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脳筋戦士ぴこたん、今日もネットの罠に釣られる! 〜やらかすたびに強くなるリテラシー勇者冒険譚〜  作者: ぴこたん
第四章 上級編

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第58話 炎上ビジネス ――故意に注目を集める悪質手口


 インフォシティの南側、商店街の通りには早朝とは思えないほどの行列ができていた。

 まだ店のシャッターが開ききっていないのに、ざわざわとした熱気が街を満たしている。

 行列の先頭には、どぎつい赤色の看板が光っていた。


「なにこの看板……

 “バカでも飲めば天才になれるジュース”?」

「『ライバル商会をぶっ潰せ!』って書いてある……

 煽りすぎじゃない?」


 言葉と同時に、通りすぎる市民の眉がひそめられ、しかし足は止まる。

 嫌悪と好奇心が綱引きするように、ざわざわと人が増えていった。


「なんかムカつくんだけど……逆に気になるよな」

「これ話題になってるし……試しに買うだけならいいかも?」


 その様子を横目に、ぴこたんたちが近づいていく。


---


「ふっふっふ、なるほどぴこ。

 わざと怒らせて注目を集めてるぴこね!」


 胸を張るぴこたん。その横でミミは小さくため息をついた。


「うん……これ、炎上商法だよ。

 わざと反感を買って、“拡散”されることを狙ってるの」


 リナは腕を組み、冷たい視線で店先を観察していた。

 看板の派手さだけではなく、周囲に貼られた煽り文句、

口コミを装った紙片まで細かくチェックしている。


「短期的には話題も売上も稼げる。でもね――

 信用を削り取る危険なやり方よ。

 一度ついた不信は、後からでは取り戻せないわ」


 ルークは通りの空気を感じ取りながら、剣の柄に手を置いた。

 市民の声が次第に熱を帯びていくのを感じているのだ。


「怒りと興味を同時に煽る……その背後には必ず魔が潜んでいる」


---


その時だった。


 店の奥から、突然空気が揺れ、熱が込み上げてきた。

 看板の裏に積まれていた炎の結晶が砕け散り、

 炎をまとった影がゆらりと立ち上がる。


「ちょ、なにアレ……?」

 ミミが後ずさる。


 炎は集まり、やがて人型となった。

 燃え盛る火柱が腕となり、口元は嘲笑とも怒号ともつかない歪んだ形にねじれている。


「我は《フレイム・バズラー》。

 怒りと嘲笑を燃料に、力を増す炎上の魔――!」


 叫びとともに、群衆のざわめきが一気に熱を帯びた。


「なにあの店主!絶対おかしい!」

「でも見てよ、SNSでももうバズってるって!」


 怒りの声、皮肉の声、そして興味の声。

 そのすべてが炎の魔物の体に吸い込まれ、火勢がさらに大きくなっていく。


 《フレイム・バズラー》は笑った。

「もっと怒れ!もっと広めろ!その熱が我を無限に燃やすのだ!」


---


ルークが一歩踏み出し、声を張った。


「炎上は偶然ではない!

 仕組まれた罠――“怒りを使った集客”だ。気を抜くな!」


 リナは巻物を開き、炎の光に照らされながら数値を見せる。


「見なさい。この急激な売上の伸び……

 でも三ヶ月後には信用を失って客離れ。

 “話題性”に頼った店の末路は、いつも同じなの」


 ミミは人々の間に走り、声を張り上げた。


「みんな!一回立ち止まって!

