第14話 寄生アプリの魔獣 ――無料ほど高いものはない
インフォシティの市場は朝から大賑わいだった。
野菜や果物を積んだ荷車、魔導具を並べる露店、
そして胡散臭い行商人たちの呼び声が飛び交う。
その中に、ひときわ大声で叫ぶ男がいた。
「筋肉を愛する冒険者よ!今だけ無料!
最新の筋トレアプリを今すぐ入手せよ!」
ぴこたんの耳がぴくんと反応した。
「おぉ!?無料でマッスル倍増ぴこ!?
これは運命ぴこおぉぉ!!」
ミミは額に手を当てて呟いた。
「……デジャヴ。なんか既視感あるんだけど。
前にも“無料”って言葉に釣られて罠にかかったよね?」
おぬしも苦笑しながら頷く。
「そうだな。あの“呪いの巻物を回すな”事件や、
“無料Wi-Fiでクラッカーズ団に襲われた時”と同じ流れじゃないかぴこ?」
少しからかうように、ぴこたんの口調をまねた。
「うっ……」ぴこたんは一瞬ひるむも、すぐに胸を張った。
「で、でも今回は筋肉専用アプリだから安全ぴこ!
筋肉に悪いわけがないぴこ!」
「脳筋理論だね……」ミミが肩をすくめた。
ぴこたんは露店の端末に自分の石板を接続し、
アプリをダウンロードしてしまった。
すると画面が暗転し、無数の広告が勝手に流れ出す。
筋肉サプリの宣伝、謎の投資話、意味不明な占い。
さらに端末の奥から、何かがデータを勝手に吸い出しているような気配があった。
「ふっふっふ……」
市場の空気が揺らぎ、露店の背後から黒い霧が立ち上る。
その中から現れたのは、無数のアイコンをまとった怪物だった。
「私は寄生アプリ魔獣。
無料を装い、貴様の情報も金も食い尽くす者よ!」
その声はねっとりと低く響く。
「貴様の名前、住所、連絡先、購買履歴……
すべて“データ市場”で売ってやる!
筋肉より個人情報のほうが、よほど高値で取引されるのだぁぁ!!」
ぴこたんは青ざめた。
「な、なんだってぴこ!?
オレのマッスルデータまで!?それは違法ぴこおおお!!」
「やはりな……」ルークが剣を構える。
「これは偽アプリだ。
正規のギルド(公式ストア)を通さぬ怪しい品。
中に魔導虫を仕込み、情報を盗み、課金させ、裏市場へ流す仕掛けだ」
ミミも端末を覗き込み、顔をしかめた。
「見て!
勝手に“プレミアムプランに加入”って通知が出てる!
しかも毎月金貨三枚!?高すぎるでしょ!」
おぬしは冷静に指示を飛ばす。
「ぴこたん!
まずは権限を剥がして通信を遮断しろ!
アンインストールだけじゃ足りん!」
「わ、わかったぴこ!でも勝手に動いて消せないぴこぉぉ!!」
アプリビトがぴこたんの端末に絡みつき、アイコンの触手を伸ばす。
「プレミアムプラン確定!カード情報を差し出せ!」
「うわぁぁ!オレのマッスル貯金が燃えるぴこぉぉ!!」
ルークが剣で触手を払い、ミミが魔法で広告を消去する。
「しつこい広告はゴミ箱行き☆――
《無限広告消去》!」
光の輪が広がり、無数のポップアップが闇に吸い込まれていく。
しかしアプリビトはさらに膨れ上がり、次々と偽の画面を生み出す。
「回避不能の広告地獄!
“同意する”を押した瞬間、すべての情報は我が手中にぃぃ!!」
「落ち着けぴこたん!」おぬしが叫ぶ。
「インストール元を見ろ!
レビューを見ろ!こういう細部を確認すれば最初から避けられたんだ!」
「そ、そうか……オレは……無料って言葉に目が曇ってたぴこ!」
ぴこたんは端末を握り締め、全身に力を込めた。
「オレはもう負けないぴこ!
必殺――《寄生斬断》!!」
光り輝く剣を振り下ろし、アプリビトの体を真っ二つに断ち割る。
無数のアイコンが砕け散り、広告も偽契約も、
盗み出されたデータの糸までもが光の粒となって消えた。
「ぎゃああああ!
ユーザーが……目を覚ますだと……!?
“データ市場”が……閉ざされるぅぅぅ!!」
断末魔を上げ、アプリビトは霧散していった。
市場に再び日常が戻る。
ぴこたんはへたり込み、深いため息をついた。
「はぁ……また無料に釣られたぴこ……オレ、何回目ぴこ……?」
ミミがにやりと笑う。
「デジャヴ通り越して、もう恒例行事だねw」
おぬしも肩をすくめる。
「“無料”という言葉ほど、危険な餌はない。
正規ストア以外は手を出さない。それが基本だ」
ルークは真剣な眼差しで言った。
「得体の知れぬ利便は、得体の知れぬ代償を呼ぶ。忘れるな」
ぴこたんは拳を握りしめ、力強く頷いた。
「うむ!今度はちゃんと公式の筋肉アプリを探すぴこ!」
――教訓まとめ――
今日は「偽アプリのインストール」がテーマだったぴこ!
オレ様ぴこたん、筋肉強化の“無料アプリ”に釣られてダウンロードしたら……寄生魔獣の罠だったぴこぉぉ!!
広告まみれ、勝手な課金、情報吸い取り、そして――裏で“データ市場”に個人情報を売る悪行……“無料”ほど高くつく世の中ぴこ。
みんなも覚えておくぴこ!
1.正規ストア以外のアプリは絶対に入れないぴこ!
2.レビュー・配布元・要求権限をちゃんと確認ぴこ!
3.“無料”の裏には情報搾取の罠があるぴこ!
4.怪しいアプリはアンインストール+権限削除で完全除去ぴこ!
5.裏では個人情報が“データ市場”で売られているかもしれないぴこ!
ミミ「“無料”って言葉ほど、危険な誘惑はないからねw」
ルーク「便利さの裏には代償がある。見極める目を持て」
オレのマッスルもアプリも、正規ルートで鍛えるぴこぉぉ!!
次回は――“届かぬ夢の小包”!?
ネットショッピングの裏で蠢く詐欺の影に迫るぴこ!お楽しみにぴこ!




