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カメパーク  作者: 3
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1話

カメ

転生したらスラム街だった件

「……嘘だろ、ここが異世界かよ」


ドブ川の腐臭と、焼けたゴミの煙。

カイザーは、自分の手のひらを見つめて絶句した。

かつてはエリート商社マンとして「勝つための人生」を歩んでいたはずが、目覚めればボロ布を纏ったガリガリの少年。目の前に広がるのは、ひしゃげた鉄くずと泥に塗れた家々が並ぶ**地獄の底(スラム街)**だった。


最底辺のルール


スラムには、たった一つの鉄則がある。

「持たざる者は、奪われる」


カイザーが唯一持っていたのは、死の間際に掴んでいた「高級万年筆」……に見える、魔力を帯びた謎のアーティファクト。これさえあれば、いつか成り上がれる。そう確信した瞬間、不気味な笑い声が響いた。


「おいおい、そんな綺麗なモン、ガキが持ってちゃ危ねえなぁ?」


そこに現れたのは、この地区の顔役であり、最も忌み嫌われる男――カメパン。

亀の甲羅のようなプロテクターを背負い、パンパンに膨れた腹を揺らしながら、彼は下卑た笑みを浮かべていた。


「俺はカメパン様だ。この街の『空気』を吸うには税金が必要なんだよ。そのペン、置いていきな」


カメパンの卑劣な手口


カメパンは、単なる暴力だけではない。

彼はスラムの配給品を独占し、弱者を依存させて支配する**「寄生型」の悪役**だった。


パンの毒: 彼が配る「カメパン」を食べた者は、一時的な高揚感の後にひどい禁断症状に襲われ、彼の犬となる。


甲羅の盾: 住民から巻き上げた硬貨を溶かして作った防具。物理攻撃がほとんど通じない。


「嫌だと言ったら?」

カイザーが静かに問う。


「ハッ! なら、今日からお前のメシは地面に落ちた泥水だけだ。誰も俺には逆らえねえんだよ!」


カイザーの反撃


だが、カメパンは知らなかった。

カイザーが転生前に持っていたのは、武力ではない。**「市場マーケットを支配し、敵を内部から崩壊させる」**という冷徹なまでの経営戦略だ。


「カメパン。お前はただの小悪党だ。独占禁止法も知らないような奴が、この俺に勝てると思うなよ」


カイザーは手にしたペンを地面に突き立てた。

ペンから溢れ出した魔力が、スラムの汚水を浄化し、一瞬にして**「最高級の蒸留水」**へと変える。


「な、なんだと……!?」


「お前のパンは喉が渇く。だが、俺は水を支配した。さて、住民たちがどちらを選ぶか……取引を始めようか」


混沌の幕開け


カメパンの顔が怒りで真っ赤に染まる。

スラムの支配権を巡る、元商社マンの知略と外道の暴力が激突する。


カイザーの瞳には、かつての野心が宿っていた。

このスラムを、世界で最も豊かな「帝国」に作り替えてやる。

そのための第一歩として、まずは目の前の「動く甲羅」を解体することに決めた。


「転生したらスラム街……。悪くない、ここなら誰に気兼ねなく、世界を買い叩ける」


カイザーの不敵な笑みが、暗い路地裏に響き渡った。

崩落の帝国:カメパンの逆転劇

「ハハッ! 経営戦略? 独占禁止法? ……寝言は寝て言え、ガキが!」


カメパンの野太い声が、浄化された水場に響き渡った。

カイザーが魔力で生み出した「聖水」に住民たちが群がろうとしたその瞬間、カメパンは背中の重厚な甲羅から、黒い霧のような粉末を撒き散らした。


それは、彼が長年スラムを支配するために改良し続けた**「発酵毒イースト・カース」**。

水を飲もうとした住民たちが次々と苦しみ出し、地面をのたうち回る。


「な、なんだと……!? 水を汚染したのか!」


「汚染じゃねえ、『味付け』だ。俺の許可なく美味いもんを口にする奴は、俺の胃袋の中で消化される運命なんだよ!」


知略を粉砕する暴力


カイザーは焦った。現代の知識で「需要と供給」を操作しようとしたが、ここは法も倫理もないスラム。ルールを作るのは、常に**「今、そこにいる強者」**だった。


カイザーが万年筆を振るい、防御魔法を展開しようとする。しかし、カメパンは巨体に似合わぬ速度で突進し、その硬質な腹部でカイザーを吹き飛ばした。


「ぐはっ……!」


「お前の『水』は綺麗すぎて、このドブネズミたちには毒なんだよ。俺の、カビ臭くて硬いパンこそが、こいつらの命を繋いできたんだ!」


カメパンは転がるカイザーの腕を踏みつけ、バキリと音を立てて万年筆を奪い取った。アーティファクトが放つ輝きが、カメパンの脂ぎった手に収まる。


「いいモン持ってるじゃねえか。これがあれば、スラムだけじゃねえ……上の連中も跪かせられるな」


カメパン帝国の建国


数年後。

かつてのスラム街は、巨大な**「パンの城塞」**へと変貌を遂げていた。


玉座に座るのは、贅を尽くした毛皮を羽織り、さらに巨大化した甲羅を背負う皇帝、カメパン一世。

彼の足元には、かつての「エリート」カイザーが、鎖に繋がれ、帝国の帳簿係として泥水を啜りながら計算に明け暮れていた。


「おい、カイザー。今日の『カメパン税』の収益はどうだ?」


「……前日比で、さらに30%の増加です。陛下。周辺の村々も、陛下のパンなしでは生きていけなくなっています」


カメパンは満足げに鼻を鳴らした。

彼は奪った万年筆の魔力を使い、**「一度食べたら二度と離れられない、魔力増強効果付きのパン」**を量産。それを安価で周辺諸国にバラ撒き、経済を内部から腐らせたのだ。


今や、軍隊も騎士団も、カメパンの配給が止まれば一週間で全滅する。

武力ではなく、**「胃袋」**を掴むことで、彼は世界を支配した。


結末:黄金の甲羅


「綺麗事は腹を満たさねえ。泥を食ってでも生き延びた俺が、最後に笑うのは当然だろ?」


カメパンは、金箔で塗り固められた巨大なパンを一口齧り、窓の外に広がる黒煙の街を見下ろした。

そこには、かつての「スラム」が大陸全土に広がったような、混沌と欲望の**「カメパン帝国」**が完成していた。


カイザーの知略を食らい、その上に胡坐をかく悪役。

この世界において、正義は敗れ、強欲だけが黄金の輝きを放っていた。


「さあ、祝杯だ。今日のパンは、少しばかり血の味がするぞ?」

パン

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