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竜好きのオレ、ドラゴンの世界に転生して聖竜になる。  作者: 岩田 巳尾


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『遠征』 その5

「……さっきジョイが言った通りだ。明日、お前達が友好派を見に行くと、長から話しがあった。

 それで……お前とはここで会った事だし、先に少しだけ話をしておこうと思う。友好派に行く事についてだが……、一応、名目上は『遠征訓練』とする事にした」

「遠征……訓練……ですか」

「そうだ。まぁ……まだ他の訓練が十分に出来ていないから、ジョイは反対していたが……。一応、友好派には遠征という『訓練』で、お前達だけで行く事を認めた感じだな」

「そう……ですか……」


 ショーナは少し顔をしかめて呟いた。


「あぁ。……ゼロも同席していたが、あいつは賛成とも反対とも言わなかった。だが……心中は穏やかではないだろうな。ジコウはまだしも、お前とフィーは集落の外に出た事が無いからな。……心配しているとは思う」

「…………」


 ここまでのジャックの話に、ショーナは彼から顔を逸らし、しかめっ面でため息を吐く。


「……まぁ、そんなに気にするな。俺は別に、今回の遠征はいい経験だと思っている。初めての外出が友好派までの遠征というのは、さすがに少し心配ではあるが……。

 だが……お前の事だ、もう下調べはしてきたんだろう?」


 ジャックの言葉に、ショーナははっとして彼に顔を向けた。


「フッ……。お前がフィーに振り回されて、何も動かないとは思えないからな。差し詰め……書庫にでも行ってきたんじゃないのか?」

「……そうです」

「……その様子なら、友好派への行き方や、道中の注意点は……もう解決済みといった所だろう?」

「……はい」


 ジャックに見抜かれたショーナは、苦笑いをして返事をした。


「フッ……。だから言っただろう、お前達は互いに補い合っている……と。フィーはせっかちで勢い任せだが、お前は違う。慎重で疑問に思った事は何でも潰す。……だから、今回もそうだろうと思って、俺は遠征に賛成した。……思った通りだったがな」


 微笑んで話すジャックに、ショーナはただただ苦笑いをする。


「……まぁ、そんな所だ。明日の朝、出発前に改めて説明はする。……今日はしっかり休んでおけ、長旅になるからな」

「……はい」


 ショーナは微笑みつつ、真剣な眼差しをジャックに向けて返事をした。ショーナの返事を聞くとジャックは一度うなずき、そして訓練場の方向へと去っていく。ショーナはしばらく彼を見送ってから、砦の中へと戻っていった。




 翌日早朝、集落の端――


 一本道を前にして、ショーナら三頭を見送りに、エイラとゼロ、ジャック、ジョイが彼らに対面していた。真っ先に口を開いたのはジャックだった。


「……いよいよだな」

「……はい」


 ジャックの言葉に、ショーナが返事をする。それを聞いたジャックは、腕組みをして説明を始めた。


「今回は一応、『遠征訓練』だ。お前達だけで友好派まで行き、そして帰ってくる。友好派の集落を見物するのは構わんが、向こうで問題事を起こすなよ!

 それと、戻ってくるのが夜になりそうであれば、その時は無理せず、友好派で泊めてもらうか、最悪……中間地点にあるオアシスで一夜を明かすんだ。絶対に無理に荒野を歩くなよ!」


 ジャックの説明に、フィーはきょとんとして言葉を返す。


「オアシス……? 荒野……?」

「そうか、ショーナは調べていた様だが……。フィーとジコウは知らなかったか……。

 ……まぁ、それはどうせ、この後見る事になる。『百聞は一見にしかず』だ。……見れば分かる」


 微笑みながらジャックは続ける。


「道中の行き方は、既にショーナが調べていた様だから、道中ではショーナに従って行動しろ。まぁ……そうだな……。一応、ショーナを今回の遠征のリーダーという事にしておく。

