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竜好きのオレ、ドラゴンの世界に転生して聖竜になる。  作者: 岩田 巳尾


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『ブレスと格闘と』 その1

 二回目の訓練の日――



「よし、そろったな。……今日はもう少し実戦的なブレスの訓練を行うぞ」


 前回の様に、周囲には見物で集まったドラゴン達がいる中、射撃場にそろったショーナ達に向かって、ジャックは腕組みをして微笑みながら話す。


「実戦的と言っても、やる事は難しい事じゃない。……ここから全力で走って射撃位置に着き、急制動してすぐにブレスを撃つ。……それだけだ」

「……それだけなんですか? 何だか簡単そうね……」


 ジャックの説明に、フィーが拍子抜けした様な表情で答えた。


「言うじゃないか、フィー。……では、今回はフィーからやってもらう事にしよう」

「……分かりました」


 フィーの言葉に、少しにやりとしたジャックは、彼女を最初の訓練者に選び、フィーも何食わぬ顔でそれを受け入れた。


「よし、手順は先程説明した通りだ。ここから全力で走り、射撃位置で急制動してすぐにブレスを撃つ。的は一つだ、何発も撃つなよ! 撃っていいのは一発だからな!」


 ジャックの説明を聞き、フィーは自信のある顔付きで静かにうなずくと、少し姿勢を低くして開始に備えた。それを確認したジャックは、続け様に号令を掛ける。


「では……始めっ!」


 勢いよく飛び出したフィーは、全力疾走で射撃位置まで接近すると、四肢を踏ん張って急ブレーキを掛けて停止。すぐさま立て札の様な的に向かって一発のブレスを撃ち込んだ。

 しかし、そのブレスは的に当たる事無く、的の上をかすめて外れてしまった。


「あっ……!」


 それを見たフィーは、驚きのあまり声を発した。当たるとばかり思っていたブレスが、かすりもせずに外れてしまったからだ。そこにジャックの大声が飛ぶ。


「フィー! もっと落ち着いて狙え! ……とりあえず戻ってこい」


 ジャックの指示に、少し不満げな表情でそそくさと戻るフィー。

 フィーが戻ると、ジャックは腕組みをしたまま三頭に向かって話し始めた。


「確かに、今回の訓練はシンプルだ。走ってから撃つ、ただそれだけだ。だが……それが難易度を一気に上げる。

 ……ショーナ、お前なら理由が分かりそうだな?」


 ジャックはショーナに顔を向け、彼に問い掛ける。ショーナもその問いに、少し考えながら答えた。


「……走ってから急停止して、すぐに射撃を行うという事は……。瞬時に狙いを付ける必要があるから……ですか?」

「まぁ悪くない答えだな、他にはあるか?」

「まさか……走って息が上がるから、とか……?」

「まぁ、そんな所だろうな」


 ジャックはショーナの答えを聞き、腕組みをしたままうなずくと、説明を始める。


「大体はショーナが言った通りの事だ。走ってから撃つのは一見、簡単な行為に思える。しかし……急制動してすぐに撃つというのは、狙いを付けるのが難しい。更に、そこに息が上がった状態が加わる。この前の様に、停止した状態で準備をし、そこで撃つのとは訳が違うという事だ」


 その説明を聞き、フィーが質問した。


「じゃあ、さっき私が当たらなかったのは……」

「それは、お前の元々の狙いの荒さも関係している。だから『落ち着いて狙え』と言ったんだぞ?」

「…………」


 自分のブレスが当たらなかったのは、そういった条件によるもの。そう思いたかったフィーだったが、ジャックからの鋭い指摘に、不満そうな表情で半眼にし、目を逸らした。


「……よし。ではショーナ、今度はお前がやってみろ。お前なら……少なくとも外れる事は無いだろう」

「分かりました」

「いいか、狙いに時間を掛ける事が出来なくても、落ち着いて狙う事が大事だ。……忘れるな」

「はい」


 ショーナは返事をすると、姿勢を低くして開始に備え、それを確認したジャックは大きな声で号令を発した。


「よし! ……では始めっ!」


 それを聞いたショーナは、フィーと同じ様に勢いよく飛び出すと、全力疾走で射撃位置に向かう。射撃位置手前で四肢を踏ん張って急ブレーキを掛けると、彼の想定外の事態が起こった。左足が滑って少し横に体が流れてしまったのだ。


