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目も表情も死んでいる魔法少女が魔王の前に現れた

作者: 月森香苗
掲載日:2026/05/13

異世界恋愛カテゴリーは間違えてる気がしないでもない。

「遍く宇宙に広がるハーモニー!世界の平和を守るプリンセスガーディアン、フレッシュ・キッス・ピーチ!魔王なんて吹っ飛ばしちゃうんだからね♪」

「……そなた、言葉と表情があってないが、大丈夫か?」

「大丈夫だと思います?」

「いや、思わないが」


 死にたい……ありとあらゆる意味で死にたい……。

 そう思いながらも、私は自分に掛けられている呪いにも似た改造のせいで、こんな醜態を晒している事実を前に死ねなかった。


 私がここに来る前の世界は、魔法少女が悪と戦う世界だった。それだけなら好きにしてって思うんだけど、私は完全に巻き込まれた被害者だった。

 私にとってその世界は二つ目の世界で、一つ目は魔法少女とかはアニメの中にしかいない、地球の中にある日本で普通に生活していた中学生だった。

 それなのに、魔法少女の世界で「異世界より現れし新たなる魔法少女」として強制的に召喚され、強制的に魔法少女にされ、強制的に戦わされた。

 私の場合は世界を超えてきたからという理由で、魂を弄られて魔法少女にさせられたので、なんと、年齢制限が無かった。

 通常の魔法少女は15歳で引退できるのに、私は18歳になっても戦わされた。

 周りは若い子ばかりになって、私は「ババァなのにまだ魔法少女だって。いたーい」とか言われたけど、お前らのせいだからな!

 とブチ切れていたある日、この世界に召喚された。

 今まさに着ている、このフリフリピンクにミニスカが心を刺殺する格好で。

 丁度悪の親玉に向かって踵落としを決めようとしていたせいで、床に穴が空いたけど、そんなのこちらの都合も考えずに連れてきたせいだろ、と本気で文句を言いたくなった。

 で、私はこの世界にいる魔王を倒す為に召喚された「勇者」だそうで、場所はわかるから一人で倒してこいと放り出された。

 お前らを倒してやろうか。


 別に魔王を倒す必要性を感じずに、私はすたすたと城の壁をよじ登り、窓ガラスを叩き割って「こんにちは」をした後、フルオートで出てくる口上を死んだ目で述べた。

 もうさっさと殺して欲しい。辛い。間もなく19歳の私にこの姿は拷問だよ。せめてセクシー系とかお姉さん系ならまだしも、攫われた13歳の頃から変わらない衣装は心を容赦無く嬲っていた。


「お前、その魂どうした。おかしくないか?」

「この世界の一つ前の世界で弄られたんですよ。死にたくても死ねないし、魔法少女止められないし、辛い……」

「治してやろうか?」

「え?治せるの?本当?え、神?」

「魔王だが?」

「それはそうだけど、私にとっては救い主。何でもするから治して!あ、私をここに送り込んだ国を滅ぼすなら直ぐにやるよ?」

「国を滅ぼすのは簡単だから構わん。そうだな……何でもすると言ったな?」


 何でもするよ。土下座でも奴隷でも下働きでも何でもするよ!

 この地獄みたいな格好から解放されるならさぁ!!





「ほら、口を開けろ」

「ひぇ、ぁぅ」

「次は何が食べたい?」

「んぅ~……あの、パイ」


 死んだ目をしていた私は気づいていなかったけれど、魔王はめちゃめちゃイケメンだった。日本のアイドルとか目じゃないくらいにイケメンすぎてビビる。

 さらさらの銀髪に妖艶な紫の目。顔は目が潰れそうな位に綺麗で、側頭部から生えてる角がかっこいい。

 目の下にあるホクロがえっちすぎるお色気満点の魔王は、私を膝の上に乗せて餌付けしていた。

 私の魂は無事に魔法少女から解放されたけれど、そのままの流れで魔族とやらにされた。

 元々魔法少女になった時点で人間ではなくなったらしいので、魔族になることは難しくなかったらしい。

 そして私は魔王様のお気に入りのペットでお嫁さんになった模様。意味が分からないよ?ペットとお嫁さんって両立するの?

 私が二回も世界を超えたのは、何かどこかの神様のせいだったらしく、魔王様がこの世界の管理者の神を呼び出して確認させたところ、無断で適当に選んだらしい。

 私が最初にいた世界で私の存在は無かったことになってるらしく、これも無断。

 もうここからどこかに移動は無いらしいけれど、やらかした神は存在が消されたようだ。他の神の世界に干渉したから。私の他にも犠牲者はいたらしい。消えて正解だよ。


 で、私はこの世界で保護されることになった。

 神様曰く、この世界の魔王は必要不可欠なので、殺しても復活するし、強くてニューゲームになるから殺さない方が良いのに、人間ちゃんはおバカだから忘れる。そろそろ間引かないと。ってことらしい。

 この世界では人間ちゃんの方が悪で魔族の方が正しいらしい。魔族は世界の均衡を保つための存在。人間ちゃんはバグ。

 つまり、私はバグな人間ちゃんが生き残る為に呼び寄せた兵器だったのか。でも、この世界での正義は魔族なので、私がこちらに寝返っても問題ない。


 うーん。でも、まあ、いきなり召喚されて、来てくれてありがとーもなくここに放り投げられた恨みは忘れてないから、私が間引いて来ようか?って言ったら抱きしめて止められた。

 ペットは飼い主のそばにいろとのこと。

 ちゅうちゅうとキスをされながら言われたので、まあ、心配されてるのかな、とは思う。

 何でペットでお嫁さんにしようと思ったの?って聞いたら、「顔」だと言われた。そっかー……顔?この顔?バリバリ日本人フェイスですが?

 まあそれでもとても大事にされてるので、好きーってなるよね。チョロいだと?チョロいよ。

 だって今の私には魔王様しか頼れる人いないもの。そりゃあ依存しますよ。お膝の上で餌付けされて可愛がられるのも耐えられるよ。

 あの!地獄みたいな魔法少女スタイルから解放されたからね!


 そんな感じで、人間から魔法少女(種族)になり、魔族(種族)になった私は、魔王様から名前を貰い、デロデロに甘やかされて可愛がられている。


 なお、五年近くの過酷な魔法少女生活のせいで死んだ表情は、未だに復活していない。

ノリと勢いで書いた。

魔法少女系の口上を考えるだけで心臓が苦しくなる。

どなたか、プロ、良さげな口上を教えて。

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