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竜好きのオレ、ドラゴンの世界に転生して聖竜になる。  作者: 岩田 巳尾


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『彼が見付けた理由』 その1

 翌日、昼過ぎ――


 野営訓練が終わって最初の通常訓練が再開するこの日、ショーナは少し早く出掛ける準備を始めていた。昨日までの事を考えながら。


(とりあえず……、書庫長に言われた通り、ジコウの事は様子を見るしかない。それでも、念の為……フィーには、もう一度確認しておきたい。確かフィーは……聞いていたハズだ……、ジコウが『十二時方向』と言ったのを……!)


 ショーナは険しい顔付きで自室を後にし、砦の外に出た。


「……嫌な天気だ……」


 外に出て早々、彼は足を止め、空を見上げて呟く。

 空は一面の分厚い雲に覆われ、昼間だというのに薄暗い。時折、遠方の雷鳴が集落中に響き渡り、今にも大粒の雨を落とさんばかりの黒い雲が、至る所に散見された。


(……荒れそうだな……。こんな天気、この世界だと初めてだ……)


 そう思うも束の間、彼は駆け出した。



 ショーナが目指したのはフィーの家だった。彼が彼女の住まいに到着すると、まるで見計らったかの様に扉が開き、中からフィーが顔を出した。

 フィーは、しかめっ面で息を切らしているショーナを見付けるや否や、彼に声を掛ける。


「……聖竜サマ? 迎えなんて珍しいけど……どうしたの? そんな顔して……」

「フィー。聞きたい事が……」


 その時だった。突如、集落中に爆発音が響き、ショーナとフィーは少し身をかがめ、その音がした方へと顔を向ける。


「な……何……!?」


 動揺するフィーに、ショーナは彼女を守る様に体を寄せ、片方の翼を広げて盾にしながら言う。


「爆発だ! 一体、どこで……」


 二頭は少し体を上げつつ、目で音の出所を探す。周りでは出歩いていたドラゴン達が動揺し、ざわついている。


「あっ! あれっ!」


 そんな中で、ショーナより先にフィーが異変に気付き、それを指差した。その先に視線を向けたショーナは、思わず言葉が漏れた。


「まさか……砦……!?」


 彼の視線の先には黒煙が立ち上っていた。それは明らかに砦の方向と一致しており、ショーナは慌てて砦を目視出来る位置に移動した。彼に続く形で、フィーも移動して砦を覗き込む。

 砦の状態を目視したショーナは、愕然としながら言う。


「母さんの部屋だ……! 母さん……、母さんっ……!!」


 ショーナは大慌てで砦へと駆け出す。彼が目にしたのは、エイラの部屋の小窓からもうもうと立ち上る黒煙だった。そんなショーナに続き、フィーも後を追って走り出す。

 急いで砦の正面の道に回ったショーナとフィーは、そこから一直線に砦へと急いだ。その時、ショーナは砦から出てくるジコウを目にする。ジコウもショーナ達に気付いた様で、互いに急いで駆け寄ると、真っ先にジコウが声を掛けた。


「ショーナ! 長が襲われた!」

「なっ……何だって……!?」

「俺は……、長を襲って逃げたヤツを追う。お前は……長の所へ行け! 急げ!」

「……分かった」


 それだけ言うと、ジコウは全速力で駆けていく。集落の端の一本道がある方へと向かうジコウを、ショーナは険しい表情で見続けていた。


「聖竜サマ! 早く!」


 そんなショーナを見兼ね、フィーが声を上げた。それでも尚、ショーナはジコウに目を向けたままだった。


「……聖竜サマ!!」

「…………」


 フィーの声に小さくうなったショーナは、彼女へと顔を向け、真剣な表情で一言だけ言った。


「……フィー、頼みがある」




 ショーナは砦へと到着した。砦の一階では給仕や支援部隊のドラゴン達が慌てふためいており、大声が飛び交って騒然としていた。彼はそのドラゴン達の間を掻き分けて、大急ぎで二階へと上がると、息を切らしながらエイラの部屋へ駆け込んだ。


