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脳筋戦士ぴこたん、今日もネットの罠に釣られる! 〜やらかすたびに強くなるリテラシー勇者冒険譚〜  作者: ぴこたん
第三章 社会編

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第47話 プライバシーと監視社会 ――便利と監視は表裏一体


 インフォシティの朝は、まるで未来の見本市のように華やかだった。

 大通りには新しい魔導ゲートが設置され、通り抜けるだけで「顔認証決済」が自動で完了する。

 顔認証ゲートの上に、うっすら“本日もご協力ありがとう”の文言。

 小さな注記に『拒否は市庁舎窓口で申請可(平日10–12時)』とあった。

 

 財布もカードもいらない。

 さらに、街路灯には「安全ナビ水晶」が取り付けられ、

市民の移動ログを解析して「危険な通りは避けてこちらへ」と優しく誘導してくれる。


「おぉぉぉ!すごいぴこ!

 財布いらず、並ばず、無駄な寄り道もナシ!

 オレの筋肉のように効率的ぴこ!」

 ぴこたんは筋肉を震わせながら、ゲートを何度もくぐっては「決済完了」の光を浴びて喜んでいた。


「……なんか便利すぎて逆に怖いんだけど」

 ミミは眉をひそめて通りを見渡す。

「だって、どこに行ったか全部記録されてるんだよ?

 今朝、私がパン屋に寄ったのも“履歴”になってるんでしょ?」


 リナは顎に手を当て、商人らしい冷静さで答える。

「その通り。

 監視は最初“安全”や“便利”のために導入される。

 でも、一度広がった網は縮まらない。

 商売でも値上げは簡単でも、値下げは難しいでしょう?」


 ルークは剣を杖のように突き立てて言う。

「集められた情報は必ず“誰か”が見る。

 善意の監視者である保証はない」


---


 広場に群衆が集まり、次々とゲートを通っては「おお!」と歓声を上げている。

「便利だ!」「待ち時間ゼロだぞ!」

「これで財布を盗まれる心配もない!」

「子どもや老人も安心ね!」


 ぴこたんはすっかりご機嫌で、腕をぶんぶん振り回した。

「これぞ筋肉のごときサービスぴこ!

 未来はもう始まってるぴこー!」


「ぴこたん、ちょっと浮かれすぎ」

 ミミは小さくため息をついた。


---


 そのとき、空が暗く覆われ、巨大な影が広場を覆った。

 頭上に浮かんだのは、無数の瞳と水晶レンズを持つ魔物――《監視の眼オーバーウォッチャー》。

 瞳は全方位を睨み、レンズは常に回転し、通りを歩く市民を逐一スキャンしていた。


「対象:商人カール。

 午前7時に酒場前を通過。信用スコア:72」

「対象:学生リナ。

 昨夜、門限違反。信用スコア:54」

「対象:ぴこたん。

 プロテイン購入検索回数:27。筋肉指数:∞」


「うわっ!?オレの筋肉指数までバレてるぴこ!?」

 ぴこたんは慌てて胸を隠したが、もう遅い。

 周囲の市民がクスクス笑っている。


---


 オーバーウォッチャーの瞳が輝き、街全体に“市民スコア”が投影された。

 一人ひとりの名前の横に、点数が表示されていく。

「スコア算出要素:

 行動ログ、購買履歴、発言傾向、

 交友グラフ、深夜外出回数(重み×1.3)」

「信用スコア85以上:

 安全通路・割引優遇」

「信用スコア60未満:

 特定サービス制限・割引停止」


「えっ、そんな……」

 ある女性が肩を落とす。

「昨日ネットで批判コメントを書いただけなのに、スコアが下がってる……」


 別の男性が怒鳴った。

「オレのローン申請が拒否されたのはこれのせいか!」


 群衆がざわめき、広場の空気は一気に不安と動揺で満ちた。


---


 ミミは震える声で叫んだ。

「これじゃ……自由がどんどんなくなっちゃう!

