたのに、今日は暗い部屋で寝ているじゃないか。
有紗になんとなく笑みがあふれた。
ふぅ……。
やっとひと段落つきました。
なんだかダラダラとなってしまいましたね。
少なくともあと半分は続くでしょうね。
40タイトル以内に終わるでしょうか……。
なんか、アクセス解析を見るとちまちま読んでくれてる方がいるようで。
こんな駄作に付き合っていただきまして本当にありがとうございます。
できればこれからも見てやってください。
さっと読みとおすだけでもいいので><
これからどうなるかの詳細はよく考えてまでんが、頑張ります。