 お前達は戦闘部隊ではないから、小隊を組んでいる訳じゃない。だから……隊長というのも、ちょっと違うしな。……ショーナ、リーダーを任せたぞ」

「……分かりました」


 ショーナは微笑みながら、真剣な眼差しを向けてジャック返事をした。


「……よし、俺からは以上だ。とにかく……無事に帰ってこい。いいな?」


 三頭はそれぞれうなずいた。


「私からも一つ言っておくわ」


 ジャックの説明が終わったのを見計らい、ジョイが低い声を彼らに向ける。


「ショーナ。荒野に入ったら、フィーを直掩に上げなさい。そうすれば、高所から遠方の様子が確認出来るわ。

 今は平時で、日中の移動であれば……闇の魔物との遭遇は無いでしょうけど、その方がいいでしょうね。それなら道も確認出来る」

「……分かりました」


 ジョイの言葉に、ショーナは真剣な表情をして返事をする。その隣で、フィーは少し難しい顔をし、首をかしげてショーナ達に口を挟む。


「『チョクエン』って……なに……?」


 フィーの声に、ジョイとショーナは彼女の方に顔を向け、ジョイは彼女に声を掛ける。


「そういえば……フィーはまだ、直掩訓練までやっていなかったわね。ショーナは……またエイラ様辺りに聞いた、といった所?」

「…………」


 ショーナは苦笑いをして言葉をにごした。


(直掩は……よくゲームでやってたからね……。戦闘機を操縦するゲームで……)


 彼がそんな事を思っていると、ジョイがフィーに説明を始めた。


「直掩って言うのは、対象を直接掩護する事。特に……飛んでいる部隊や、飛んでいるドラゴンが行うのが、直掩と言われるわ。今は時間が無いから簡単にしか教えられないけど、対象の上空を低速で追従、もしくは旋回して、周囲の索敵や警戒、情報収集を行い、万が一敵が接近してきた場合は、その迎撃も行うわ。

 今回は……ショーナ達の上空で、周囲と進行方向の情報収集を行うのが、あなたの役割よ。……今はあなたしか飛べないから」

「……分かりました」


 フィーは真剣な眼差しを向け、ジョイにうなずいて返事をする。それを聞いていたショーナは、ふと思う所があった。


(……オレも早く飛べる様になれば、直掩にも加われるし、長距離の移動も楽になるし、到着も早くなるんだろうけど……)


 未だ、自身の翼を盾の用途にしか使えていない現状に、少しもどかしさを感じていた。


(オレも早く……ちゃんと飛べる様になりたいな……)


 ショーナが少し下を向いて考えていると、ゼロが口を開いた。


「……では、あまり話し込んでいると遅くなる。そろそろ出発した方がいい。……道中、気を付けてな」

「はい……!」


 力強い返事をしたショーナに、ここまで微笑みながら静観していたエイラは、満面の笑みを彼に向けて一言だけ言う。


「行ってらっしゃい、ショーナ」

「……行ってきます!」


 ショーナは微笑みながら力強く挨拶すると、先陣を切って歩き出した。彼に続いてフィーとジコウも頭を下げると、ショーナの後を追って歩き出す。

 歩いていく三頭を見送りながら、ゼロはエイラに声を掛ける。


「長。……そろそろ、彼らにも『あれ』を伝えねば……」

「……えぇ」

「その事に関して……今日の昼前に、砦にお伺いします。そこで話し合えたらと……」

「……そうですね」

「ちなみに……。彼らには、まだ少しも……?」

「はい」

「…………」


 ゼロは難しい顔をしてため息を吐き、続ける。


「まぁ……長を含め、誰であろうと……切り出しにくい話ではあります。我々も、彼らにどう伝えたら良いか……」

「……それも含めて、きちんと話し合いましょう。こうしてあの子達は友好派を見に行って、友好派の事を知る訳ですから、話を切り出すきっかけとしては……調度いいタイミングかもしれません。話すタイミングも大事ですし」

「……では、また昼前に、砦にお伺いします」

「お待ちしています」


 ゼロは頭を下げると、ジャックと共にこの場を後にした。残ったジョイは、周りに誰もいない事をきょろきょろと確認しながらエイラに近付き、周りに聞こえない様に小声で話を始める。


「ちょっとエイラ……! 本当にあの子達だけで友好派に行かせるつもりなの……!?」


 ジョイの問い掛けに、エイラは満面の笑みを向けて小声で答える。


「えぇ。……ほら、よく言うじゃないですか。『かわいい子には長旅をさせよ』って」

「……『長旅』じゃなくて『旅』よ」

「フフ……。そうそう、そうでしたね」

「全く……。いっつも分かって言ってるんだから……」

「……さぁ、どうでしょうね? フフ……」


 ため息交じりに話すジョイに、エイラは満面の笑みで答え続けた。

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