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脳筋戦士ぴこたん、今日もネットの罠に釣られる! 〜やらかすたびに強くなるリテラシー勇者冒険譚〜  作者: ぴこたん
第一章 基礎編

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第3話 伝説の冒険者の“秘密のプロテイン”を拡散したら街ごとデマ祭りになった件

インフォシティの夜。

街の中心にある大きな酒場《バイト亭》は、今日も冒険者や商人でにぎわっていた。

テーブルには山盛りの肉、ジョッキには泡立つ酒。笑い声と剣の金属音が入り混じる、混沌とした活気に包まれている。


その片隅で、ひときわ目立つ巨体があった。

分厚い胸板はまるで鋼鉄を積み上げたかのように隆起し、肩から背にかけて走る筋肉は縄のようにねじれている。背に背負う大剣が霞むほど、本人の肉体が武器そのものだった。


赤い兜には、なぜか小さな角の飾り。威圧感とは裏腹に、どこか愛嬌を漂わせている。

そして彼は豪快に笑いながら、泡立つ大ジョッキを高く掲げた。


「ぴこぉ〜!今日も筋肉は裏切らんぴこ!!」


その笑顔は、戦場では敵を震え上がらせ、酒場では仲間を安心させる――脳筋戦士ぴこたん、その人である。


「おぬしぃ〜!聞いたか!?すっげぇ情報を仕入れたぴこ!」


マッスルポーズを決めながら、ぴこたんは自信満々に声を張り上げた。

その顔は興奮で真っ赤になり、目はギラギラ輝いている。


「なになに、今度はどんな珍情報だ?」おぬしは眉をひそめる。


ぴこたんは身を乗り出して囁いた。

「伝説の冒険者バルド……知ってるぴこよね?」

「ああ、“一撃の巨人殺し”と呼ばれるあの剣豪か」


「そのバルドが!実は《秘密のプロテイン》を飲んで強くなったらしいぴこ!

 飲めば筋肉が爆発的に成長して、オレもマッスル神になれるんだぴこおおおぉぉ!!」


「……出たよ」おぬしは頭を抱えた。

「また根拠のない噂を信じ込んでるな」


だがぴこたんは耳を貸さない。

興奮冷めやらぬ様子で魔法SNS《ツイッ塔》を開き、書き込みを始めた。


「よっしゃー!今判明!伝説の冒険者バルドは秘密のプロテインで最強になった!

