第4話 クラッカーズ襲来 ――奪われた“muscle123”
インフォシティの朝は、今日もざわめきで始まる。
魔力を帯びた光の掲示板には無数の広告が流れ、商人たちの声が飛び交い、冒険者たちが酒場で次の依頼を探していた。
その一角の宿屋のテーブル。
ぴこたんは水晶板を三枚並べ、まるで豪華な料理でも見せびらかすようにニヤニヤしていた。
「ふふん……オレ様の《ツイッ塔》アカウント、冒険者ギルドの口座、そして筋トレ記録アプリ……全部ログイン完了ぴこ!」
「……なんか同じパスワード入力してなかったか?」とおぬし。
ぴこたんは胸を張った。
「そうだぴこ!全部“muscle123”だ!これで覚えやすいし、最強ぴこ!」
「おいおい、それ大丈夫か?」
「大丈夫に決まってるぴこ!同じ鍵を使えば忘れない!それこそ脳筋式効率化ぴこおおおおぉぉぉ!」
ドヤ顔のぴこたんは、ジョッキをぐいっと飲み干した。
おぬしはため息をつくしかなかった。
「……絶対そのうち痛い目見るぞ」
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その夜。
インフォシティの地下。
ひび割れた石壁に囲まれた暗い空間で、影の盗賊団「クラッカーズ」が蠢いていた。
リーダー格の男は、狐の仮面を被り、怪しい笑みを浮かべている。
「よぉし……とある小さな掲示板サイトをハッキングしたら、面白いものが流れてきたぞ」
「な、なんです?」と部下。
「“muscle123”だ」
「へへっ、なんだその脳筋パスワードは……」
「いや、これがぴこたんってやつの全ての鍵らしい。よし、使わせてもらおうじゃないか」
盗賊団は一斉に笑い声を上げた。
闇に響くのは、不気味で歪んだ嘲笑だった。
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翌朝――
ぴこたんは宿屋の一階の酒場に隣接する広場に出て、《ツイッ塔》を開いた。
「よっしゃー!今日も筋トレ記録を上げて、フォロワー爆増ぴこ!」
……が、画面には見慣れぬ投稿が並んでいた。
『筋肉を増やしたいなら、こちらの怪しいサイトに登録を!』
『ぴこたん、借金申し込み完了しました!』
『マッスル詐欺広告で今すぐ儲かる!』
「な、なななな……なにこれぇぇぇぇ!?」
通りすがりの冒険者たちがざわつき始める。
「ぴこたんが詐欺広告出してるぞ!?」
「借金!?まさかギルドの口座まで!?」
おぬしが駆け寄る。
「ほら見ろ、言っただろ!パスワード使い回しのせいだ!」
「ひぃぃぃぃ!?オ、オレのマッスル人生がぁぁぁ!!」
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その時だった。
カン、カン、カン……。
金属を叩く音と共に、黒いフードの盗賊たちが現れる。
腰に鍵束をじゃらつかせ、手には怪しい呪符を握っている。
「ククク……我らクラッカーズ団。ひとつの鍵でお前の全てを頂く!」
リーダーの狐仮面が前に出て、冷たい声を響かせた。
「“muscle123”……お前の甘い習慣が、我らのごちそうよ!」
「うわあああ!?オレの鍵が……バレバレぴこぉぉ!」
ぴこたんは慌てて剣を抜いたが、盗賊団は次々とアカウントに侵入し、ぴこたんの顔で偽の発言を繰り返した。
広場の掲示板に赤字で書き込まれる――
『ぴこたんは今日からマッスル詐欺師です!』
「ぎゃあああああ!?オレの信用が燃えてるぴこおおお!!」
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仲間たちが駆けつける。
ルークが剣を抜き、盗賊団を牽制する。
「ぴこたん!聞け!同じパスワードを色んな場所で使えば、ひとつ破られただけで全滅だ!」
「な、なんだとぉ……!?」
「家も倉庫も宝箱も、全部同じ鍵で開くようなもんだよ!」ミミがひらひらと飛びながら皮肉を言う。
「そりゃ泥棒にとって天国でしょw」
おぬしも声を張る。
「大事なのは“強力でユニークなパスワード”をサービスごとに作ること!そして二段階認証だ!」
「に、にだんかい……?」
「つまり二重の鍵をかけるんだよ。ひとつ突破されても、もうひとつ守りがある」
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しかしクラッカーズ団は攻撃の手を止めない。
ぴこたんのSNSにさらにデマを書き込み、ギルドの口座から金を抜こうとする。
「オレのマッスル写真が全部盗まれるぴこぉぉぉ!!」
盗賊たちの笑い声が響く。
「もう終わりだ!お前の全ては我らのもの!」
絶体絶命――
だがぴこたんは、仲間の言葉を思い出した。
(……同じ鍵を使っちゃダメなんだぴこ。オレは……変わるぴこ!)
「今度こそ、オレは新しい鍵を持つぴこ!
必殺――《鋼鉄のユニークキー》!!」
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剣を振り下ろすと、眩い鎖が空から降り注いだ。
鎖はクラッカーズ団の手から次々と鍵を弾き飛ばし、アカウントを守る壁となる。
狐仮面のリーダーが呻く。
「な、なんだこの強固な鍵は……!?一つひとつ違う……!?突破できぬ……!」
「そうぴこ!これが“使い回さない強さ”ぴこおお!!」
光の鎖が盗賊団を拘束し、彼らは影となって霧散していった。
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広場に静けさが戻る。
人々の視線がぴこたんに集まる。
「……もう“muscle123”は封印ぴこ。これからは強くてユニークなパスワードにするぴこ!」
ミミがニヤリと笑う。
「どうせ次は“muscle456”とかにするんでしょw」
「ち、違うぴこ!ちゃんと桁増やして、記号も混ぜるぴこ!!」
ルークは真剣な声で言った。
「それでこそだ。覚えておけ、パスワードは鎧だ。
そして二段階認証は盾。どちらも揃えて初めて、真の守りになる」
「うむ!オレは今度こそ守るぴこ!」
おぬしは苦笑しながら肩をすくめた。
「まあ、次に何をやらかすかは分からんけどな」
その足元に、また新たな巻物がひらりと落ちてきた。
『当選!黄金のマッスルジム一年無料チケット!ログインして確認!』
「おぉぉ!?これは本物かもぴこ!?……って、怪しいぴこ!?ぴこぉぉ!!」
「またかぁぁぁぁ!!!」
広場に笑いとツッコミが響き渡り、第4話は幕を閉じた。
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――教訓まとめ――
今日は「パスワード使い回し」がテーマだったぴこ!
オレ様ぴこたん、便利だからって全部“muscle123”にしてたら……クラッカーズ団に乗っ取られて大惨事になったぴこ。ギルドの口座もSNSも、信用まで燃えかけたぴこおお!
でも大丈夫ぴこ!みんなも覚えておくぴこ!
1.同じパスワードを使い回すのは危険ぴこ!
2.サービスごとに強力でユニークなパスワードを設定するぴこ!
3.さらに二段階認証を使えば、守りは鉄壁ぴこ!
これさえ守れば、クラッカーズ団にも負けない“鋼鉄のセキュリティ勇者”になれるぴこ!
ミミ「……でもぴこたん、次は“muscle456”とかにしそうw」
ルーク「進化しろ。桁と記号を混ぜるのだ」
うぐぐ……今度こそ本気で守るぴこ!
次回はさらに危険な“二段階認証”の戦いが待ってるぴこだから、絶対見てほしいぴこ!




