息の槍
教室がざわざわと。
それはまだ新品の噂話が流れたからである。
白石有紗。彼女は普通といっても、普通じゃ無いような。
でもでもごく普通のなんとも言葉にしにくい中学生である。
彼女にはずっと恋焦がれていた相手がいる。
島谷拓斗である。彼を思う気持ちは、誰よりも強いと。
彼女は誰にも言わずにひそかに感じていた。
有紗は六年半くらいだろうか。
拓斗の眼を見るたびに胸がねじれるような思いをしてきた。
「え?何なのこの騒ぎー」
「うわー、なんか意外な組み合わせだよね」
「そうかなぁ……小学校のころは仲良かったみたいだよ、幼馴染かと思ってたもん」
それは昨日の事だ。最近、有紗の機嫌はかなりいい。
じわじわと2人の距離は縮まってきているからである。
もう拓斗が有紗を好きなのは有紗も理解しているが、
素直のつもりで、でもなんだかいけない気がして、
まだ有紗の気持ちを伝えてはいない。でも、とても仲良くさせてもらっているし、
周囲から見たらまぁ、それなりに見えるかもしれない。
それでこのありさまだ。
「うわ……来たよ」
「ねぇねぇ、白石さんあの噂ほんとーなの?」
一番後ろの席。鞄をどすんと置く。
バタバタと座る。無表情のまま、人形のように。
チャックを開けた時だ。
「噂……?」
頭を若干傾けた。
あまり絡んだ事のないクラスメイトに声を掛けられて動揺したのと、
思い当たる節がすぐに浮かんで恥ずかしいのだ。
もちろん、聞きかえしたのはわざとである。
「島谷のことだよーぅ。噂、ほんとなんでしょ?付き合ってるんでしょ?」
「え……付き合っては無いよ」
「ふあぁ――、よかった」
話を聞きに来た女子のうち一人が大きな息を漏らした。
有紗の心臓には、やわらかい息の音がぐさりと刺さった気がした。
「よかったねぇ、まゆ」
「うんっ、島谷くんの事好きだもん!白石さんに取られてたら泣き崩れてたかも。はははっ」
そう言って女子の群れは去っていった。
彼女たち、気付いただろうか。私が"付き合っては無い"と言ったのを。
どうせにしろ両想いなのだけどな。
そんな言葉は刺さった気がしたものと一緒にして飲み込んだ。
はじめまして。恋愛系頑張って書いていこうと思ってます。
最初に書いた話などはもう書き飽きてしまって、ずっと放置しております。
結構飽きっぽい性格なのです。ノイトロバは一応話を最後まで考えておりますが、
途中であきないといいのですがね……。