第11話 カフェの幻線 ――フリーWi-Fiと二重の守護壁
インフォシティの夜は賑やかだった。
祭りの後の余韻が街を包み、提灯の明かりが通りを揺らす。人々は屋台で買った甘味を片手に、笑いながら行き交っていた。
「ふぅ〜、筋肉も祭りで大満足ぴこ!」
広場で豪快に肉串を平らげたぴこたんは、満腹で胸を叩きながら言った。
「でもちょっと喉が渇いたぴこな。どこかで休憩しよ、おぬし!」
そうして四人は、石畳を抜けて小洒落たカフェへ入った。
看板には《パケット商会》と書かれている。奥には焙煎の香りが漂い、窓際の席では若い冒険者たちが石板を広げ、談笑していた。
「ここ、いい雰囲気だね」ミミがふわりと舞い降りる。
「静かで落ち着いている」ルークも頷いた。
席に着いた瞬間、ぴこたんの目が輝いた。
壁に貼られた大きな紙には、こう書かれていたのだ。
「FreeWiFi接続はこちら!」
「おぉぉ!?無料ぴこ!?クーポン当たるかもって書いてあるぴこ!」
ぴこたんは腰の端末を取り出し、迷わず接続を始めた。
「待って」ミミが眉をひそめる。「正規のSSIDは、レシートの裏に載ってるはずだよ。そっちじゃなくて――」
「だいじょーぶぴこ!強そうな名前だし、“Free_WiFi_5G”って書いてあるぴこ!筋肉的に速そうぴこ!」
おぬしはすぐに気づいた。
「待てぴこたん、それは……」
だが、すでに画面に“同意ページ”が現れていた。そこには「メールとパスワードを入力してください」と表示されている。
「おぉ、なんかすごそうぴこ!ちょっと入力して――」
「やめろぉぉぉ!!」
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その瞬間、カフェの空気がざわりと震えた。
背後の席に座っていた黒いフードの集団が、にやりと笑った。
――クラッカーズ団だ。
「まんまと釣れやがったな。餌にかかるのはいつも脳筋だ」
リーダー格の男が小型の魔導器を操作する。そこから波紋のような電波が広がり、店内を覆った。
「エビルツイン展開!」
仲間の一人が叫ぶ。
ぴこたんの端末に表示されたSSID――Free_WiFi_5G――は、奴らが立てた偽の拠点だった。
さらに別の団員が呪文を唱える。
「中間者、幻線置換……!行き先を書き換えろ!」
ぴこたんの画面に出ている“鍵マーク”が、一瞬だけ消えた。
アドレスの綴りも微妙に違う。“Bank-of-Castle”が“Bank-of-Caslte”になっていた。
「おい……」おぬしは顔をしかめた。「証明書の発行者も違う。“ProxyNetGateCA”なんてのは聞いたことがない」
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ルークがすぐに盾を構えた。
その表面に“電波の紋”が浮かび上がる。店内に散らばるSSIDが光の文字となり、誰の目にも見える形で現れた。
-Cafe_Packet_Official(厨房の奥から微弱な電波)
-Free_WiFi(強力だが怪しい波動)
-Free_WiFi_5G(最も強いが、異質な脈動)
「やはり……偽物が複数紛れ込んでいる」ルークは低く言った。
ミミは空中で指を走らせ、通信の流れを視覚化する。
光の糸が絡み合い、やがて一本の川となって流れ出す――その中身は、ぴこたんの入力しかけた文字列まではっきり見えてしまっていた。
「やばっ……!いつの間にかHTTP通信……これじゃ、丸見えになってる!」
ミミが声を上げる。「しかもこれ、HTTPSを無理やり剥がそうとしてる!」
クラッカーズ団が嘲笑した。
「そうだ。鍵が揺らげば誰も気づかない。ログイン情報も、セッショントークンも、全部いただく!」
背後に浮かび上がる影――セッション泥棒。
骨ばった手には、すでにいくつもの“光の鍵束”がぶら下がっている。
奪った者の記憶や権限がそのまま詰まった鍵だ。
