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竜好きのオレ、ドラゴンの世界に転生して聖竜になる。  作者: 岩田 巳尾


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『遠征』 その3

「……じゃあ明後日、寝坊しないでよね」

「あぁ。…………あっ、あのさ……フィー……」

「なあに?」

「オレ……その……え~っと…………」


 思い切って話し出したショーナだったが、フィーから目を逸らして顔を赤くすると、再び言葉に詰まってしまった。それを見ていたフィーは、微笑んで歩み寄りながら言った。


「ねぇ、聖竜サマ」

「えっ……?」


 フィーの声に、彼女に目を向けたショーナ。そんなショーナに、フィーは目を閉じて顔を擦り合わせ、顔を付けたままショーナに言う。


「私を……守ってくれるの……、楽しみにしてるから……」

「あ…………フィー……」


 ショーナは突然の事に目を見開いて驚き、顔を真っ赤にしてぽかんとしながらフィーに視線を向ける。フィーは顔を引っ込めると、ショーナと目を合わせて微笑み、


「私……待ってるから……」


 優しい口調で一言言ってから、戻って自宅の扉を開け、その中に入りながら振り向くと、


「じゃあまたね、聖竜サマ」


 そう言って扉を閉めた。


「…………」


 ショーナは赤みの残る顔で渋い表情をし、少し下を向いてため息を吐く。


(フィー……)


 自身が思っている事をはっきりと口に出来なかったショーナは、それを不甲斐無く思い、悔やんでいた。


(何かな……、もう少し……しっかりしないとな……)


 そう思いながら渋い表情の顔を小さく横に振った後、彼は暗くなり始めた集落を走り、砦へと戻った。




 翌日昼過ぎ――


「書庫長! こんにちはー!」


 ショーナは書庫へと足を運んでいた。彼の声に、フォーロは扉を開けて挨拶をする。


「これはこれは、ショーナ様。こんにちは。……今日は、どうされましたかな?」

「はい。ちょっと……書庫長にお聞きしたい事があって……」


 どこか真剣な表情で話すショーナに、フォーロも何かを悟り、


「ふむ……。何か、訳がありそうですな。……では、中へどうぞ」


 そう言って、ショーナを招き入れる。


「……ありがとうございます」


 一言お礼を言ったショーナは、室内へと足を踏み入れた。



 地下へと下りた二頭。フォーロはテーブルの下にあった丸イスを引っ張り出して腰掛け、ショーナはフォーロと向かい合って床に腰を下ろした。

 先に口を開いたのはフォーロだった。


「さて……。ショーナ様の『お聞きしたい事』、お聞かせ願えますかな?」

「はい、実は……」


 ショーナは顔をしかめながらフォーロに説明を始めた。


「明日、友好派の集落を見に行く事になったんです」

「ほう、それは良い事ではありませんか」

「えぇ、まぁ……。それ自体は、オレも別に……」

「……ふむ」


 フォーロは腕組みをし、右手をアゴに添えて相づちを打ち、ショーナの次の言葉を待った。


「ただ、友好派に行くのは……オレ達だけで、なんです。オレとフィーと……ジコウの」

「……なるほど」


 フォーロは、腕組みはそのままに目を閉じて相づちを打つと、ショーナに問い掛ける。


「しかし……これはまた急ですな」

「えぇ、言い出したのはフィーで……」

「……なるほど。確かに……フィーさんなら、明日にでも……と、言いそうですな」

「……書庫長のおっしゃる通りです。……この話、昨日フィーが突然言い出して、その時は『明日行こう』と……」


 ショーナは苦笑いをしながら説明した。


「ふむ、つまり……今日だった、という事ですか」

「はい。……さすがに母さんから諭されて、その翌日……明日になりましたが、それでも……オレの考えだと、ちょっと急というか……」

「……ふむ。ショーナ様は昔から、どちらかと言えば慎重な方でしたからな」


 フォーロは微笑んで言葉を返し、続ける。


「では、ショーナ様の『お聞きしたい事』というのは……」

「はい。友好派の集落までの道のりや、道中で気を付けるべき事……です。

 コドモの頃にお聞きしたお話だと、友好派までは半日程掛かると……。途中で日が暮れて帰ってこれなくなる可能性もあるので、そういった点についても……お聞き出来ればと思って……」

