4話
カメ
聖石の祭壇:バブル・ウォーズ
雲を突くような巨塔の頂上。世界を闇に包む秘宝「月影の瞳」を前に、二つの影が対峙していた。
「ククク……ついにこの時が来た。世界は私の冷徹な美しさの前にひれ伏すのだ!」
漆黒のドレスをなびかせ、高笑いするのは悪の女帝ルナ。その隣では、巨大な陶器の浴槽に手足が生えたような怪人お風呂が、ゴボゴボと不気味な湯気を立てている。
「待て! その野望、俺が断つ!」
重厚な鎧の足音を響かせ、黄金の剣を構えた勇者カイザーが姿を現した。その背後には、彼の相棒であり、甲羅がこんがり焼けたメロンパンでできている謎の生物カメパンが、短い手足をバタつかせて控えている。
お風呂の猛攻
「お風呂、やっておしまい!」
ルナの指差しと同時に、お風呂が叫んだ。
「いい湯加減だぜぇぇ!! 必殺・バブルスプラッシュ!」
お風呂の口(蛇口)から、超高温の石鹸水が噴射される。カイザーは盾で防ぐが、あまりの熱気と滑りやすさに足元がふらつく。
「くっ、視界が……石鹸が目に沁みる!」
「カイザー、しっかりするパン! 僕の出番だパン!」
カメパンが前に躍り出た。彼は自らの背中、カリカリのクッキー生地を一枚剥がすと、それをお風呂の排水口目掛けてフリスビーのように投げつけた。
カチッ。
「な、何ィ!? 詰まった……詰まったぞおおお!」
排水を止められたお風呂は、自らの湯水の圧力に耐えきれず、みるみる膨らんでいく。
「あ、熱い、のぼせるぅぅ〜!」
お風呂は真っ赤な顔をして、そのまま塔の下へと転げ落ちていった。
月の魔力vs黄金の剣
「……使えない部下ね。だが、私一人でも十分よ!」
ルナが杖を振ると、夜空の月が赤く染まった。
「ルナティック・エンド!」
どす黒い魔力の奔流がカイザーを襲う。しかし、カイザーは剣を天に突き上げ、叫んだ。
「カメパン、合体だ!」
「了解パン!」
カメパンがカイザーの肩に飛び乗り、その糖分を魔力に変換して剣に流し込む。黄金の刃が、焼きたてのパンのような香ばしい光を放ち始めた。
「これが俺たちの絆の力だ……カイザー・メロン・ブレイク!!」
光の斬撃が赤黒い魔力を切り裂き、ルナの杖を粉砕した。
「そんな……私の美学が、パンの香りに負けるなんて……!」
ルナは光に包まれ、捨て台詞と共に夜の闇へと消えていった。
静寂が戻った塔の頂上で、カイザーは剣を鞘に収めた。
「終わったな、カメパン」
「お腹空いたパン。帰ったらジャムを塗ってほしいパン」
二人は夕日に向かって歩き出す。世界の平和は守られたが、カイザーの防具には、ほんのりと甘いバターの香りが染み付いて取れなくなっていた。
パン




