目も表情も死んでいる魔法少女が魔王の前に現れた
異世界恋愛カテゴリーは間違えてる気がしないでもない。
「遍く宇宙に広がるハーモニー!世界の平和を守るプリンセスガーディアン、フレッシュ・キッス・ピーチ!魔王なんて吹っ飛ばしちゃうんだからね♪」
「……そなた、言葉と表情があってないが、大丈夫か?」
「大丈夫だと思います?」
「いや、思わないが」
死にたい……ありとあらゆる意味で死にたい……。
そう思いながらも、私は自分に掛けられている呪いにも似た改造のせいで、こんな醜態を晒している事実を前に死ねなかった。
私がここに来る前の世界は、魔法少女が悪と戦う世界だった。それだけなら好きにしてって思うんだけど、私は完全に巻き込まれた被害者だった。
私にとってその世界は二つ目の世界で、一つ目は魔法少女とかはアニメの中にしかいない、地球の中にある日本で普通に生活していた中学生だった。
それなのに、魔法少女の世界で「異世界より現れし新たなる魔法少女」として強制的に召喚され、強制的に魔法少女にされ、強制的に戦わされた。
私の場合は世界を超えてきたからという理由で、魂を弄られて魔法少女にさせられたので、なんと、年齢制限が無かった。
通常の魔法少女は15歳で引退できるのに、私は18歳になっても戦わされた。
周りは若い子ばかりになって、私は「ババァなのにまだ魔法少女だって。いたーい」とか言われたけど、お前らのせいだからな!
とブチ切れていたある日、この世界に召喚された。
今まさに着ている、このフリフリピンクにミニスカが心を刺殺する格好で。
丁度悪の親玉に向かって踵落としを決めようとしていたせいで、床に穴が空いたけど、そんなのこちらの都合も考えずに連れてきたせいだろ、と本気で文句を言いたくなった。
で、私はこの世界にいる魔王を倒す為に召喚された「勇者」だそうで、場所はわかるから一人で倒してこいと放り出された。
お前らを倒してやろうか。
別に魔王を倒す必要性を感じずに、私はすたすたと城の壁をよじ登り、窓ガラスを叩き割って「こんにちは」をした後、フルオートで出てくる口上を死んだ目で述べた。
もうさっさと殺して欲しい。辛い。間もなく19歳の私にこの姿は拷問だよ。せめてセクシー系とかお姉さん系ならまだしも、攫われた13歳の頃から変わらない衣装は心を容赦無く嬲っていた。
「お前、その魂どうした。おかしくないか?」
「この世界の一つ前の世界で弄られたんですよ。死にたくても死ねないし、魔法少女止められないし、辛い……」
「治してやろうか?」
「え?治せるの?本当?え、神?」
「魔王だが?」
「それはそうだけど、私にとっては救い主。何でもするから治して!あ、私をここに送り込んだ国を滅ぼすなら直ぐにやるよ?」
「国を滅ぼすのは簡単だから構わん。そうだな……何でもすると言ったな?」
何でもするよ。土下座でも奴隷でも下働きでも何でもするよ!
この地獄みたいな格好から解放されるならさぁ!!
「ほら、口を開けろ」
「ひぇ、ぁぅ」
「次は何が食べたい?」
「んぅ~……あの、パイ」
死んだ目をしていた私は気づいていなかったけれど、魔王はめちゃめちゃイケメンだった。日本のアイドルとか目じゃないくらいにイケメンすぎてビビる。
さらさらの銀髪に妖艶な紫の目。顔は目が潰れそうな位に綺麗で、側頭部から生えてる角がかっこいい。
目の下にあるホクロがえっちすぎるお色気満点の魔王は、私を膝の上に乗せて餌付けしていた。
私の魂は無事に魔法少女から解放されたけれど、そのままの流れで魔族とやらにされた。
元々魔法少女になった時点で人間ではなくなったらしいので、魔族になることは難しくなかったらしい。
そして私は魔王様のお気に入りのペットでお嫁さんになった模様。意味が分からないよ?ペットとお嫁さんって両立するの?
私が二回も世界を超えたのは、何かどこかの神様のせいだったらしく、魔王様がこの世界の管理者の神を呼び出して確認させたところ、無断で適当に選んだらしい。
私が最初にいた世界で私の存在は無かったことになってるらしく、これも無断。
もうここからどこかに移動は無いらしいけれど、やらかした神は存在が消されたようだ。他の神の世界に干渉したから。私の他にも犠牲者はいたらしい。消えて正解だよ。
で、私はこの世界で保護されることになった。
神様曰く、この世界の魔王は必要不可欠なので、殺しても復活するし、強くてニューゲームになるから殺さない方が良いのに、人間ちゃんはおバカだから忘れる。そろそろ間引かないと。ってことらしい。
この世界では人間ちゃんの方が悪で魔族の方が正しいらしい。魔族は世界の均衡を保つための存在。人間ちゃんはバグ。
つまり、私はバグな人間ちゃんが生き残る為に呼び寄せた兵器だったのか。でも、この世界での正義は魔族なので、私がこちらに寝返っても問題ない。
うーん。でも、まあ、いきなり召喚されて、来てくれてありがとーもなくここに放り投げられた恨みは忘れてないから、私が間引いて来ようか?って言ったら抱きしめて止められた。
ペットは飼い主のそばにいろとのこと。
ちゅうちゅうとキスをされながら言われたので、まあ、心配されてるのかな、とは思う。
何でペットでお嫁さんにしようと思ったの?って聞いたら、「顔」だと言われた。そっかー……顔?この顔?バリバリ日本人フェイスですが?
まあそれでもとても大事にされてるので、好きーってなるよね。チョロいだと?チョロいよ。
だって今の私には魔王様しか頼れる人いないもの。そりゃあ依存しますよ。お膝の上で餌付けされて可愛がられるのも耐えられるよ。
あの!地獄みたいな魔法少女スタイルから解放されたからね!
そんな感じで、人間から魔法少女(種族)になり、魔族(種族)になった私は、魔王様から名前を貰い、デロデロに甘やかされて可愛がられている。
なお、五年近くの過酷な魔法少女生活のせいで死んだ表情は、未だに復活していない。
ノリと勢いで書いた。
魔法少女系の口上を考えるだけで心臓が苦しくなる。
どなたか、プロ、良さげな口上を教えて。