「母さんっ!!」

「……ショーナ?」

「母さん!! ……母さん、大丈夫っ!?」

「えぇ……、私は大丈夫です……」


 ショーナは息が整うのを待たず、声を掛けながら急ぎ足でエイラに歩み寄る。部屋の黒煙は既に無くなっており、エイラは自身の寝床で丸く座り込んでいた。ショーナが見た限りでは、エイラに外傷は見受けられない。

 ひとまずエイラの無事を確認出来たショーナは、安堵するかの様に一度大きなため息を吐くと、まだ息が整い切らない状態のままエイラに問い掛けた。


「母さん! 一体、何が……!?」

「分かりません。突然、部屋の隅で爆発が起こって……」


 その言葉に、ショーナは部屋を見回す。すると、扉に近い天井の一角が黒く焦げているのを見付け、再びエイラに顔を向けたショーナは、険しい表情で彼女に問う。


「母さん……。さっきジコウは、襲ったヤツを追うと言って、走っていったけど……。母さんは、襲ってきたヤツを……見てない?」


 その問いに、エイラは目を閉じて静かに首を横に振る。


(母さんは見てない……か)


 そう思いつつ、少しうつむいて顔をしかめるショーナ。そこに雷鳴がとどろき、彼は小窓の外に目を向け、一言ぽつりと呟く。


「……行かなきゃ……」


 ショーナは呟くや否や、大急ぎでエイラの部屋を飛び出す。


「あっ……! ショーナ!」


 エイラの呼び掛けに応じる事も無く、彼は急いで階段を下り、まだ混乱している砦の一階をすり抜け外へ出る。

 砦の出入り口で一旦足を止めたショーナは、上空をきょろきょろと見渡した。雷鳴がとどろく空は先程以上に黒い雲が多くなり、いつ大雨になってもおかしくない程だった。


「フィーは…………、あれか……!」


 上空のフィーを見付けたショーナは確認もそこそこに、全力疾走で彼女の下へと向かった。




 フィーは黒い雲の下を飛んでいた。彼女の眼下には荒野に続く一本道と、集落に隣接した林が広がっている。


(……どこまで行くつもり……!?)


 何かを追跡していたフィーだったが、その時、空が光り雷鳴がとどろいた。彼女は思わず片目をつぶる。


(……っ! 今のは近かったわね……。ジョイ隊長の教えだと、もう降りないと……ちょっと危ないかも……)


 そう思った時だった。彼女は地上から自身に向かってくるエネルギー球を目にし、とっさに身を翻して、それを回避した。


「……撃ってきた!?」


 思わず声が漏れたフィー。体勢を整え、それを撃ってきた主に視線を向ける。


「どういうつもり……!?」


 相手に聞こえはしないと分かりつつも、思いもよらぬ攻撃に、少し怒りが混じった声で呟いたフィーは、旋回しながらその主を注視した。

 すると、その主は再びフィーに対してエネルギー球を発射し、それを視認したフィーは回避行動を取る。注視していた事で発射も視認していた彼女は、少しの動きでそれを容易く回避した。

 しかし、攻撃はそれで収まらず、それが何度も繰り返された。


(このままだと、片が付かないわね……。もう飛ぶのも危ないし……。それなら……!)


 フィーは意を決し、その攻撃の主へと降下を開始した。らせん状に旋回して高度を下げつつ、撃ち込まれるエネルギー球を回避し、そして降下の勢いをあまり殺す事無く、乱雑に一本道に着陸した。

 四肢を踏ん張って、土煙を上げながら滑った後に停止した彼女は、そのまま戦闘体勢を取って攻撃をしてきた主をにらみつける。そんな彼女に、その主が口を開いた。


「……どこまで付いてくるつもりだ」

「あなたこそ! どこまで行くつもり!?」


 その声に反応したフィーは、怒鳴って言葉を重ねる。


「その先は荒野でしょ!? こんな天気で行く気!?」

「…………」

「それに……! 私を撃ってくるなんて、どういうつもりなの!?」

「…………」

「何とか言ったらどうなのよ……!」

「…………」


 自身の言葉に反応が無い事で、更に怒りに震えたフィーは、声を大にして怒鳴った。


「……答えなさいよ!! ジコウ!!」

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