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脳筋戦士ぴこたん、今日もネットの罠に釣られる! 〜やらかすたびに強くなるリテラシー勇者冒険譚〜  作者: ぴこたん
第三章 社会編

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第38話 いいねの牢獄――止まらない快楽


 鏡の回廊を打ち砕いた後も、空気には妙なざわめきが残っていた。

 広場の片隅で砕け散った鏡の破片が光を放ち、ひとつに集まっていく。

 やがて、それは黒い枠の魔導端末

――スマホに似た不思議な道具となり、ぴこたんの手の中に収まった。


「おぉっ!?なんだこれ……」

 驚く間もなく、端末が震え、甲高い音を響かせる。


 ピロンッ!ピロンッ!


 画面には文字が次々と流れ出す。

『ぴこたんの筋肉最高!』『胸板厚すぎ尊い』『今日も腕が光ってる!』


「お、おぉぉぉ!?すごいぴこ!

 見ろおぬし、世界中がオレを崇めてるぴこぉぉ!」

 ぴこたんは目を輝かせ、端末を抱きしめる。

 筋肉をほめられるたびに頬がゆるみ、腕をぶんぶん振り回してマッスルポーズを決めた。


「ちょっと……何これ。私の端末にも……!」

 ミミの手元にも小さな鏡が変化して、色鮮やかな掲示板を映し出していた。

『ミミちゃん可愛い!』『ミミ様しか勝たん!』『推し!』

 目を丸くしたミミは、夢中でコメントを追い始める。

「わぁ……!すごい、すごい!

 私こんなに人気者だったの!?返信しなきゃ……!」


---


 数時間後。

 気づけば夕陽が沈み、広場の屋台はすっかり片づけられていた。

 だがぴこたんとミミはまだ端末に釘付けだ。


「やばいぴこ……筋肉投稿に“いいね”が千件超えたぴこ!」

「返信しても返信しても、また新しいコメントがつく……止まらない!」

 二人の目は赤く充血し、足元には冒険の装備が散らばったまま。

 リナは腕を組んでため息をつく。

「商会の伝票、もう三つも期限を過ぎてる……!

 これじゃ信用を失うわ」

 ルークも険しい顔だ。

「鍛錬の時間をすべて奪われている。これでは剣が錆びる」


 おぬしは二人を揺さぶった。

「ぴこたん、ミミ!いい加減やめろって!」

 だが返事はない。

 通知音が鳴るたびに、二人の指は自動的に画面をなぞっていた。


---


 そのとき。

 鏡の回廊の奥から、ひときわ艶やかな笑い声が響いた。


「うふふ……やっぱり、人は“快楽”に弱いのね」


 姿を現したのは、きらびやかなドレスに身を包んだ魔女のような女。

 指先からは光の糸が伸び、端末とぴこたんたちを繋ぎ止めている。

 彼女の名は――《囁きの魔女リコメンダ》。


「私はあなたの欲しいものを次々に届けてあげる。

 “いいね”も“褒め言葉”も、永遠に……」

 彼女が呟くたびに、画面は新しい投稿で埋め尽くされる。

「終わりなんてないの。もっと、もっと、あなたは欲しがるわ」


 両手をかざすと、魔女の周りに情報の奔流が渦を巻いた。

《無限スクロール》――どこまでも続く果てしないページ。

《通知連鎖》――途切れることのない着信音。


 ぴこたんとミミの瞳は完全にその渦に囚われていた。


---


「ぴこたん!」

 おぬしは必死に叫んだ。

「筋肉って、休む時間があるから育つんだろ!」

 その言葉に、ぴこたんの指が一瞬止まる。

「……や、休む……?」


 ルークも剣を構えて声を張り上げる。

「鍛錬も同じだ。剣は休ませねば折れる。

 鍛えと休養のバランスを失えば、戦士は自滅する!」


「私も……」ミミが小さく呟いた。

「可愛いって言われ続けるの、最初は嬉しかったけど……

 だんだん空っぽになってく……。

 叱ってくれる人も、ツッコミもないなんて、つまらないよ……」


 その声に呼応するように、端末の画面に小さなひびが走った。


---


「やめろ……!私の甘美な世界から逃げる気!?」

 リコメンダが怒りの叫びをあげる。

 光の糸がさらに強く仲間たちを絡め取ろうとする。


 だがぴこたんは顔を上げ、拳を握りしめた。

「オレは……批判も筋肉に必要だって学んだぴこ!

 快楽だけじゃ鍛えられない!

 なら、筋肉パンチで時間を取り戻すぴこ!」


「必殺――《時断筋砕タイム・ブレイカー》!!」


 拳が放たれると、周囲の時計が止まったように静寂が訪れ、

次の瞬間には端末ごと光の糸を粉砕していた。

 リコメンダは悲鳴をあげ、情報の渦に飲み込まれ消え去る。


---


 やがて、仲間たちは広場に座り込んでいた。

 夜は更け、静かな風が頬をなでる。


「はぁ……現実に戻ってきた……」

 ミミは額の汗を拭った。

「“やめられない”って、本当に怖いんだね」


 リナは真剣な顔で言う。

「仕事も人間関係も、現実をおろそかにしてしまう。

 依存は生活を壊すわ」

 ルークも頷く。「己を律すること、それが真の強さだ」


 ぴこたんは筋肉をぐっと見せつけた。

「うむ!

 筋肉も情報も、休ませるのが大事ぴこ!過負荷はケガのもとぴこ!」


「それは……ちょっと違う気もするけどね」

 ミミが笑い、皆で顔を見合わせた。

 笑い声が広場に広がり、ようやく心の平穏が戻ったのだった。


---


――教訓まとめ――


今回は「SNS依存症」がテーマだったぴこ!

褒められるのは気持ちいいけど、そこに“時間”と“心”を全部あげちゃうと、いつの間にか筋肉も現実も萎んじゃうぴこ。

いいねより、いい眠り。これが真のマッスルバランスぴこね!


みんなも覚えておくぴこ!

1.SNSの「無限スクロール」と「通知連鎖」は、意図的に人を縛る設計ぴこ。

2.「やめたいのにやめられない」なら、依存のサインぴこ!

3.スマホを置いて、現実の空気や人の声を感じる時間を作るぴこ。

4.筋肉も情報も、休ませると強くなる。過負荷はケガと後悔のもとぴこ!


ミミ「“通知オフ”って、意外と勇気いるけどスッキリするね」

リナ「SNSも商売も、ペースを守るのが長続きの秘訣よ」

ルーク「剣も心も、鍛えすぎれば折れる」

ぴこたん「うむ!オレは今日から“デジタル筋休日”ぴこ!」

「……つまり寝落ちね」


---


次回予告:

SNSの光が消えたあとに残るのは、静かな闇。

誰かの言葉が、誰かの心を刺す。

その“投稿ボタン”を押す指の先に――刃がある。

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