表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
脳筋戦士ぴこたん、今日もネットの罠に釣られる! 〜やらかすたびに強くなるリテラシー勇者冒険譚〜  作者: ぴこたん
第四章 上級編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/73

第55話 ランサムウェア ――データを人質に取られる


 朝のインフォシティは、いつもなら市場の喧噪と笑い声に包まれている。

 だがこの日、街は異様な静けさに支配されていた。


「おかしいぴこ……屋台も開いてないし、商会の扉も閉まったままぴこ」

 ぴこたんが首をかしげる。


 ミミが不安そうに呟いた。

「なんか……みんな慌ててるよ」


 そのとき、役所の壁に取り付けられた巨大なスクリーンが、突如赤い文字を表示した。


 《あなたのデータは暗号化された。解放が欲しければ、暗号通貨で身代金を支払え》


 市民たちは悲鳴を上げる。

「大事な契約書が開けない!」

「研究データが全部見えなくなった!」

「取引記録も消えたら商会が潰れる!」


「な、なにぴこ!?

 オレの筋肉写真フォルダも……人質に取られてるぴこーー!?」

 ぴこたんが顔を真っ青にして叫ぶ。


 広場の中心に、黒い霧が渦を巻いた。

 やがてその中から幽鬼のような姿が現れる。

 体は鎖に覆われ、顔は暗号化された鍵穴の仮面。


「我は《ランサム・ファントム》。

 お前たちの大切な記録を鎖に閉ざした。

 解放が欲しければ……支払え」


 声は重く、冷たく、街全体を震わせた。


 ルークが剣を構え、険しい目で言った。

「これはランサムウェア……

 データを人質にとって金を要求する卑劣な手口だ」


 リナは巻物を広げ、真剣な声で続けた。

「支払っても返ってくる保証はないの。

 むしろ“払う人”がいるから被害が増える」


「でも……仕事が止まったらどうすればいいの!」

「思い出の写真も全部なくなっちゃう!」

 市民たちは泣き叫び、絶望の色が広がっていった。


 《ランサム・ファントム》は高らかに笑った。

「支払え、支払え。

 お前たちの恐怖と焦りが、我を強くする!」


 鎖が地面から伸び、市民の端末や書類を次々に絡め取る。

「助けてくれ!」

「全部暗号化されちゃう!」


 ミミは震えながらも前に進み出た。

「こんなの……卑怯だよ!」


 ルークは冷静に言った。

「感染経路を突き止める。まずは拡散を防がなければ」


 彼は剣を掲げ、

「《痕跡解析トレース・スキャン》!」

 を発動した。


 光が街を走り抜け、ファントムが送り込んだ経路を浮かび上がらせる。

「……やはり。偽の請求書メールに仕込まれていた」


 リナは別の巻物を開いた。

「大丈夫。事前に《無垢保存バックアップ》をしてある商会もあったはず」


 巻物から光の書庫が現れ、暗号化された契約書の“コピー”が取り出される。

 書庫の光は揺らめきながら、感染前の状態のデータを次々と呼び戻していく。


 しかしファントムは鎖をうねらせ、ぴこたんの端末を捕らえた。

「筋肉フォルダ……人質に取ったぞ!」


「やめろぴこー!!」

 ぴこたんは涙目で叫び、力任せに鎖を引きちぎろうとするが、暗号化の鎖はびくともしない。


「ぴこたん!」

 ミミが駆け寄る。

「大事なものを人質にされても、慌てて“払っちゃダメ”なんだよ!」


「でも……筋肉が……!」

 ぴこたんは半泣きで震えている。


 そのとき、広場の市民たちも声をあげ始めた。

「そうだ……支払っても戻る保証はない」

「払わなきゃ、犯人の思い通りにならない!」


 ミミは胸に手を当て、そっと目を閉じる。

 そして、みんなの言葉をすくい上げるようにして両手を広げた。

「《市民共鳴シビック・レゾナンス》……!」


 ミミの《市民共鳴》が、広場中の決意を一つに束ねる。

「支払わない! 私たちは脅しには屈しない!」

 その声が光となって広場を満たし、ファントムの鎖をじりじりと弱めていく。


「バカな……!」