 シェアする前に、“これ誰の得?”って考えて!」


 しかし人々の指は止まらない。

 怒りを投稿し、皮肉をつぶやき、スクショを貼る。

 その一つひとつが燃料となり、《フレイム・バズラー》の炎が巨大化していく。


---


「もう止めるしかないぴこ!」

 ぴこたんが飛び出し、全身を輝かせた。


「《心盾筋壁マインド・シールド》!」


 光の筋肉の壁が広がり、群衆を包んだ。

 怒りの炎が壁にぶつかるたび、バチッと音を立てて弾かれていく。


「ふん、そんな光で炎上は防げぬ!」

 《フレイム・バズラー》はさらに火力を上げる。


 ぴこたんは歯を食いしばった。

「うおぉぉ……思ってた以上に熱いぴこ……!」


---


「冷静さを取り戻せ!」

 ルークが剣を掲げ、《冷静結界クール・サークル》を展開した。


 ひんやりとした風が吹き、

 群衆の胸の奥にこびりついていた焦燥と怒りがすっと溶けていく。


「……あれ?なんで私、こんなに怒ってシェアしたんだろ」

「別に関係ないのに、つい……」


 ミミの声も群衆に届く。

「炎上の“熱”は魔物の餌なんだよ!

 怒りのシェアは、相手を喜ばせるだけなの!」


 一人、また一人とスマホを下ろし始める人々。


---


「今だぴこっ!!」


 ぴこたんが拳を握りしめ、地面を蹴った。


「必殺――《痕跡破砕拳トレース・クラッシュ》!!」


 光の拳が炎を割り、

 巨大な火柱を貫いて、中心にある黒い核へと叩き込まれた。


「ぐぉぉぉ……!怒り……もっと……!」

 炎の魔物はひび割れ、

 吸い込んでいた“怒り”や“嘲笑”が煙となって空へ散っていく。


 やがて魔物は、炎とともに消え去った。


---


 静寂が戻り、商店街には涼しい風だけが吹き抜けた。


「怒りで広めてたけど……結局、相手の思う壺だったんだ」

「炎上に加担するって、こういうことなんだね……」


 ルークは剣を納め、静かに告げた。

「炎上は一夜で利益をもたらすが、信用は永久に失われる」


 リナも頷く。

「個人でも企業でも、信頼こそが最大の資産よ。

 それを削る戦略は、必ず自分に返ってくる」


 ミミは拳をぎゅっと握った。

「わたし、もう怒りでリツイートしないようにする!」


「ふっふっふ、オレは筋肉でしか炎上しないぴこ!」

 ぴこたんのドヤ顔に――


「「それはそれで危ないわ!!」」


 仲間全員のツッコミが炸裂した。


---


――教訓まとめ――


今回のテーマは 「炎上ビジネス」 ぴこ。

怒りや不快感を“わざと”生み出し、話題をさらって一気に売上を伸ばす――

そんな危険な手口は、便利さよりもずっと速く広がるぴこ。


でも覚えておいてほしいぴこ。

炎上で得られるのは“一瞬の注目”だけ。

失われるのは“信頼”という、二度とすぐには戻らない大切な資産ぴこ。

怒りをシェアする手は、いつの間にか相手の利益のために動いてしまうものぴこよ。


みんなも覚えておくぴこ!

1.炎上商法は「わざと不快にする」戦略。乗らないのが最強の対策

2.怒りやモヤッと感は“誰の得か?”を一度考えてからシェア

3.短期の話題より長期の信頼がブランドを育てる

4.“共感の拡散”と“怒りの拡散”はまったく別物。後者は魔物の餌ぴこ


ルーク「怒りは鋭いが、判断を鈍らせる。冷静さを手放すな」

リナ「信頼は積み上げるもの。壊れるのは一瞬よ」

ミミ「ムッとしても深呼吸。感情はシェアしなくていいんだよ」

ぴこたん「オレの筋肉は自然発火ぴこ!……って、なんでみんな引いてるぴこ?」

「「引くに決まってるだろ!」」


---


次回予告:

都市の中心、《中央アーカイブ》に忍び寄る“見えない改ざんの影”。

書き換えられる記録、揺らぐ真実――インフォシティの基盤が今、崩れ始める。

ぴこたん一行は、嘘を量産する多頭の魔物リビジョン・ハイドラに挑む――。

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