表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜好きのオレ、ドラゴンの世界に転生して聖竜になる。  作者: 岩田 巳尾


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/104

『ブレスと格闘と』 その7

「よし! いいぞ、ジコウ! 戻ってこい!」


 手前の的から動かなかったジコウは、すぐにジャックの下に戻ってきた。


「お前も利き手以外に魔力を集中させる事が出来る様になったな。近接戦闘が得意なお前には、心強い武器になるだろう。的を破壊した後のブレスも、ブレずにきちんと命中させていたしな。……初めてにしては見事だった」


 腕組みをして微笑むジャックに、一礼を返したジコウ。それを見届けたジャックは、ショーナに顔を向けて話をする。


「待たせたな、ショーナ。……お前には最初から難易度を高くさせてもらうぞ」

「えっ……!?」

「どうせ後から『物足りない』となるだろう?」


 ジャックの言葉に、ショーナは苦笑いをする。


「フッ……。まぁ心配するな、お前なら出来るだろう。……あぁそれと、お前はブレスの威力が弱いからな、的にブレスが当たったら破壊扱いとする。本当に壊そうとして、今の段階で何発も撃たれたら……たまらんからな」


 それを聞いたショーナは、再び苦笑いをした。


「よし。……では準備をしろ、ショーナ。俺も準備をするから、指示があるまで待機しろ」

「分かりました」


 会話を終えた二頭は、それぞれの場所に向かって移動を始めた。ジャックは射撃場を進み、ショーナは射撃位置まで走ると、後ろを向いて伏せて待機する。


(難易度を高く……か。遠距離射撃か、それともまた、丸太でも放るのか……)


 ショーナがそんな事を考えていると、周囲のドラゴン達が少しざわめいた。その様子を不思議そうに見ていたショーナだったが、程無くしてジャックの声が響く。


「待たせたな! 始めるぞ!?」

「はい!」


 後方から聞こえたジャックの声に、そのままの姿勢を保ち大声で返事をしたショーナ。


「よし! ……では、始めっ!」


 ジャックの号令を聞いたショーナは素早く立って振り返るが、その瞬間、目を見開いて驚いた。


(なっ……!? ジャック隊長……!?)


 立ち上がったショーナはすぐに的を見極めており、それは左手前と右奥に設置されていた。しかし、彼が驚いた理由は他にあった。右奥に設置された的の直前に、ジャックが腕組みをして立っていたのだ。彼はショーナから見て的の右三分の一と重なっており、的の中央は調度、彼の顔の高さと同じだった。

 ショーナはとっさに左手前の的にブレスを撃つ。それが的のど真ん中に命中するや否や、すぐさま走り出し、右奥の的へと全速力で向かった。

 そのショーナを、腕組みをしたまま真剣な表情でジャックは見守っている。


(なるほど……そうしたか……)


 その考えが頭をよぎってすぐ、ジャックの後ろで的が音を立てて破壊された。ショーナが的に飛び掛かり、右手のツメでそれを破壊していたのだ。

 ショーナは着地してすぐに四肢を踏ん張って急ブレーキをし、振り返ってジャックの方を向いた。ジャックは腕組みをしたそのままの姿勢で、背を向けたままショーナに話し掛ける。


「どうした? ショーナ。……お前にしては合理的とは言えないな。お前のブレスの精度なら、逆の狙いをした方が早かったハズだ。……理由を聞きたい」

「それは……、誤射の恐れがあったので……」


 ショーナは顔をしかめながら、背を向けているジャックに答える。


(なるほどな……。正確だが慎重……といった所か。それとも、怖気付いた……か?)


 ジャックはショーナに見えないながらも、顔を微笑ませていた。


「ショーナ! ではもし、俺の位置に『負傷した仲間』がいて、的が『闇の魔物』だったら、どうする?」

「それは……!」

「今の動きでは、仲間が助からんかもしれんぞ?」

「…………」


 ジャックの言葉に、ショーナは顔をしかめてうなる。


「それとも……俺に当たったら怒られるかもしれないと、怖気付いているのか?」

「それは……」

「フッ……。まぁ、それはどうでもいい。それに、この距離であれば……例えお前のブレスといえど、避ける事は出来る。

 ……いいか、ショーナ。これは訓練だ。訓練で出来ん事は、実戦で出来ん。……俺に当たるかもしれないと気にして、撃たない選択を取るんじゃない。失敗を恐れるな」


 そう言うと、ジャックは少しだけ顔を振り向け、目でショーナを見ると、背中を押す様に言葉を掛ける。


「もう一度やってみろ、ショーナ。……お前なら出来る」

「……はい!」


 その温かい言葉に力強く返事をしたショーナは、走って射撃位置に戻っていった。それを見送ると、ジャックは周りで待機していた支援部隊に声を掛ける。


「よし、的を換えてくれ」

「はい!」

(……さて、どうなるかな)