「くっ……!」


 的に対して少し斜めになった状態で停止したショーナは、ジャックに言われた通り、慌てる事無く落ち着いて的を狙い、すぐにブレスを撃ち込んだ。そのブレスは快速で的の中央に命中して小さく爆発すると、黒い焦げ跡を残した。

 それを見ていた周囲のドラゴン達は、少しざわついた。


「よし! いいぞショーナ! 戻ってこい!」

「はい!」


 大声でショーナを呼んだジャックは、戻ってくる彼を微笑んで見ながら考えていた。


(体が流れたにも関わらず、また……ど真ん中……か)


 ショーナが戻ると、ジャックは彼に声を掛ける。


「ショーナ。……少し体が流れた様だが、よく立て直したな。またしてもど真ん中とは、大したものだ」

「ありがとうございます」

「きちんと、落ち着いて狙いを定めたという事だな。それとも……お前には簡単だったか?」


 ジャックの最後の問い掛けに、苦笑いをして答えをはぐらかすショーナ。


(簡単ではないけど……、特段難しいという訳ではないかなぁ……)


 初めてのブレスの時同様、彼は人間の時にプレイしていたシューティングゲームの経験から、ブレスによる射撃は苦になっていなかった。むしろ、それを心の底で楽しんでいた。


「ではジコウ、待たせたな。……お前も落ち着いて狙えば、外す事は無いだろう。ただ……、チャージに関しては、あまり時間を掛けない様にする事を忘れるな?」


 ジャックの言葉に、静かにうなずくジコウ。ただ、他の二頭とは違い、姿勢を低くして開始準備をする事は無かった。


「……そういえば、お前はフリースタイルだったな。……始めるが、いいか?」


 ジャックの問いに、鋭い目付きをしてうなずくジコウ。


「よし。……では始めっ!」


 ジャックの号令に、ジコウも勢いよく飛び出し、全力疾走して射撃位置に向かう。射撃位置手前で四肢を踏ん張って急ブレーキを掛けると、停止してすぐに首を持ち上げ、ブレスをチャージし始めた。そして、それが十分にチャージされると的に向かって発射し、的の中央付近に命中。ブレスは的をバラバラにすると貫通していく。

 それを見たジャックは、腕組みをしたまま真剣な表情で考えていた。


(今日は四カウントで撃ったか……。それでもバラバラにして貫通するのなら、十分すぎる威力だな……)


 そう考えるのも早々に、ジャックはジコウを呼び戻す。


「よし、いいぞ! ジコウ! 戻ってこい!」


 ジコウは急ぎ足で元の場所に戻る。彼が元の場所に戻ると、ジャックは彼に言葉を掛ける。


「今日は四カウントで撃った様だな、ジコウ」


 ジコウは静かに小さくうなずく。


「まだ威力としては十分の様だから、次は三カウントで撃ってみろ。そのチャージ量での威力を見て、どの場面でどれ程のチャージをするのかを決めた方がいいな。……射撃の精度はなかなか良かったぞ」


 ジャックの言葉に、再び静かに小さくうなずいたジコウ。

 ジコウへの言葉が一区切りした所で、ジャックは支援部隊に声を掛けた。


「おい、的を換えてくれ」

「はい!」


 支援部隊の数頭は、一斉に的の交換作業を始め、その間にジャックは、ショーナ達に次の訓練の説明を始めた。


「……よし、ではまた少し難易度を上げよう。次は……あの岩が見えるか? スタートしたら、まずはあの岩まで全力で走れ。そして、岩をタッチしたら射撃位置まで走り、後は同じだ」


 ジャックは説明しながら、その岩を指差す。岩は彼らの立っている位置から左前にあり、その岩から射撃位置に走ると、射撃位置で左に90度向きを変えなければならない。それをショーナが質問した。


「あの岩から射撃位置に走ると、的は左に来ます。つまり……向きを変えて撃つ……という事ですか?」


 ショーナの質問に、ジャックは腕組みをして答える。


「その通りだ、ショーナ。今回は射撃位置で左に向きを変えなければならない。先程は真っ直ぐ走って、そのまま正面の的に撃てば良かったが、今回は違う。射撃位置で急制動し、左に向きを変えてから撃つ。

 ……向きの変え方は好きに行え。完全に停止してから向きを変えるのも、スライドターンをするのも、お前達のやり方で構わん。射撃は一発だ、いいな?」


 三頭はそれぞれうなずく。

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