3話
カメ
黄金の甲羅と湯けむりの聖戦
オーブンの外は異世界だった
その日、カメパンは目覚めた。
といっても、パン屋の陳列棚の上ではない。見渡す限り、紫色の空と巨大なシダ植物が茂る「パンタジア異界」の森の中だった。
「ふかふか……。ぼく、焼けたのかな?」
メロンパンのような格子状の甲羅(クッキー生地)を持ち、手足はしっとりとしたパン生地。カメパンは、自分がただの菓子パンではなく、命を宿した**「ブレッド・ゴーレム」**として転生したことに気づいた。
暴君カイザーの影
この世界を支配するのは、冷酷無比なカイザー・ロール。通称、カイザー。
彼は「硬さこそが正義」と説き、柔らかいパンたちを「ふやけた弱者」として弾圧していた。カイザーの軍勢は、各地のジャムを奪い、バターの泉を枯らしていた。
「柔らかいパンに明日はない。すべては乾燥し、カチカチのラスクとなるのだ!」
カイザーの放つ「ドライ・オーラ」によって、森の小麦たちは次々と水分を失っていく。カメパンは決意した。このままでは、自分の甲羅もひび割れてしまう。
伝説の「大浴場」へ
カメパンは、カイザーを倒す唯一の手段が、世界の果てにあるという**「神の蒸し風呂」**にあると聞きつけた。
旅の途中、彼は奇妙な一行に出会った。
クロワッサン騎士(層が厚い)
ジャムばあさん(※異世界の魔術師)
彼らに導かれ、ついにたどり着いたのは、巨大な石造りの神殿。そこには、何者かが用意したかのように、なみなみと「ぬるま湯(イースト菌活性液)」が湛えられたお風呂があった。
「これだ……。ここで、ぼくの生地を極限まで発酵させるんだ!」
最終決戦、ふっくら対カチカチ
お風呂から上がり、これまでにないほどパンパンに膨らんだカメパンの前に、カイザーが立ちはだかった。
「カメパンよ。貴様のその甘い香りが鼻につくわ! デス・トースト・ビーム!」
カイザーの手から放たれる熱線。しかし、お風呂で水分をたっぷりと含んだカメパンには効かない。
「カイザー、君は忘れているんだ。本当に強いパンは、外はカリッと、中はモチモチだってことを!」
カメパンは渾身の力で跳躍した。必殺の**「タートル・メロン・プレス」**!
重厚なクッキー生地の重みと、発酵したての弾力。カイザーの硬い鎧は、その柔軟な圧力に耐えきれず、粉々に砕け散った。
戦いは終わり、パンタジアに平和な湯気が戻った。
カメパンは今も、森のどこかにあるお風呂の番人をしているという。
「次は、誰をふっくらさせてあげようかな?」
異世界の風に乗って、今日もどこかで香ばしい焼き立ての匂いが漂っている。
パン