 ファントムが怒り、全身の鎖を振り回した。

 広場を覆う暗号の波が襲いかかる。


「ぴこたん!」

 ルークが叫ぶ。


「任せるぴこ!」

 ぴこたんが全力で筋肉を膨らませ、

「《心盾筋壁マインド・シールド》!」

 を展開する。


 光の筋肉の壁が広場を包み、暗号の波を押し返した。


 リナは最後の巻物を掲げる。

「《無垢復元ロールバック》――バックアップと更新こそ、本当の解放よ!」


 光の書庫から、街全体の“昨日の姿”が呼び戻される。

 感染前に保存されていたデータたちが光の粒となって舞い戻り、鎖に閉ざされたファイルを次々と上書きしていく。


 ファントムの体に深いひびが入り始めた。

「ぐっ……ぐおおおお……!」


「今だ! ぴこたん!」

 ルークが叫ぶ。


「必殺――《痕跡破砕拳トレース・クラッシュ》!!」


 ぴこたんの拳がファントムを直撃し、暗号の鎖は粉々に砕け散った。


 黒い霧が晴れ、広場に静寂が戻った。

 市民たちの端末には次々とデータが戻り、歓声が上がる。

「開ける! 戻ってきた!」

「やった……商会が救われた!」


 ルークは剣を納め、厳しい声で告げた。

「覚えておけ。バックアップこそ最大の防御だ」


 リナは頷き、補足する。

「不審なメールや添付を開かないこと。

 システム更新を怠らないこと。

 マルウェリナの時と同じ――どれも被害を防ぐ大事な手段よ」


 ミミは胸を撫で下ろした。

「人質にされても、慌てて支払わない勇気が必要なんだね」


 ぴこたんは自分の端末を掲げ、涙ぐみながら叫んだ。

「オレの筋肉フォルダ……守られたぴこーー!!」


 仲間たちは一斉にツッコんだ。

「そこかよ!」


 広場に笑いが戻り、市民たちは再び仕事へと戻っていった。


――教訓まとめ――


今回のテーマは「ランサムウェア(データを人質にする攻撃)」ぴこ。

便利になった世界ほど、データは“資産”になり、その資産を狙う闇の手口も高度化するぴこ。

ランサムウェアはまさにその象徴で、人の恐怖につけ込み、混乱させて金を奪う卑劣な攻撃ぴこ。


被害に遭った瞬間は頭が真っ白になるけど、そこで“払う”を選んでしまえば――

犯人を強くし、同じ手口を広げる燃料になってしまうぴこ。

だからこそ、日頃の備えと冷静な判断が何より大事ぴこ。


みんなも覚えておくぴこ!

1.ランサムウェアはデータを人質に取る攻撃。支払っても戻る保証はない

2.バックアップこそ最強の盾。定期的・自動での保存が命を守る

3.不審なメール・添付・リンクは開かない(侵入口の大半はここ)

4.OSやアプリの更新は必須。古いままは扉を開けっぱなし

5.被害に遭っても“慌てて支払わない”。専門機関に相談し、冷静に対処


ルーク「恐怖に揺さぶられてはいけない。理性こそ最大の武器」

リナ「契約もデータも、守る仕組みは“日常の習慣”に宿るの」

ミミ「怖くても、声を上げれば助け合える。ひとりじゃないよ」

ぴこたん「オレの筋肉フォルダは絶対に守るぴこーー!!」

「だから大事なのはそこじゃないと言ってるでしょ!」


次回予告:

見えない“盗み見”の魔手がインフォシティを包む。

流れる視線と追跡の気配――ぴこたんたちは、密かに狙う“覗きの術”の正体に迫る……。

読んでくれたおぬしたち、改めてありがとうぴこ!

実はこの話、 第6話『セキュア亭の戦い』で登場した艶魔マルウェリナ編の“復習編” も兼ねているぴこ。

あのときは添付ファイルからの感染だったけど、今回はさらに一歩進んで、

「暗号化して身代金を要求する」タイプの攻撃を深掘りしたぴこ。


ネットの世界では

・クリックひとつ

・添付ひとつ

・更新をサボった一日


……その“すき間”を狙って、こういう影が忍び込むぴこ。


でも大丈夫ぴこ。

物語の中と同じように、現実でも 知識と習慣 が最大の防御になるぴこ。


今回の話が、

「バックアップしとくか……」

「このメール、ちょっと怪しいな」

って思うきっかけになったら嬉しいぴこ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