 便利なのはいいけど、監視されすぎだよ!」


 ルークが剣を掲げ、低く呟いた。

「《監視網可視サーベイランス・マップ》!」


 空に光の糸が広がり、市民の行動履歴が網のように浮かび上がる。

 パン屋に寄った、誰と会話した、どの店で立ち止まった

――すべての痕跡が一本の糸にまとめられ、網に絡め取られている。


「見ろ。どこまで記録され、どう使われているか……」

 ルークの声に、群衆は息を呑んだ。


---


 リナが前に進み出る。

「便利さと安全を得るために、どこまで委ねるか。

 どこからは拒否するか。

 その線引きを決めるのは市民自身よ」


「でも……オレはもう便利に慣れちゃったぴこ……」

 ぴこたんは葛藤しながら拳を握った。

「財布いらずも安全ゲートも……

 全部捨てるなんて無理ぴこ!」


「捨てなくてもいい」

 おぬしが答える。

「大事なのは、“全部差し出す”か“選んで渡す”かだ」


---


 その瞬間、オーバーウォッチャーが咆哮した。

「愚かな市民よ!

 便利と安全の代償は“完全なる監視”!

 拒む者は危険因子として排除する!」


 瞳から放たれた光線が群衆を照らし、スコアの低い人々に赤い烙印が刻まれていく。

「信用スコア52。購買制限」

「信用スコア41。公共交通使用不可」


「やめろおおおお!!」

 ぴこたんが立ち上がり、筋肉を隆起させた。

「オレの仲間を勝手に分類するなぴこー!」


「ぴこたん、今こそ!」

「わかったぴこ!必殺――《心盾筋壁マインド・シールド》ッ!!」


 筋肉の壁が光を反射し、監視の光線を跳ね返す。

 反射された光がオーバーウォッチャー自身を照らし、無数の瞳が一斉にまぶしさにひるむ。


「ぬぐおおおっ!?

 監視されるのは我の役目ではない……!」

 魔物は断末魔を上げ、水晶のように砕け散った。


---


 静けさが広場に戻った。

 市民たちは互いに顔を見合わせ、安堵の息をついた。


「……便利は大事。でも全部差し出すのは怖い」

「自分で選べるようにしなきゃな」


 ルークは剣を収めて言った。

「便利と監視は表裏一体。大事なのは、コントロールだ」


 ミミは小さく笑って言う。

「安心も自由も、どっちも欲しいんだもんね」


 リナは真剣に告げる。

「“便利さ”をタダで得ているように見えて、

 実は“自由”で払っているのかもしれない。

 だからこそ、自分の線引きを決める必要があるのよ」


 ぴこたんは胸を張って言った。

「ならオレは筋肉だけで生きるぴこー!」

「それは無理!!」

 全員のツッコミが響き、広場に笑いが戻った。


---


――教訓まとめ――


今回のテーマは「プライバシーと監視社会」だったぴこ。

便利さって、まるで筋肉ぴこね。

鍛えればどんどん強くなるけど、使い方を間違えると自由を縛る鎖にもなるぴこ。

インフォシティの“監視の眼”は、実はおぬしの心の中にもあるかもしれないぴこ――

「安心」と「自由」、どっちを選ぶかじゃなく、どうバランスを取るかが本当の強さぴこ!


みんなも覚えておくぴこ!

1.便利な機能の裏には、必ずデータの流れがあるぴこ。

2.「安全のため」と言われても、どこまで許すかは自分で決めるぴこ。

3.同意画面や設定項目を一度見直して、自分の線引きを明確にするぴこ。

4.“全部差し出す”ではなく“選んで渡す”。その一手が、安心と自由の両方を守るぴこ!


ルーク「監視も、光の届くうちは制御できる。放置が闇を呼ぶ」

リナ「情報を渡すのも契約。『選んで渡す』を習慣にしましょう」

ミミ「安心も便利も大事。でも“気づく目”を持つことが、ほんとの安心だよ」

ぴこたん「オレの筋肉、監視も防御も自己管理もオールインワンぴこー!」

「いや、筋肉にプライバシー設定はないから!」ミミのツッコミが朝の街に響いたぴこ。


---


次回予告:

情報が光なら、偏りは影――。

その影がどこまで広がるかを、ぴこたんたちはまだ知らない。

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