鉤爪がぴこたんの端末へと伸び、そこから新しい光を引き抜こうとした。
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「ぴこたん!」
おぬしが叫ぶ。「思い出せ!二段階認証の時のことを!」
その声に、ぴこたんの目が見開かれた。
脳裏に蘇るのは、第5話で戦った“影鍵術”との戦い。
あの時、自分を守ったのは――
「そうだぴこ……!オレには《二重の守護壁》があるぴこ!」
盾の奥で、二重の光が広がる。
セッショナリーの鉤爪が光に触れた瞬間、バチンと弾かれた。
「な、何だと……二重の壁……突破できん……!」
クラッカーズ団が顔をしかめる。「ちっ、二段階認証か……厄介な!」
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「今だ!」
ルークが叫び、《電波断ち(Wi-Kill)》を展開。偽の拠点の波が一気にかき消される。
おぬしは即座に詠唱した。
「《秘匿回廊(VPN)》――闇に覆い、覗く者を拒む!」
端末から伸びる通信の糸が暗いヴェールに包まれ、外からは一切見えなくなる。
ミミも声を重ねた。
「《真名照合(証明書フィンガープリント確認)》――発行者は正しい?……よし、本物!」
最後におぬしは追撃した。
「《経路封印(DNSoverHTTPS)》――幻線を閉じろ!」
光の鎖が走り、クラッカーズ団の魔導器に絡みつく。
「ぐわっ!」下っ端たちは装置を手放し、煙を上げて退散していった。
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やがてカフェに静けさが戻る。
驚いた客たちがざわざわと話し合い、店主は青ざめながらも深く頭を下げた。
「正規のSSIDをもっと分かりやすく掲示します……お客様にご迷惑を……」
ぴこたんは椅子にどかっと座り、胸を張った。
「ふふん、無料より安全ぴこ!オレは今日から、まずテザリングぴこ!」
「学習したねぇ」ミミが笑う。「タダほど高くつくことって、あるからw」
ルークは真顔で言った。「見えぬ鎧こそ堅牢だ。日々の設定が剣を守る」
おぬしは静かにまとめる。「積み重ねた守りは、必ず次の戦いで生きる」
夜風が窓を揺らし、街の灯が遠く瞬いた。
クラッカーズ団は去った。しかしまた、次の狡猾な手を仕掛けてくるに違いない。
だが勇者たちはもう、無防備に飛び込むことはないだろう。
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――教訓まとめ――
今日は「フリーWi-Fiの罠」がテーマだったぴこ!
オレ様ぴこたん、カフェで“Free_WiFi_5G”に飛びついたら……クラッカーズ団の偽拠点だったぴこ!危うくログイン情報もマッスル写真も盗まれるところだったけど、《二重の守護壁》と仲間の魔法で守り抜けたぴこ!
みんなも覚えておくぴこ!
1.フリーWi-Fiは誰でも立てられる。SSIDだけで信用しないぴこ!
2.鍵マークや証明書発行者を確認するぴこ!違和感があれば即中断!
3.VPNで暗号化、自動接続はOFF、使ったら設定ごと削除ぴこ!
4.二段階認証が最後の砦!
5.どうしても危険ならテザリングに切り替えるぴこ!
ミミ「無料より高くつくものってあるのよw」
ルーク「見えぬ鎧こそ最も堅牢だ」
よし!これからは筋肉も通信も、二重の守護壁ぴこおお!!!
次回はさらに深い“通信の罠”が待ってるぴこだから、絶対見逃さないぴこ!
ここまで読んでくださったおぬし、本当にありがとうございますぴこm(_ _)m
これにて 「序章:基礎編 」完結 ぴこ!
そして次回――お待ちかねの「ぴこたんとおぬしの関係」を綴った特別閑話をお届けします(〃▽〃)
いつもの本編とはひと味ちがう、ちょっと裏側のぴこたんワールドをぜひ楽しみに…!




