ヤマボウシ
「八甲中の帽子道」と校歌にある道は意外にも校舎の外にあるあぜ道のことである。そんなくだらない雑学を知っているのはおそらく僕だけで、今年の夏も大勢の自転車に乗る中学生を見守ってきたのであろう。
八月十二日。少し早めに帰った僕は、ひなたに連絡する。お互い県外の大学に進学してしまったがお盆くらいなら、こちらにいるような気がして、またどこかに出かけないかとメールする。
「おひさ!元気してたか?いおり。いいよ、ちょうど今帰ってるところだから明日にでも、東部モールに行こう!」
「集合はひなたの家の前で良い?」
「うーん、なんか申し訳ないな、、、」
「どうせ、通り道だからさ、OK?」
可愛らしい承諾のスタンプを傍目に、明日のコーディネートを考えた。
まだまだ快晴青空なコンクリあぜ道を自転車で進む。ひなたの家はもうすぐそこに。
「おはよう、ひなた」
「久しぶり、いおり、また背が伸びたかな?」
「もう大学生だよ、伸びるはずないじゃん」
「いや伸びるって私だって2ミリ伸びたもん」
「2ミリって今もちびじゃん」
「もー」
くだらない会話をしながら、自転車に乗り、まだ静かに咲いているヤマボウシを見ながらモールに向かう。
ひなたとは性格も見た目も違うのにどこか通じることがあって、僕はそのつながりがいつまでも続いてほしいなって、そんな言葉が首を絞める。
なんとなく映画を見て、レストランで食べ、ゲーセン行って、まるで高校生のカップルみたいな、初心なデートコースを進んでいく。
そして、和みながら、名残りながら外に足を向ける。
夕立を避けるために寄った思い出のコンビニで、
「私たちいつまでも友達でいられるといいね。ただでさえ、変わった組み合わせなんだから、親友じゃなくても、いつも一緒じゃなくても、また会えるといいね」
夕立は去り、帰路を再びこぐ。僕たちは深いところを照らし合わさない。こういうのが良くて、良くなくて、ひなたの家につく。
「さようなら、また今度」「さようなら、また来年」
こうして、今年の夏も、僕の心残りのような片思いは萎える。あれだけ咲いていたヤマボウシも散ってしまったが、緑はまだ映えている。僕には友達という肩書だけが残る。