 ジャックは微笑んで、駆けていくショーナを見つめた。



 ショーナは射撃位置に到着すると、そのまま後ろ向きに伏せて待機する。


(ああ返事はしたけど……)


 彼は指示を待ちながら、少しばかり心配をしていた。本当に撃ってしまっていいのか、迷いが生じていたのだ。しかし、彼はすぐにそれを払拭する様に、気持ちを強く持ち直した。


(……いや、ダメだ! ジャック隊長は信じてくれている。……ここで引く訳にはいかない!)


 ショーナは真剣な表情で力強い目付きをすると、程無くしてジャックの声が辺りに響く。


「準備はいいか!? ショーナ!」

「はい!」


 ジャックの問いに、ショーナは先程と同じ様に、そのままの姿勢を保ち大声で返事をした。


「よし! ……では、始めっ!」


 号令を聞いたショーナは、素早く立ち上がって振り返ると、的の位置を確認。右手前と左奥に設置された的は、左右の間隔は余り開いておらず、ジャックは左奥の的の右手前に腕組みをして立っており、先と同じ様に的の右三分の一に重なっていた。的の高さは、やはりジャックの顔の高さと同じに設定されていた。


(さぁ見せてみろ! 射撃の天才!)


 ジャックは腕組みをしながら微笑み、ショーナの動きを見守る。

 当のショーナは右手前の的に飛び掛かると、魔力を集中させた右手のツメでそれを破壊。着地して素早く体勢を整えると、左奥の的に瞬時に狙いを定めてブレスを発射した。ショーナのブレスは、いつもの様に快速で的に向かう。そしてそのブレスは、ジャックの顔をかすめて的のど真ん中に着弾し、小さく爆発した。それを見ていた周囲のドラゴン達は、一斉にどよめく。

 ジャックも腕組みをしたまま、思わず大きな声で笑い声を上げ、ショーナを称えた。


「フッ……ハハハッ! そうだ、ショーナ! よくやった!!」


 ジャックの声を聞き、ショーナは安堵して一息吐いた。その顔からは達成感がにじみ出ていた。




 ショーナとジャックは元の位置に戻り、ジャックはフィーとジコウも交えて話を始める。


「見事だった、ショーナ。……お前なら出来ると信じていたぞ」

「……ありがとうございます」


 腕組みをしながら話すジャックの言葉に、ショーナは少し照れながら返した。ジャックはフィーとジコウにも顔を向け、二頭に対しても言葉を掛ける。


「ショーナだけじゃない。お前達も、訓練初日から随分と成長したな」


 ジコウは相変わらず無表情だったが、フィーは少し表情がほころんでいた。


「とりあえず、これで基礎的な部分はやったからな。次回からは……そうだな、フィーはジョイの所に行くか?」

「えっ……?」

「確かお前は飛べるという話だったからな。……まぁ、どうするかは今決めなくてもいい。明後日の訓練で聞こう」

「分かりました」


 フィーは返事をしながらうなずく。


「ショーナとジコウは……、もう少しブレスや格闘を磨くとしよう。少しずつブレスも数を増やして、訓練の強度も上げていこうと思う。……いきなり数を増やすと倒れるからな。少しずつ増やして、少しでも慣れておいてもらいたい」


 ショーナとジコウは、それぞれうなずく。


「もしフィーも、このまま残るのであれば……同じ様に続けるからな」


 その言葉に、フィーも静かにうなずいた。


「よし。……では、今日の訓練は以上だ。……お疲れさん」

「ありがとうございました!」


 ショーナとフィーは大きな声でお礼を言うと一礼し、ジコウは静かに一礼。三頭は訓練場を後にし、ジャックは腕組みをして微笑みながら、彼らを見送った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