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竜好きのオレ、ドラゴンの世界に転生して聖竜になる。  作者: 岩田 巳尾


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『闇の魔物』 その2

 エイラはショーナに目をやると、先程までとは打って変わり笑顔を見せ、穏やかな声で言葉を掛けた。


「やっぱり、来ちゃったんですね」

「あっ……ごめんなさい……」


 ショーナは少しうつむいてエイラに謝った。それを見たエイラは、満面の笑みで突拍子も無い事を口にする。


「フフ……。分かってますよ、ショーナ。……今、反抗期ですもんね?」

「えっ? ……いや、そういう訳じゃ……」


 あまりにも唐突に投げ掛けられた言葉に、ショーナは少し戸惑ってしまった。彼は、言い付けを守らなかった事を叱られるのではと心配していただけに、その言葉は予想外だった。


「……助かりましたよ、ショーナ。……ありがとう」

「え……あ、はい……」


 エイラの言葉に調子が狂ってしまったが、ショーナは大事な事を思い出して声を出した。


「そうだ……! フィー!」


 とっさに駆け寄った彼は、フィーの身を案じた。


「フィー! ケガは……!?」

「大丈夫……。聖竜サマのお母さんが助けてくれたから……」

「そう……良かった……。本当に良かった……!」


 ショーナは安堵すると、大きくため息を吐いた。そんな彼を見たフィーは、少しだけ首をかしげて率直な思いを口にする。


「でも……、わざわざ聖竜サマまで来なくても良かったんじゃない? ……聖竜サマ、私より弱いんだし」

(はっきり言うなぁ……)


 フィーの言葉を聞いたショーナは少し苦笑いをすると、真剣な表情をして答えた。


「確かに……オレはフィーより弱いから、あの敵は倒せなかったかもしれない」


 空を覆っていた分厚い雲に、僅かに隙間が出来、そこから夕日が差し込む。その夕日を反射して、彼の額の魔角が光り輝く。


「でも……」


 ショーナは自身の左の翼を少しだけ広げ、盾を構えるかの様に左前方で軽く覆い広げると、力のこもった声で訴えた。


「フィーを守る事は出来るよ!」


 その言葉に一瞬ぽかんとしたフィー。すぐに微笑んで顔を少し斜めに傾けると、下目になる様な目付きでショーナに返した。


「……何よ、かっこ付けちゃって」


 そう言うとショーナに歩み寄り、


「でも……ありがと」


 一声掛けながら、目を閉じてショーナに顔を擦り合わせた。夕日に照らされる二頭。


「…………!」


 突然の事に、口を半開きにして固まってしまったショーナ。フィーから顔を擦り合わせられたのは、これが初めての事だった。

 そんなショーナを気にする素振りは全く無かったフィー。顔を引っ込めると、


「じゃあまたね! 聖竜サマ!」


 お決まりのセリフを口にし、軽やかに駆けていく。ショーナは固まったまま、フィーを目で見送った。




 フィーが走り去ると、太陽は再び雲の中に隠れてしまった。


「フフ……。顔が赤いですよ? ショーナ」

「えっ……!? いや……それは……」


 ショーナ達のやり取りを見守っていたエイラは、満面の笑みで彼に言葉を掛けた。


(そ……そうだった……! 母さん、いたんだ……)


 先のやり取りを母親に見られていたという事に気付いたショーナは、恥ずかしさの余り、更に赤面して気まずそうに目を逸らす。そんなショーナを面白がって、エイラは追い討ちを掛けるかの様に笑顔でショーナを茶化した。


「いいですね~、青春。……とても甘い果実の様!」

「ちょっ……ちょっと! 母さんっ……! からかわないでよ……!」

「いいじゃないですか、恋愛の一つや二つ。調度、反抗期な事ですし」

「いやっ……それは関係が……」

「そういえば……! ショーナは小さい頃から、フィーに『ほの字』でしたね!」

「そっ……それは……その…………、まぁ……少し……」


 最後は小声でぼそぼそ答えたショーナは、相変わらず恥ずかしそうに赤面していた。エイラは一通りからかって満足したのか、微笑んで優しく言葉を掛ける。


「……ショーナ? 恥ずかしがる事は無いですよ?」

「…………」

「誰かを守りたいという気持ちは、いつかあなたの力になります。……その気持ち、忘れないで下さいね」

「……はい……」


 ショーナはまだ赤面し、エイラの言葉に目を逸らしながら返事をした。その反応に再びスイッチが入ったのか、エイラはまたショーナを茶化し始める。


「それにしても、将来が楽しみですね~」

「母さん……!」

「どんな孫が見られるのか、今から心が弾みますね!」

「母さんっ……!!」


 さすがにうんざりしたのか、ショーナの最後の静止言葉は、少し怒りも含まれたかの様な大声だった。彼の気持ちを察したエイラは、少しだけ笑って話を逸らした。


「フフ……。では、私達も帰りましょうか」

「……はい……」


 散々からかわれて、どこか不満げな表情で返事をしたショーナ。エイラが砦に向かって歩き出すと、彼もその後ろに続いた。

 しばらく歩くと、エイラが小声で笑って何やら呟く。


「フフ……。思った通り……」

「……えっ?」

「……こちらの事です。ショーナは気にしなくても大丈夫ですよ」

(……そう言われてもなぁ……)


 笑顔で振り返って答えたエイラだったが、どうにも腑に落ちない返答に、ショーナはもやもやしながら砦に戻っていった。




 部屋に戻ったショーナとエイラ。外は既に日が落ちて暗くなっていた。


「さて……、今日はもう休みましょう。……大変でしたからね」


 エイラはそう言うと、寝床で丸く座り込んだ。


「ねぇ……母さん、ちょっと聞きたい事があるんだけど……」

「あら、何ですか?」

「あの時の母さんのツメ、どうして光っていたの……?」


 エイラのツメは艶のあるグレーだった。ショーナもそれは分かっていたが、今日、敵を倒した時の彼女のツメは白く光り輝いていた。それがどうしても気になったのだ。


「あれは、ツメに魔力を集中させていたんです」

「魔力を……?」

「そうです。そうする事で、ツメの攻撃力を高める事が出来るんです」


 それについては納得したショーナだったが、思い出したかの様に次の質問を投げ掛けた。


「そうだ……! あの敵って一体……?」

「あの敵は魔物です。……『闇の魔物』」

「闇の……魔物……? それって……」

「詳しい事は、また時間がある時にしましょうか」

「……はい」


 その説明は時間がある時に、という部分は理解したショーナだったが、どうしても引っ掛かる事があった彼は、更に質問を続ける。


「その魔物、母さんは一撃で倒したけど……。オレ達だと倒せないの?」

「……倒せるかもしれませんが、今のショーナ達では有効な攻撃手段が無いので、より危険な時間が長くなってしまいます。……なので、危ないですよね」

「でも、オレにはバリアがあるし、それでフィーを守りながらなら……」

「……有効な攻撃手段が無い今は、誰かが魔物の急所に飛び込まないといけなくなります。仮に、ジコウも含めて三頭掛かりでも、危ないでしょうね」

「…………」


 エイラの返答に、ショーナも最後はうなってしまった。

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