 オレも明日から飲むぴこぉぉ!!」


投稿完了。満足げな笑み。

「これでオレのフォロワーも爆増ぴこぉぉ!」とぴこたんは胸を張った。


---


数分後――


《ツイッ塔》の画面が爆発的に光り始めた。

「それどこで買えるの!?」「本当なら欲しい!」「リンクを教えて!」

コメントが洪水のように押し寄せ、街の冒険者たちがざわつき始めた。


「おい、秘密のプロテインって本当にあるのか?」

「俺も飲みたいぞ!」

「見た目は怪しいけど……バルドが使ってるなら間違いない!」


ざわめきは次第に熱狂へと変わる。

酒場を飛び出した冒険者たちは街中を駆け回り、商品を探し始めた。


その隙を突くように、裏路地から黒い影が現れる。

「へっへっへ……これが例のプロテインだよ!」

影の商人たちが、粉末の入った怪しい瓶を売り出したのだ。

欲に目がくらんだ冒険者たちは次々と財布を差し出す。


「……ぴこたん、お前のせいで大変なことになってるぞ」

「え、えぇぇぇ!? オレまだ飲んでないのに!?」


---


やがて――


黒い煙が酒場の屋根を覆い始めた。

それは人々のざわめきが集まり、形を成していく。


ずるり、ずるり……。


現れたのは、半透明の巨体。

体中に無数の口が浮かび、それぞれが勝手に喋っている。


「みんなが言ってる!」

「絶対本当だ!」

「あの人も使ってるんだって!」


声はひとつではなく、何十人もの合唱のように耳を塞ぐ。

顔は定まらず、時に有名冒険者の顔に、時に仲間の顔に、次々と変化する。

背中からは新聞の切れ端やSNSの吹き出しが羽根のように舞い落ち、見る者の心を惑わせた。


――デマの魔物、《ルーモラス》。


「ククク……愚かな戦士よ。お前の言葉がワシを育てたのだ!」

「ひぃぃぃ!?オレのマッスル発言が化け物になってるぴこぉぉ!」


---


ルーモラスが大きく息を吸い込むと、吐息と共に街中へデマがばら撒かれる。

「プロテインは一晩で筋肉十倍!」「飲むだけで勝てる!」

嘘の言葉が黒い煙となって人々に絡みつき、冒険者たちはさらに錯乱していった。


「だめだ、これ以上広がったら街が崩壊する!」おぬしが叫ぶ。

ルークは剣を構えながら説明する。

「デマは根拠もなく広がり、人を惑わし、被害を拡大する! 裏付けを取らぬまま広めるのは愚かだ!」

「そうそう、特に“有名人が使ってる”ってのは、みんな弱いんだよねぇw」ミミが皮肉っぽく笑った。


ぴこたんは頭を抱える。

「オ、オレが広めたせいで街が混乱してるぴこぉぉ! どうすればいいんだぴこぉぉぉ!!」


---


ルーモラスがにやりと笑い、無数の口から一斉に声を放つ。

「お前が言ったことだろう? “秘密のプロテイン”! ワシはその噂で力を得た!

 つまりワシは……お前そのものだ!」


「ぎゃああああああ!!オレのマッスル投稿がぁぁぁ! 嘘パワーになってるぴこおおぉぉ!!」


黒い煙の腕が伸び、ぴこたんを絡め取る。

彼の体はじわじわと嘘の言葉に飲み込まれていった。


---


「ぴこたん!思い出せ!」おぬしの声が響く。

「信じる前に確認するんだ!“誰が言っているか”“証拠はあるか”を見極めろ!」

「そ、そうだ……!」


ぴこたんの目に光が宿る。

「オレは……ちゃんと確かめるぴこ!今度こそ……裏付けを見るぴこ!!」


全身に力を込め、叫ぶ。


「必殺――《真実照明ファクトライト》!!!」


その瞬間、ぴこたんの剣が光に包まれた。

眩い光はルーモラスの体を貫き、無数の口が次々と閉じていく。


「ぐわあああ! 真実の光など……聞きたくないぃぃ!!」


嘘の言葉は黒い煙となって消散し、街を覆っていた不穏な空気も晴れていった。


---


酒場の前。混乱していた人々も正気を取り戻す。

「やっぱりそんなプロテインは存在しなかったのか……」

「噂に踊らされただけか……」


ぴこたんはがっくり肩を落としながらも、拳を握りしめた。

「オ、オレ……これからはちゃんと調べてから話すぴこ……! 二度とデマを広めたりしないぴこ!!」


ミミはクスクス笑いながら肩を叩く。

「ホントかね〜? 次は“マッスル神が降臨した”とか言って広めるんじゃないの?」

「う、うぐっ……でも……がんばるぴこ!!」


ルークは真剣な眼差しで言った。

「忘れるな。デマを広めるのは、炎を撒くのと同じ行為だ。街も仲間も焼き尽くす。

 だからこそ、広める前に一度立ち止まるのだ」


「そうだな」おぬしが頷いた。

「情報は力だ。だが、力は正しく使ってこそ意味がある。

 これからは――ファクトチェックを忘れるなよ、ぴこたん」


「うむ!オレは“真実のマッスル戦士”になるぴこおお!!」


……その直後。

ぴこたんの足元に、またもや一枚の巻物が落ちてきた。


『緊急速報!マッスル一週間で三倍になる裏技!』


「な、なんだと!?これは本物かもぴこ!?……って危ないぴこ!?ぴ、ぴこぉぉ!!」

「懲りてねぇー!!!」


笑い声とツッコミに包まれ、第3話は幕を閉じた。


---


――教訓まとめ――


今日は「デマ拡散」がテーマだったぴこ!


オレ様ぴこたん、伝説の冒険者バルドが“秘密のプロテイン”で強くなったって噂を、何も確かめずに拡散しちゃったぴこ……。その結果、街中が大混乱して、デマの魔物ルーモラスまで現れる大惨事に!


でも大丈夫ぴこ!みんなも覚えておくぴこ!


1.「有名人が言ってる」だけじゃ信用できないぴこ!

2.情報は誰が言ってるか、証拠はあるかを必ず確かめるぴこ!

3.デマを広めるのは炎をばらまくのと同じ。被害者が出る前にブレーキを踏むぴこ!


これさえ守れば、ルーモラスの黒い煙に飲まれずに済むぴこ!


ミミ「……でもぴこたん、巻物が落ちてきた瞬間に目キラキラさせてたけど?」

ルーク「学んだことを行動で示せ。真実を照らす光は“確認する心”だ」


ぐぬぬ……オレ様、筋肉だけじゃなく冷静さも鍛えるぴこ!

次回は“パスワード使い回し”の迷宮に挑む予定ぴこだから、絶対見逃さないでほしいぴこ!


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