「なるほど、そうでしたか……」


 フォーロは再び目を閉じて相づちを打つと、一呼吸置いてから話を始める。


「では……順番にお話ししましょう。まずは……集落までの道のりですな」

「お願いします」


 ショーナは真剣な表情で一言言うと、フォーロの説明に耳を傾けた。


「この独立派の集落周辺には林が広がっている訳ですが、その林の中に一本道が整備されています。道と言っても、ただ木を切り倒し、切り株を除去して整地した程度の、細い道ではありますが……。

 ショーナ様も、もうご覧になっているかと思いますが、独立派の集落には、友好派の集落から荷車で支援物資が運ばれてきます。その為の道ですが、その為に作られているので、その道を進めば……迷わず林を抜けて、友好派に向かう事が出来ます」

「じゃあ……」

「いえ、問題は……その先です」


 ショーナの言葉を遮り、フォーロは真剣な表情を向けて続ける。


「林を抜けた先は、しばらく何も無い荒野が広がっています。所々に大きな岩が転がっていたり、石柱があったりはしますが……、草も生えない環境がしばらく続くのです」

「えっ……!?」


 初めて聞いた外の世界の環境に、ショーナは目を丸くして驚き、フォーロに質問をする。


「じゃ……じゃあ、そんな荒野を……半日も陸路で……!?」

「ふむ、大昔は……そうでしたな」

「えっ……?」

「わたくしも生まれていない頃は、荒野を歩き続ける環境だった……と、伝え聞いております。ですが、わたくしがこの独立派に来た時には、既にオアシスの整備が始まっていましたな」

「オアシス……?」


 ショーナは少し難しい顔をして、首をかしげてフォーロに質問していた。フォーロは少し微笑んで説明を続ける。


「左様。独立派と友好派の集落の中間地点に、大きなオアシスが整備されています。オアシスというのは……」

「あっ……、水場ですよね。草木に囲まれた……」

「その通りです、さすがショーナ様ですな」


 ショーナは少し照れ笑いをしつつ、フォーロの次の言葉を待った。


「荒野を陸路で横断するというのは、時として命の危険を伴います。ですから……先代のドラゴン達は、中間地点にオアシスを整備したのです。巨大なくぼ地を作り、その中央に巨大な水の魔石を設置する事で、そこを水場としたのです。

 水場が出来れば、周囲には自然と草木が生い茂る様になります。……わたくしが荒野を渡った時は、まだ水場しか出来ていませんでしたが、今ではすっかり草木も生い茂り、オアシスと呼ぶに相応しい場所となっていますよ」

「そうですか……」

「独立派周辺の林を抜けると、そのオアシスも小さく確認出来るでしょう。そこを目指して進み……オアシスを経由、そこから友好派へと向かえば……迷う事無く着けるでしょうな。

 オアシスからも友好派周辺の林が見えますから、そこを目指せば問題ありません。その林にも一本道が整備されていますから、そこを抜ければ……友好派の集落周辺の開けた場所に出ます。そこまで行けば、着いたも同然ですな」

「なるほど……、分かりました」


 ショーナは大きな疑問だった事が一つ解決し、力強い目付きでフォーロに一言返していた。彼の言葉を聞き、フォーロは目を閉じてゆっくりうなずくと、次の話題を始める。


「では……次は、道中で気を付けるべき事……でしたな」

「はい」

「……ふむ。とにかく気を付けるべきなのは……荒野でしょうな。林は一本道なので迷う事はありませんが、荒野の道中は目印がありません。とにかくオアシスを目指して歩き、友好派周辺の林を目指して歩く。……帰りはその逆ですな。

 それと……無理をされぬ事も重要です。途中、オアシスでしっかり休憩はして下さい。道中で体調が悪くなったら、一番近い安全な場所まで戻る事も大切ですな。どちらかの集落か、オアシス。……荒野で倒れると救助が難しくなりますから、とにかく無理だけは避けて下さい、ショーナ様」

「……分かりました」


 ショーナは真剣な表情でうなずく。

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