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脳筋戦士ぴこたん、今日もネットの罠に釣られる! 〜やらかすたびに強くなるリテラシー勇者冒険譚〜  作者: ぴこたん
第三章 社会編

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第37話 フィルターバブル ――偏った情報しか見えなくなる


 評議選の余韻が残るインフォシティの広場。

 群衆は去り、屋台も片づけられた後なのに、空気にはまだざわざわとした熱が残っていた。

 ぴこたんは胸板を叩きながらドヤ顔だ。


「見たかおぬし!

 オレの筋肉発言で群衆を冷静にさせたぴこ!」

「いやいや、筋肉は関係なくて検証リストの効果でしょ」

 ミミが呆れ顔でツッコミを入れる。

「結果オーライだが、次に備えねばならんな」ルークが真剣に言う。

 リナは商会から届いた新しい契約書を抱え、

「まだ市場も混乱してるの。冷静な判断材料が必要よ」と眉を寄せた。


 そのとき、広場の片隅に、奇妙な建造物が出現した。

 それは銀色の鏡が幾重にも連なり、迷路のような回廊を形成している。

 光が反射して目がくらむほど美しく、同時にどこか不気味だ。


「な、なんだあれは……?」おぬしが目を細める。

「鏡の……回廊?」ミミは呟いた。


---


 ぴこたんは興味津々で踏み込んでいった。

 すると目の前の鏡に、大きく輝く文字が浮かび上がる。


『筋肉こそすべて!世界はお前の筋肉を待ち望んでいる!』


「おぉぉぉ!?ほめられ筋肉記事だらけぴこ!!」

 さらに別の鏡には、『ぴこたんの腕は太陽を凌駕する』、

『ぴこたんは選挙で当選間違いなし』とまで出てくる。

 ぴこたんは大興奮でマッスルポーズを連発。


 ミミも隣の鏡を覗き込んで目を丸くした。

 そこには『ミミちゃんかわいい』『ミミ最高!人気No.1!』と書き連ねられている。

「えっ……私、こんなに人気者!?すごーい……」

 思わず頬がゆるむ。


 ルークが覗いた鏡は、彼の戦術や剣技を絶賛する記事ばかり。

『ルークの戦法こそ絶対正義』『彼の戦略は無敗』――。

 冷静なはずのルークの眉も、わずかに誇らしげに動いた。


「これは……都合の良いことばかりが並ぶ鏡だ」リナは青ざめる。

「見て。市場予測まで“好景気”しか映ってない。

 これじゃ危ない投資をしてしまうわ……」


---


 回廊の奥から、低く笑う声が響いた。

「人は心地よい言葉を欲する。

 ならば私は、それだけを映してやろう」


 鏡が歪み、巨大な怪物が姿を現した。

 全身が鏡の破片でできたような体。

 無数の目が光を反射し、泡のような膜をまとっている。

《幻影の支配者バブルミラー》――。


「ここは“泡の世界”。反対意見も、都合の悪い真実も、すべて遮断する。

 お前たちは賛美と快楽だけを受け取り、やがて自分で考える力を失うのだ!」


 そう言うと怪物は両腕を広げ、仲間たちをそれぞれの泡に閉じ込めていく。

 ぴこたんの泡には筋肉称賛記事、ミミの泡には可愛いコメント、

ルークには称賛の戦術解説、リナには楽観的な経済予測。

 外の声は遮断され、耳には心地よい言葉だけが響いた。


---


「おぉ……最高ぴこ……世界中がオレを求めてるぴこ……」

 ぴこたんは酔いしれるように目を閉じる。

「私ってこんなに人気あるんだ……」ミミの頬もゆるんでいる。

 ルークすら「私の戦術は完全無欠……」と呟きかけた。


 だが、リナだけは必死に首を振った。

「違う……これはおかしい。

 市場に悪い知らせがひとつもないなんてあり得ない!」

 彼女は泡の中で拳を握り、外の仲間に必死に声を届けようとする。

「快楽だけじゃ判断を誤る!

 反対意見や異なる声があってこそ正しい選択ができるの!」


 微かにその声が届き、ミミは目を開いた。

「……でも……なんか寂しい。

 誰も私を叱ってくれない。

 ツッコミがない世界なんて、楽しくない……」


 ルークも頭を振る。

「称賛ばかりでは剣が錆びる。鍛えられぬ戦士は弱者だ」


 そしてぴこたんの胸に、熱い火がともった。

「オレは筋肉が否定されてもいいぴこ!

 批判があるから鍛えられるんだ!

 筋肉は負荷で成長する!なら心も同じぴこ!」


---


「ならば出てこい!《視界均衡バランス・ビュー》!」

 おぬしが術式を放ち、泡の壁に裂け目を作った。

 そこから反対意見や異なる情報が光の矢となって差し込む。


「ぴこおお!今こそ筋肉で泡を破るぴこ!」

 ぴこたんは拳を握りしめ、必殺技を叫ぶ。

「必殺――《泡破筋撃バブル・ブレイク》!!」


 筋肉の力で振り下ろされた拳が泡を打ち砕き、無数の鏡が粉々に砕け散る。

 バブルミラーは断末魔をあげ、泡となって消えた。


---


 広場には再び雑多な声が戻る。

「いや、あの候補者には欠点もあるぞ」「でもこの政策は評価できる」

 意見が飛び交い、喧嘩腰ではなく議論が生まれていく。


 リナは胸をなで下ろした。

「不快でも、反対意見は大事。

 市場も政治も、異なる声があるから健全なのよ」

 ミミも笑う。

「チヤホヤされるだけより、ツッコミがあった方が楽しいね」

 ルークが頷く。

「光と影、賛否あってこそ真実は形を持つ」


「うむ!筋肉は賛否両論あってこそ輝くぴこ!」

「それは違う!」

 仲間たちの総ツッコミが響き、広場は笑いに包まれた。


 だがその笑い声の奥。

 砕け散った鏡の破片が集まり、ひとつの回廊を作り始めていた。

 そこでは“好みに合う情報だけを映す鏡”がさらに複雑に絡み合い、

迷路のように反射を繰り返している。

 次なる罠――《鏡の回廊》はまだ完全に消えてはいなかった。


---


――教訓まとめ――


今回は「フィルターバブル」の罠だったぴこ!

褒め言葉ばかりの世界は心地いいけど、それは“情報の筋トレ”を止めてしまうぴこ。

負荷=反対意見があるからこそ、心も知識も鍛えられるんだぴこ!


みんなも覚えておくぴこ!

1.ネットは自分の好みに合わせて情報を見せる――それがフィルターバブルぴこ。

2.快い言葉ばかりを浴びていると、偏りが生まれて判断力が鈍るぴこ。

3.あえて反対意見や別の視点を読みに行くことで、バランスが整うぴこ。

4.批判や異論は敵じゃない。成長の負荷だと思って受け止めるぴこ!

5.“心地よい情報”より“確かな理解”を選ぶ――それが真のマッスルリテラシーぴこ!


リナ「異なる声があるから、市場も回るの」

ルーク「賛否があるからこそ、真実が磨かれる」

ぴこたん「うむ!オレは筋肉にも反対意見ウェルカムぴこ!」

ミミ「まずは鏡の前で自分にツッコミ入れなよ」


---


次回予告:

鏡の回廊が映し出す“もうひとつのインフォシティ”。

そこに囚われたのは、真実の写し身か――それとも、作られた自分自身か?

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